全体最適とは?部分最適との違いやメリット、実施のポイントを解説
2022/8/10公開2022/8/25更新
労働人口の減少が進む今、企業が成長し続けていくためには生産性向上や強固な組織づくりが欠かせません。そこで重要になってくるのが「全体最適」の考え方です。組織として最高の成果を出すためには、経営に全体最適の視点を取り入れることが重要なのです。
一方で、組織の一部を効率化する部分最適の考え方も、全体最適には必要となります。本記事では、全体最適と部分最適の違いやそれぞれのメリット・デメリットをお伝えします。同時に、企業が全体最適を進めるためのポイントや、実際に全体最適を実践した事例を紹介しているので、これから全体最適を目指す企業はぜひ参考にしてください。
目次
全体最適とは
全体最適とは、企業やチームなどが組織として最適な状態であることです。このとき、組織はもっとも高いパフォーマンスを発揮できます。生産性向上に大きく関わり、企業経営を行ううえで理解しておく必要のある概念です。ここからは、さらに詳しく全体最適について解説していきます。「全体最適を理解し、マネジメントに活かしたい」という方は、こちらから8ページでわかるナレッジワーカー・マネジメントをダウンロードなさってください。
部分最適とは
部分最適とは、組織の一部が効率的に業務を進められるよう最適化された状態を指します。たとえばデザイン会社において、一部の制作チームの業務効率を上げるために高額のシステムを導入し、そのチームはパフォーマンスを十分に発揮できるという状態のことです。
しかし、制作チームの効率が上がっても営業チームのパフォーマンスが低いままでは、受注が増えずコストだけがかかってしまいます。反対に営業チームのパフォーマンスだけが上がっても、制作チームが対応できる以上の注文を受けてしまった場合、納期に間に合わせることができず、会社の信用を失うことが考えられます。
部分最適は全体最適と対照的な意味で使われることが多い言葉です。組織の一部を効率化してハイパフォーマンスな状態にしても、企業全体として最適でなければ利益を上げられない可能性があります。組織力を高め、利益を上げられる企業であり続けるためには、全体最適の視点で経営することが大切なのです。ただし、必ずしも部分最適が全体最適を阻害するとは限りません。部分最適は常に全体を意識したうえで行う必要があるのです。
全体最適のメリット
経営に全体最適の視点を取り入れることで、組織としてのパフォーマンスを高められることは上述の通りです。ここでは、全体最適によって企業が得られる具体的なメリットを3つご紹介します。
業務のムダを削減し、業務効率アップ
組織として全体最適を行うための方向を示し、各部署や従業員の役割を明確にすることで、本当に必要な業務が見えてきます。その結果、部門間で重複していた業務やムダな業務の削減、業務の標準化が進み、業務効率を向上させられるのです。業務効率化は人件費の削減にもつながり、企業の利益向上を図れます。
部門間の連携により、ミスを防止
全体最適には、部門間の連携が欠かせません。コミュニケーションや情報共有をこまめに行うことで、部門間の認識の齟齬や情報不足によるミスを減らせます。互いに共有した情報をそれぞれの部門で有効活用することもできるでしょう。また、他部門の状況を理解できるようになり、部門間で協力し合って業務を進められるようにもなります。
的確かつスピーディーな経営判断が可能
全体最適を行うと、各部門が独自に保有していた情報が集約されるため、会社や会社をとりまく状況をタイムリーかつ正確に把握できるようになります。それらの情報を活用することで、経営視点での施策が強化できます。さらに、経営判断を下すまでの時間がスピーディーになる点もメリットです。
全体最適のデメリット
企業の利益向上にとって全体最適は必要なことですが、取り入れることでデメリットも生じます。具体的に考えられるデメリットは以下の通りです。
部門間での対立
全体最適を図ることで、部門によってデメリットが生じる、部門間で利害関係が生まれるなどの可能性があります。具体的には、人員配置に偏りが出たり、一時的にコスト負担が増大する部門が発生したりといったことが起こります。また、これまで営業担当者が享受していたインセンティブを見直すなど、報酬体系を変更する必要があるかもしれません。 この課題に対しては、組織の方向性を明確にし、各部門の従業員のモチベーションを維持する施策を打つことが大切です。
実施には時間・コストがかかる
全体最適の実施は、全社に関わる施策です。そのため、部門で実施する施策と比較して時間やコストがかかります。たとえば、部門間の情報を集約するにあたって、全社共通のITシステムを導入する施策が挙げられます。ITシステムの導入には、システム利用費用だけでなく、システム選定や運用方法の検討にも社内コストがかかり、従業員が慣れるまでの教育コストも必要になります。
部分最適のメリット、デメリットとは
ここまで全体最適の重要性を伝えてきましたが、部分最適にもメリットはあります。たとえば、最適化された部門の生産性や業績を短時間で上げられる点です。限られた範囲への施策となるため、必要なコストも比較的少なくて済みます。また、最適化された部門の従業員は働きやすくなり、仕事へのモチベーションや企業へのエンゲージメントが向上する可能性もあります。
一方、部分最適では組織全体の連携が取れず、他の部門にしわ寄せが及んでしまう点がデメリットです。一部の部門のみ業務効率が高くても、他の部門で効率化が図られなければ、結果的に企業としての利益につながりません。
全体最適化のための4つのポイント
企業として利益向上を目指すのであれば全体最適を進めていくことが望ましいでしょう。続いて、全体最適を進めるための具体的なポイントをお伝えします。
①社内全体への周知・理解を図る
まずは社内全体に企業としての方向性を周知し、従業員の理解を得ることが重要です。全体最適を図る背景や得られるものなど、経営層の考えと同時に従業員にとってのメリットを伝えることがポイントとなります。
全体最適には従業員の意識改革やモチベーション維持が重要なため、従業員が納得できるよう説明を徹底しましょう。
②KPIの明確化
全体最適を実現するためには、全体最適をブレイクダウンした部門毎の目標設定が重要です。それによって、各部門でどのような目標を、いつまでに達成すべきかといったKPIを明確にすることができます。各部門がそれぞれのKPIの達成を目指すことで、高いパフォーマンスを維持しながら、結果的に全体最適につながるのです。
③社内コミュニケーションの促進
全体最適にあたっては、部門間の連携が不可欠です。社内で対立が起こらないようにするためにも、風通しの良さが重要となってきます。そのため、社内コミュニケーションを促進する施策を実施しましょう。
たとえば、社員同士が気楽に話せる場を作ったり、普段からこまめにコミュニケーションを取れるようチャットツールを導入したりと、部門を超えて全社でコミュニケーションできる環境を整えておきます。
④ツールの活用
コミュニケーション促進のためにチャットツールを導入するなど、ITツールを活用することで全体最適を進めやすくなります。各部門の業務を一括管理することで、これまで重複して行っていた業務を削減することもできるでしょう。人材の適材適所を図るためにタレントマネジメントシステムを入れることや、部門を超えて情報を共有できる管理ツールの導入を検討してみてください。
システムを活用した全体最適の事例
ここでは、システムを活用して全体最適化に成功した株式会社フラッグ様の事例をご紹介します。
フラッグ様では従来、販売管理システムや受注管理システム、会計システムなど、独立した複数のシステムを利用されていました。それによって、各部門は効率的に動けるという部分最適の状態でした。
しかし情報が分散していたため、データを集計してプロジェクトの報告書を作成するのに時間がかかり、分析まで手が回らなかったといいます。さらには、請求や支払漏れなど、部門間での情報連携ができていないことによる業務上の重大ミスも起こりかねない状況だったのです。
そこで、映像制作やWeb制作といったクリエイティブ業の販売管理やプロジェクト管理に対応できるクラウド型ERP『ZAC』を導入しました。社内の情報を一元管理できるのはもちろん、他システムと連携できたり、従業員一人ひとりの数字への意識を高められたり、部門を横断した会議が自主的に開催されたりと、企業の全体最適が実現しました。
全体最適と部分最適のバランスが重要
組織として最も高いパフォーマンスを発揮できる状態の全体最適と、組織の一部が効率化された状態の部分最適。企業が利益を上げるためには全体最適の視点が欠かせません。しかし同時に、全体最適を図ったうえで各部門が部分最適を目指すことも必要です。
ただし、全体最適にもデメリットがあるため、従業員のモチベーションを維持できるようバランスをとって最適化を図ることが大切になります。全体最適にはITツールの活用も有効です。本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』のような、見込みから売上まで一貫した管理ができ、原価や勤怠情報もひとつのシステムで管理できるなど、社内で情報共有しやすいシステムを導入してみてはいかがでしょうか。