売上予測の精度を確実に上げるPDCAの回し方
2022/1/19公開2022/4/08更新
売上予測は目標を達成するための重要な手がかりです。しかし精度が高くなければ、営業活動に上手く活かせません。様々なポイントをおさえて精度を上げることで、より目標に近づきます。この記事では、そのポイントや計算方法、ツールを使った売上予測について紹介、解説していきます。
目次
売上予測とは
売上予測とは、過去の売上データなどの記録を用いて、一定期間における未来の売上を予測することです。
売上目標と異なり、必要な情報を用いて現実的な数字を算出する必要があります。
売上予測 基本の立て方
①売上予測の方法を決める
方法としては過去の実績から割り出すのが一般的です。前年の同月が一番参考になる数値となりますが、下記のポイントをおさえましょう。
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- 成長率などをプラスで考慮する
- 市場の拡大率なども考慮する
- 新規事業や新商品など、過去データがないものは、パイプライン管理の数値を利用する
取り扱っているサービス・商品の売上が昨年比で伸びている場合は、昨年の数値に成長率をかける必要があります。成長率には、以下の2種類があります。
- 昨年のトレンドなど、自然と成長が見込まれるもの(=外的要因)
- 営業や製品・サービスのアップデートなど、自ら活動して生み出していくもの(=内的要因)
特に後者の内的要因による成長率については、今期の実績の推移からみて、さらに成長が必要か、それとも現状の活動ベースで達成可能かを見定める必要があります。現状の活動ベースで達成可能であれば、当初立てた目標が低すぎる場合があるので目標の見直しも必要です。
市場の拡大率なども考慮する
先述の外的要因と類似していますが、経済やイベントなども売上に影響します。昨今で例を挙げると、外出自粛によって売れ行きが不振になる商材もあります。
逆に、オリンピックなどのイベントによって売上アップが見込める商材もあるでしょう。
予め予測できる要因がある場合は、それを考慮することでより正確な予測が立てられます。
新規事業や新商品など、過去データがないものは、パイプライン管理の数値を利用する
パイプライン管理とは、受注までの一連の営業フローを「パイプ」に見立ててステータスを可視化する管理方法です。これを行うことによって、受注まで至る案件数や受注タイミングを予測することが出来ます。
②売上予測に必要な情報を洗い出す
取り扱っている商品やサービスによっても異なりますが、下記のような情報があれば予測可能です。
すべて揃っている必要はありませんが、より多くの情報があればあるほど、精緻な予測ができます。
売上計上タイミングを算出
- 納品までの期間
- 潜在顧客が自社のサービスに興味を持つまでの期間
- 商談期間
- リードタイム
数字を算出
- 営業実績
- コンバージョン率
- 現在の案件化数
契約に関する指標(契約型の商品・サービス場合)
- 契約期間
- 更新率
- 解約率
売上実績
- 月ごと、四半期ごとなどの一定期間の売上
- 商品別の売上
③実際に計算し売上予測を立てる
ここまでで説明したことを考慮して売上予測を立てていきます。まずは案件ベースで積み上げた売上で算出しましょう。予測が出せない部分は前年同月の実績値から予測を補強するのが簡単です。ただし前年の実績値をそのまま流用すると、精緻な予測ができません。
前年の数値を使う場合は、前述の通り平均成長率や市場の動き、イベント等の外的要因を考慮すると予測としての信頼度が上がります。
売上予測の精度を上げるPDCA
予測の精度を上げるためには過去の情報を用いつつ、仮説を立ててPDCAを回していく必要があります。
PDCAを回していく方法を紹介します。
「ヨミ表」をもとにチームで「ヨミ会」を重ねる
ヨミ表とは、案件を「受注⾒込み⾦額」 「受注⾒込み確度 」「時期」に分類して、⽬標に対する現状を数値的に理解できるようにする表を指します。
また、ヨミ会はヨミ表を使った営業の進捗管理会議です。達成シミュレーションをすること、⽬標達成に向けてやるべきタスクを明確にするこを目的に実施されます。
- 【ヨミ表の仕組み】
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- 「⾦額」「確度(ABCで表す)」「受注予定⽉(⽇)」「会社名」を記入する
- ⽬標と売上予測を比較して不足している金額を洗い出す
- ヨミ表はチーム単位と個人単位で作成する
- どれくらい足りていないかを把握した上で、次のアクションを決める(手持ちの商談の進め方や新規商談がどれだけ必要か、など)
進捗管理や目標管理のような事務的な役割だけではなく、目標と現状を可視化して比較することでモチベーションの維持や向上にも繋がります。
数ヶ月先の未来の売上予測まで行う
売上予測は目的ではなく、手段にすぎません。目下の目標を達成するのではなく、数ヶ月後までの予測を立て、ショートしそうな場合はアクションプランを立てましょう。
例えば以下のようなプランが考えられます。
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- 手持ちの商談の進め方を分析する
すでに顧客とコンタクトが始まっているが、受注に至っていない案件について分析しましょう。ボトルネックはなにかを明確にし、改善策を考えます。 - 新規商談がどれだけ必要か
手持ちの商談だけでは不足している場合、必要な金額、案件数を算出しましょう。 - 売上が下がる可能性があるのであれば、それを防ぐ対策
例えば解約が決まっている顧客がある場合は、新しい顧客を創出するなど売上を下げない施策が必要です。
- 手持ちの商談の進め方を分析する
ツール・システムの導入
売上予測を行うための情報収集に時間をかけていては本末転倒です。
必要な情報を集約できるシステムを使うことで、より効率的に精度の高い売上予測が可能になります。売上予測表は、Excelを用いて自ら作成することも可能ですが、SFAやERPなど既成のサービスを利用することで入力にかかる時間を短縮したり、計算エラーの心配なく売上予測を立てることが出来ます。 ツールを用いた売上予測の方法については、後ほど詳しく説明します。
売上予測の精度を劇的に上げるためのチェックポイント
精度を高めるためには、3つのポイントがあります。
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- 売上予定日をより正確なものにする
- 売上予定額のメンテナンスを怠らない
- 売上を変動する売上(新規案件など)、固定的な売上(毎月定額で計上される売上)の考え方をする
①売上予定日をより正確なものにする
引合の時点では、売上予定日を「なんとなく」で四半期末月または会計期末月に指定した経験が多いのではないでしょうか。売上を期末にしておくことにより、今期の売上予測には含まれますし、後日確度が上がったときに売上予定日を正しい日付に直せば良いだけになります。
管理上は楽ですが、それでは期末月の売上高が異常に高くなり、期中の売上高が少なくなります。
実態にも即していないことになりますので、月ごとの予定と実績の比較をしたときに、差異の分析が困難になります。その意味でも見込みの段階から、売上を正しい月に付けることが重要です。
②売上予定額のメンテナンスを怠らない
売上も時間経過とともに、数値の確実性や明度の正確性を上げていくことが重要です。
例えば要件が膨らんで受注額が上がる場合、要件が減って受注額が下がった場合などはこまめに修正しましょう。また、売上予測の質を上げていくためには、毎月の売上予定と、実績の売上の差異が大切です。
当月で差異が発生した場合、かならず翌月の見直しが必要です。実績のほうが少ないならば、翌月以降で取り返す必要があります。逆に実績が上回った場合は翌月以降の目標の再設定が必要となるか、なぜ上回ったのか差異分析が必要です。
今回だけの変化なのか、それとも今後も繰り返される変化なのかを確認しましょう。
マイナスのときの差異分析はもちろんですが、プラスのときの差異分析は将来の予測を補強し営業のアクションを強化できるきっかけとなります。
より着目するようにしましょう。
③「変動する売上」と「固定的な売上」の考え方をする
案件のタイプによって受注確度が異なるのが一般的です。毎月定額で売上があるものは、多くの場合はほぼ確実に売上が継続します。
一方、新規案件は引合時点では確度が低く、金額も受注するまでは変動するものです。
変動する売上(新規案件など)、固定的な売上(毎月定額で計上される売上)の考え方をする2タイプに分けて予測を立てることで、より精度が上がります。
売上予測に活用できるツール・システム
Excelを使って行う売上予測
web上に公開されているテンプレートをダウンロードして活用することも可能ですが、お使いのPCがWindowsであれば「予測シート」機能が使えます。
手順は以下です。
- 売上の表を選択する。
- データ>予測シートを開く。
グラフの青線が過去実績、オレンジが予測です。オレンジが3本に枝分かれしているのは、上から信頼上限、予定、信頼下限です。
- メリット
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- Microsoft Officeを利用中であれば追加費用が発生しない
- 操作方法も新しく覚え直す必要なく、学習コストもかからない
- 導入・運用コストが低い
- 自由度が高い
- 使える人が多い
- テンプレートで導入の手間を軽減できる
- デメリット
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- 関数をたくさん使うと容量が重くなりパフォーマンスが悪くなる
- 入力ミス・計算エラーの可能性がある
SFAで行う売上予測
SFAとは、Salesforce Automation(セールスフォースオートメーション)の略で、いわゆる営業支援システムを指します。
商談開始から受注に至るまでの活動を管理するのが主な役割で、以下のような機能が代表的です。
- 顧客情報管理機能(顧客の基本情報、過去のコンタクトなど)
- 案件管理機能(受注確度、受注予定日、受注予定金額など)
- 商談管理機能(過去の商談履歴、個々の商談のステータスなど)
- 活動管理機能(テレアポ数、アポイント獲得数、訪問数、成約率、受注率など)
- 売上予測・予実管理機能
日々の営業活動の結果データを入力するだけで、詳細な売上予測を出すことが出来ます。
- メリット
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- リアルタイムでのモニタリングが可能
- 営業活動に特化したツールであり、営業活動をサポートする機能が揃っている
- 予測に使う時間を最低限にして、営業活動に時間を割ける
- デメリット
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- 導入費用や運用コストがかかってしまう
- 学習コストが発生する
ERPで行う売上予測
ERPとは、Enterprise Resources Planning の略で、「基幹系情報システム」を指します。
ヒトを管理する人事管理、モノを管理する在庫管理、カネを管理する販売管理など、システムでまとめて管理することで、ひとつつひとつバラバラのシステムを使うよりも全体の効率化が可能になります。
詳しく知りたい方は、下記の関連記事も読んでみてください。
機能としては、以下が代表的です。
- 人事・給与管理
- 販売管理
- 購買管理
- 管理会計管理
- 営業管理
- 売上予測
- 予実管理機能
- メリット
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- 営業支援だけではなく、様々な機能を網羅しているので、複数のシステムを横断する手間が省ける
- 証憑発行や日報登録等、他機能等の機能と紐付いているので、データ入力に強制力が働く
- SFA同様、リアルタイム性がある
- デメリット
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- 導入に時間がかかる
- 営業だけでなく、会社全体の管理方法が変わるため学習にかけるコストが高い
まとめ
この記事では売上予測の目的や方法について解説しました。本ブログを運営する株式会社オロのクラウドERP「ZAC」は、売上予測に必要な機能が一通り揃っています。
ZACで引合管理を行うメリットは、請求書発行・売上登録など後続の業務に紐づいている特性上、データ入力に強制力があり、メンテナンスを怠れない仕組みになっていることです。
精度の高い売上予測には日々のメンテナンスが欠かせません。
「売上予測を行いたいが方法について模索している、既に行っているが予測の質が良くない、日々のメンテナンスが継続できない」など、お悩みがあればで売上予測を行ってみてはいかがでしょうか。