業務標準化とは。必要な理由とメリット、進め方について解説
2022/9/02公開2022/12/15更新
組織の拡大に伴い、業務の属人化を解消し、標準化を進めたいと考えている企業も多いのではないでしょうか。業務標準化は生産性や業務効率の向上に大きく関わっています。
本記事では業務標準化に関する基礎知識とメリット・デメリット、具体的な方法を紹介します。
目次
業務標準化とは
業務標準化とは、誰もが同じ成果を出せるように、業務の手順を整理し、設定したルールに沿って業務を行えることを指します。業務を標準化することで生産性や業務効率の向上につながります。
業務効率化との違い
業務標準化に似た言葉で「業務効率化」という言葉があります。業務効率化は、現状の業務プロセスの「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし改善することで、企業全体の生産性を高める取り組みのことです。業務標準化と業務効率化の違いは、業務標準化は業務をルールに沿って行えるようにするといった「手段」にフォーカスが当たっており、業務効率化は現状より効率的にするという「結果」にフォーカスがあたっています。
業務標準化の分類
業務標準化は主に以下の2点に分類できます。
タスクの標準化
タスクの標準化は、従業員によって作業内容や成果に差が出ないように、具体的にどのように各作業を行うかを明確にすることです。 タスクを標準化することにより、やるべきことや作業が統一化され、マニュアル化することで業務品質を一定に保つことができます。
業務フローの標準化(業務フローの統一化)
業務フローを標準化することにより、従業員が行うべき業務の流れが把握しやすくなります。そのため、たとえば担当者が変わった場合でも、スムーズに業務を遂行できようになります。業務フローの標準化には、明確な業務フローの作成と、そのフローに沿った業務進行が欠かせません。
タスクの時点で標準化ができていないのか、業務フローの標準化ができていないのか、正しく可視化することが大切です。
業務標準化のメリット
業務効率化による生産性の向上
業務標準化は、業務の効率化につながります。属人化(ブラックボックス化)されている業務を改めて可視化し、業務フロー・タスクを最適化することにより、ムダな作業を軽減できます。
これまで個々が所有していたナレッジを共有することで、より効率的に業務に取り組むことも可能です。また、属人化が解消されれば、仮に担当者が不在でも別の従業員が代わりに対応することで業務の滞りを防ぐことができます。
処理のスピードが向上し、作業時間の削減にもなるので、より付加価値の高い業務に時間を割くことができるようになります。
全体の品質向上
各従業員がそれぞれ同じ業務フローをもとに業務を遂行することで、個々の能力によるブレが減り、業務品質が安定するため、組織全体の業務品質が向上します。また、マニュアルどおりに業務を遂行することで不正防止やコンプライアンスの強化につながります。例えば、マニュアルがないために、従業員が独自のやり方や基準で業務を行ったため、必要な品質基準に満たない状態で製品を世に出してしまうことはリスクです。後に不良品扱いとなり企業の信用を損なうといったケースが考えられるでしょう。
さらに、ムダな業務が減ることによりコスト削減にもつながります。顧客対応を標準化することにより、企業への信頼感も高まり、総合的な顧客満足度の向上も期待できます。
成果目標の明確化
属人化された業務では業務フローが共有されず、定性分析で評価せざるを得ないケースがあります。業務が標準化されていると、客観的な数字をもとにした定量分析での評価が可能です。 目標が具体化されると、担当者のアクションが明確になります。人事評価でも評価基準が明確になるため、従業員側の納得しやすい環境を作ることができるでしょう。
業務標準化のデメリット
マニュアル外の対応ができない可能性がある
マニュアルを用意して業務を標準化することで一定の水準で業務を行うことが可能になります。一方でマニュアルに記載されていないことはしない、できないといったデメリットが生じる可能性があります。そのため、標準化にあたっては標準化すべき業務であるか否かをよく検討する必要があるでしょう。また、マニュアル自体に柔軟性を持たせるといった視点も大切です。
モチベーションが低下する可能性がある
マニュアル化された業務はルーティン業務になるため、単調な業務に不満を感じる従業員がいるかもしれません。 誰でもできる業務はマンネリ化しやすく、モチベーションの低下を招く可能性があります。
業務の改善が滞る可能性がある
標準化された業務は、機械的に行われるため、改善のきっかけを失う恐れがあります。 マニュアルどおりに業務を行う組織風土では、従業員から自発的に改善案を提示するのが難しくなりがちです。マニュアルからは各作業の意図や狙いがくみ取れないため、どう改善すればよいか、変更による影響が見えないなどの理由から、変更が行いづらい場合があります。
業務標準化の進め方
業務標準化を実現するためには下記の5つのステップで実行します。
①現状の業務を全て洗い出す
現在、業務を担当している従業員に業務フローを書き出してもらい、業務の見える化を行います。担当している従業員にヒアリングを行い、より業務を詳細化することも重要です。
②標準化する業務の優先度を定める
業務内容を洗い出したあとは、標準化する業務を慎重に選定します。例えば、工場内の製造業務で手作業で行っているがために品質にバラつきが生じやすい業務や、属人化が著しいなどといった課題が生じている業務を選定するとよいでしょう。
③業務を最適化する
対象の業務を明らかにしたら、その業務の手順が最適なものになっているかを確認します。ムダな工程があれば省いたり、作業工程の順番を入れ替えたり、他の業務と統合したりしていきます。ITツールの導入による業務改善も検討し、より効率的な方法を探ることも大切です。
④業務のマニュアル化
業務標準化を行う上で重要なのが業務のマニュアル化です。 ③で最適化した業務をもとに、業務フローやタスクの進め方、トラブル時の対応法など、業務で必要となる要素を細かく盛り込みます。
業務によっては作業工程が多いためにマニュアル作成だけで多くの時間を費やしてしまうことが考えられます。そのため、いきなり完璧なマニュアルを作ろうとせず、まずは簡単に業務の流れを記載し、徐々に詳細な内容を追記していくのが良いでしょう。場合によってはマニュアル化する担当者を立てることも選択肢のひとつです。
⑤PDCAを回す
マニュアルを用いて業務に取り組んでみると、問題点や改善点が出てくる可能性があるため、マニュアル化をすれば終わりというわけではありません。常にPDCAを回しながら、業務やマニュアルの改善を行い、より効率の良い、実用性のあるフローにすることが重要です。
業務標準化を成功させるポイント
業務標準化の目的を共有する
何のために業務を標準化するのかという目的を各従業員と共有することが、業務標準化を成功させるポイントのひとつです。業務標準化の目的は、作業時間を短縮させるためなのか、製品の品質を一定以上に保つためなのか、など様々考えられます。そのため、目的を明確にしたうえで従業員に共有することで、皆が同じ方向に向かって業務標準化に取り掛かり、納得した形で業務を行うことができるようになります。当然、各従業員からの納得を得るためには、一方的な説明で終始せずに、従業員とお互いの意見をすり合わせることが重要です。
現場の声を反映し、改善を図る
一度作成したマニュアルでも、常にPCDAを回し、改善する必要があります。より利用しやすいマニュアルを作成するには、現場の意見を取り入れることが何より効果的です。現場の従業員がマニュアルに対して不満に感じていたり、改善に向けたアイデアを持っていたりすることも考えられますので、定期的に現場の意見をヒアリングし、業務の改善を図ることが重要です。
ITツールの活用
ITツールを活用することで、業務標準化を容易に行うことができます。例えば、最近ではマニュアルを簡単に作成できるツールが多く存在します。そのようなツールを活用することで、WordやExcelなどを用いて一からマニュアルを作成する必要がなくなり、マニュアル作成業務の負担が減るでしょう。 また、業務プロセスを可視化するBPMを利用してPCDAを回していく方法や、基幹業務を一元管理できるERPを導入し、システムの機能に業務自体を合わせていく方法も有効です。
業務標準化の成功事例
ここからはツールや管理体制の見直しを行い、業務標準化に成功した事例をご紹介します。
ERPによる業務標準化
人や事業部によってバラバラに行われていた申請業務に課題を感じていた一般社団法人電線総合技術センター様。本ブログを運営する株式会社オロのクラウドERP「ZAC」を導入して業務に沿ったワークローを確立し、申請業務の標準化を実現しました。 現在は、案件の受注や購買などの処理を行う際には、ERPで設定した承認ルートを使い、社内で統一・可視化しています。属人的な業務管理から脱却し、「誰がいつどのような申請をしたのかすぐに分かる」という体制を確立しました。
事例について詳しくはこちらをご覧ください。
フォームによる業務標準化
株式会社オロでは、以前は営業担当者が概算の見積書作成やライセンス設定・増減などの業務を依頼する際に各自で担当部門にメールを送っていました。しかし、依頼者によって依頼タイミングが異なるため、作業漏れや抜けが発生しやすい状況でした。 現在は依頼方法をフォーム申請のみに統一。スプレッドシートに自動で転記されるため、 作業漏れや抜けが発生しにくくなりました。依頼方法の統一と紐づいた自動化により依頼者、作業者両方の工数を削減、業務フローの可視化を実現しています。また、依頼フォーマットが統一されたことで、フォーマットにあわせたフローの整備も進めています。
ナレッジベースによる業務標準化
株式会社オロでは、以前はクライアントへの操作説明に使用するマニュアルをPDFで管理していました。担当者によって、デザインの異なるPDFを使っていたり、最新版がどれか分かりにくい、バージョンアップにあわせたマニュアル更新が煩雑であることなど複数の課題がありました。 それらを解決するためにWeb上でマニュアルを閲覧できるヘルプセンターを立ち上げ、目的に合わせたWebマニュアルをいつでも確認できるような体制を作りました。クライアントへの資料提供もスムーズになっています。 さらに、バージョンアップにおける製品のナレッジ共有方法はヘルプセンターの更新に統一され、社内の業務標準化にも貢献しています。
RPAによる業務標準化
株式会社オロでは、以前は提供サービスや顧客の分類によって複数の部門が異なるフローで請求業務を実施していました。部門によっては「ムリ・ムダ・ムラ」のある業務プロセスとなっており、多くの作業時間がかかっているのが課題でした. そこで、RPAを使って請求業務を効率化するため、フローを標準化して自動化を実施。これをきっかけに、他の業務のフローも標準化してRPAによる自動化(*1)を進めた結果、1年間で2,500時間の工数削減と、1,065万円のコスト削減に成功しています。
自治体クラウドによる業務標準化
内閣府が公開している、地方公共サービス改革の取組事例の「これまでの取組で収集した優良事例について」(*2)によると、大阪府の高石市と忠岡町が基幹系業務システムを共同導入したことをきっかけに、40業務において業務フローの見直しを行い、業務を標準化。経費削減とセキュリティ確保を実現しています。 高石市では、導入5年間で約24%の経費を削減。さらに納付書・封筒・各種帳票類を統一することにより、コスト削減に成功しています。
まとめ
業務標準化とは、誰もが同じ成果を出せるように、業務の手順を整理し、設定したルールに沿って業務を行えることを指します。業務を標準化することで生産性や業務効率の向上につながります。
業務標準化のステップとしては「①現状の業務を全て洗い出す」「②標準化する業務の優先度を定める」「③業務を最適化する」「④業務のマニュアル化」「⑤PDCAを回す」の5つのステップで実行することが望ましいです。さらにITツールを上手く活用すれば、よりスムーズに業務標準化を進めることもできるでしょう。実際に標準化を進める際には、現場の声を反映しながら業務フローやタスクを見直すことが大切です。