リソース管理とは。メリットや手順、プロジェクト成功の要を解説
2023/2/10公開
プロジェクトの成功にはリソース管理が欠かせません。リソースを適切に管理できていなければ、プロジェクトが遅延したり赤字になったりと、企業にとって大きなリスクにつながります。
必要な手順やポイントを押さえることで、どのような組織でもリソース管理が可能です。本記事では、管理すべきリソースの種類や管理手順、ポイント、効率的に管理できる方法について解説します。
目次
リソース管理とは
リソース管理とは、事業を行ううえで必要なヒト・モノ・カネなどの経営資源を効果的に活用し、プロジェクト完遂や利益最大化を目指す取り組みのことです。経営資源はリソースと呼ばれ、目に見えるものから目に見えない無形資産まで幅広く存在します。
プロジェクトごとに適切にリソースを割り振り、計画通り使われているかどうか把握することで、プロジェクトを最後までやり遂げ、かつ企業に利益をもたらせるのです。ただし企業が持つリソースは有限であるため、決められたリソースで最大のパフォーマンスを発揮することが企業の繁栄には重要です。
リソースを適切にコントロールすることはプロジェクト管理にも必要となります。プロジェクト管理について詳しくは下記の記事を参照してください。
企業が管理すべきリソース
リソースと一口にいっても、さまざまなものが存在します。ここでは、企業が管理すべきリソースついて、それぞれ解説していきます。
ヒト
まず挙げられるリソースはヒト、すなわち人的リソースです。リソース管理を行うのもヒトであるため、最も重要な要素です。従業員のスキル、経験、キャパシティを把握し、各プロジェクトに采配します。
プロジェクトに向けて人員のスケジュールを押さえ、他の案件との余力の調整を行いましょう。場合によっては、外部から人材を確保する必要も出てくるため、早めの計画が肝心です。
時間
人的リソースと関連するリソースとして、時間があります。時間には、プロジェクトや各タスクの期限の他、従業員の稼働時間を含みます。従業員の労働時間は有限です。期限までにプロジェクトを完遂するべく、業務に優先順位をつけるなど、限られた時間を有効活用するためにはどうしたらいいのかを考えることが求められます。
目に見えないリソースのため、実際に消費した時間をプロジェクト別に把握することは手間がかかります。しかし正確なリソース管理のためには、誰がどの業務にどれだけ時間を費やしたのか把握することが欠かせません。
モノ
設備や備品、生産機械、車両、建物といった有形資産はモノというリソースに分類されます。プロジェクト遂行に必要なモノが何であるのかあらかじめ把握し、必要なタイミングで使えるよう調整しておかなければなりません。
これらの物的リソースが足りなければ新たに購入するかリースすることになるため、資金面との兼ね合いを図ることも必要です。
カネ
カネとは、経営資金のことを指します。現金だけでなく、株式や債券、借入金等も含むことを忘れてはなりません。人材を雇用して働いてもらうにも、設備や備品を購入するにも資金が必要です。
プロジェクトにどれだけの費用がかかるのか、そのための資金をどのように調達するのかを計画します。プロジェクト進行中も適切に予算を消費しているかを管理して、資金が底をつかないようにやりくりしなければなりません。
情報
売上情報や顧客情報、製品の製造技術、業務マニュアルなどの情報もリソースです。これらの情報は、データとしてExcelやシステムに管理されているケースが一般的でしょう。
常に最新の状態を保ち、しかるべき人がアクセスできるようにして、質の高い情報をいつでも利用できるよう管理しておく必要があります。特に、各人が持つ経験にもとづく情報は属人化しやすいため、社内で共有・活用できる仕組みを持つことも大切です。外部へ情報が流出しないよう、機密管理も徹底しなければなりません。
知的財産
企業の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物、発明、意匠などは、知的財産と呼ばれるリソースにあたります。企業競争力の要ですので、特許や商標権を取得するなど、法的に守らなければなりません。
知的財産によって利益が生み出されるだけでなく、企業の魅力や強みとしてさまざまな面で活かせるため、適切な管理と活用が大切です。
リソース管理を行うメリット
リソース管理は手間もかかる一方、企業に多くのメリットをもたらすものです。具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
プロジェクトの全体像が把握できる
リソース管理を行うと、必然的にプロジェクトに必要なリソースの量が明確になります。そのプロジェクトがどれくらいの期間かかるのか、どれほどの人員と費用を要するのかといった、プロジェクトの全体像や規模を把握できるようになるのです。
また、プロジェクトに必要なリソースの質も見えてくるでしょう。適切なリソース管理を行うことで、必要な技術や情報の粒度が見えてきます。たとえば、自社でシステム開発を受注した場合、どのようなスキルが必要か、そのスキルを持った従業員がどのくらいいるのかの見極めが可能です。
さらに、現状で何が足りていないのか、またどの時期に何をすべきなのかも把握できます。リソースの計画を立てる段階で全体像が見えれば、他のプロジェクトとの調整も行いやすくなります。
適切なリソース配分ができる
プロジェクトに参画するメンバーのリソースをあらかじめ把握することで、業務負荷の適切な配分が可能です。計画段階からどれだけの人員が必要かわかれば、早めの人員補填も可能になるため、1人に負荷が偏ったり、無理な働き方を強いたりする事態を避けられます。
カネやモノなどに関しても同様です。あらかじめ必要な金額や設備がわかり、適切に配分することで、無駄な設備投資を防ぐことができます。またリソース管理を繰り返すことで、見積の精度が高まるはずです。過去に同様のプロジェクトがあれば、それを参考により正確なリソース配分ができるでしょう。
精度の高いスケジュール設定ができる
プロジェクトの全体像を把握したうえで適切なリソース配分を行えば、現実的で精度の高いスケジュール設定ができるようにもなります。
スケジュール設定の際に、各メンバーの適性を考慮しながら、どのタスクに誰が何時間がかけるのかを見積もります。そうすることで、勘や経験に基づいた漠然とした予測ではなく、精度の高い見積もりができ、バッファを含めた無理のないスケジュールが作成可能です。
リスクマネジメントができる
あらかじめ必要なリソースを割り出して準備することは、プロジェクトの途中で人的リソースが足りなくなって、他のメンバーに負荷がかかったり、新たな人員確保を行う手間がかかったりすることの防止につながります。たとえ、プロジェクトの仕様変更によるスケジュール遅延や、予算不足といった急なトラブルが起きたとしても、早い段階で対処することができるでしょう。
チーム間で共通認識が持てる
プロジェクトの進行度合いや必要なリソース、不足しているリソースなどが明確になるため、チームメンバーの間で共通認識を持ちやすくなります。全員が同じ情報を同じ粒度で共有することで、プロジェクトをより効率的に進めることが可能です。
目標とそこまでのステップがはっきりすれば、メンバーのやる気や責任感も増すでしょう。もしどこかで進行が遅れているとわかったら他のメンバーのサポートに回るなど、チーム間に結束が生まれるといったいい影響も考えられます。
リソース管理の手順
リソース管理に多くのメリットがあることは上述の通りですが、実際に業務で取り入れるにあたってどのような手順が必要なのでしょうか。ここでは案件・契約・プロジェクト単位で業務を遂行する、プロジェクト型ビジネスを例に具体的な手順を説明します。
①現状のリソースを把握
現時点でプロジェクトに使えるリソースを把握することが、第一ステップです。カネ・モノ・情報は比較的把握しやすいものの、ヒトのリソースに関しては個人に依存する部分が大きいため、把握することは容易ではありません。各従業員のスキルや現在抱えている業務内容などを細かく洗い出しておくことが必要です。
場合によっては新たに人員を獲得しなければならないなど、計画に大きな影響を及ぼします。スケジュールを決めるにも、メンバーのリソース次第となるため、現状の正確な把握が重要なのです。
②プロジェクトに必要なリソースを洗い出す
次に、プロジェクトに必要なリソースについて洗い出します。どのようなスキルを持った人員が何人必要なのか、予算はどれくらいかかるのか、必要な設備は何かなど、過不足なく洗い出すことが大切です。情報や知的財産など、目に見えないリソースもこの段階で洗い出しておきましょう。
③プロジェクトの計画・実行
必要なリソースを洗い出せたら、プロジェクト開始から終了までの計画を立てていきます。いつ、どれだけのリソースを投入するのか、どれだけの人員で進めていくのか、精度高くスケジューリングすることが大切です。リソースが足りない場合はどこから補填するのか、あるいはスケジュール調整でやりくりするのかなども計画に加えておきましょう。
このとき、必要な人員とプロジェクトに回せる人員を正確に把握しておかなければ、計画も絵に描いた餅となってしまうので注意が必要です。また、もしリソースが不足したり、より多くの資金が必要になったりした場合に備え、考え得るトラブルへの対処法もあわせて検討しておくといいでしょう。
常に複数のプロジェクトが動いているような業種の場合、限られた社内のリソースをプロジェクトごとに割り振らなければなりません。どのプロジェクトにどのリソースを配分するか、スケジュールはどう設定するのかなど、複合的に判断してリソースを配分することが重要です。
④課題・問題を把握する
プロジェクトを進めるなかで、課題や問題が出てくることもあるでしょう。それらを吸い上げて把握しておきます。小さな課題だとしても、把握しないまま進めてはのちのち大きなトラブルにつながりかねません。プロジェクトメンバーから定期的に話を聞いたり、予算の消費状況をタイムリーに確認したりして、できるだけ早いタイミングで課題・問題発見できる仕組みを作っておきます。
⑤課題・問題を分析し、対策を実施
前のステップで把握した課題・問題に対し、原因を分析して対策を実施していきます。どのリソースがどの時点で不足したのか、なぜそのような課題・問題が発生したのか、イメージや過去の経験則からではなく、現場の状況から真因を探っていかなければなりません。
対策を立てる場合は、真因に本当に効果があるかどうか見極めることが大切です。対策を実施してみて効果が出ないようであれば、別の対策を考えるか、そもそも真因が正しかったのかを見直す必要があります。もし見当違いな対策を続けていたら、時間や費用がムダになる可能性もあるため慎重に検討しましょう。
リソース管理の要とは
リソース管理を行ううえで意識したいポイントが2つあります。このポイントを押さえてリソース管理を実施してみてください。
重要度・優先度をつける
限りあるリソースを有効活用するためには、各プロジェクトやタスクごとの重要度を見極めて、優先度の高いもの中心にリソース配分することが大切です。プロジェクトやタスクによって必要なリソースや優先度は異なるため、平等に割り振ればいいというものではない、と認識しておかなければなりません。
利益率の高いプロジェクトを優先するのか、締め切りが近いプロジェクトから順に配分するのかなど、重要度・優先度を判断するための明確な軸を持っておくことも大切です。
適材適所を見極める
人にはそれぞれ特性があり、業務に対しても向き不向きがあるものです。もし向いていない業務に割り当てた場合、業務効率が落ちるだけでなく、会社へのエンゲージメントも下がってしまう可能性があります。どの人材をどこに配置すればもっとも効率的に業務を進められるのか、適材適所を見極めることが重要です。
場合によっては多少効率を落としてでも、人材育成のためにあえて経験のない人材をより高度なプロジェクトに割り振ることもあります。このように、企業の中長期的な成長を見越した判断もときに必要です。使用する設備(モノ)に関しても同様で、どの設備をどのプロジェクトやタスクに使えばもっともパフォーマンスを発揮できるか見極め、適切に配置するよう意識しましょう。
リソース管理の効率化にはシステムが有効
このようにプロジェクト型ビジネスにおけるリソース管理は非常に複雑です。そこでおすすめしたいのが、プロジェクト管理に特化したツールやシステムの導入です。フォーマットの作成やセルでの作業が必要なく、大規模なプロジェクトであっても効率的かつタイムリーなリソース管理が可能です。プロジェクトに関するすべてのリソース情報を網羅し、かつ常に最新の状態を共有できるようになります。
本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP「ZAC」もプロジェクト管理に特化しています。プロジェクトごとにかかる、売上・仕入・外注費・勤怠(工数)・経費をすべて紐づけられるため、リソース管理はもちろん、その先の予実管理まで行うことが可能です。さらに、プロジェクト損益の予定、着地見込み、最終結果それぞれのモニタリングができるのも特徴です。赤字になりそうな案件を早期発見し、迅速な対応を行うことでで、赤字の未然防止や損益の改善に役立ちます。
そのほか、リソース管理を行ううえでよく用いられるのがExcelやスプレッドシートです。ガントチャートをはじめとしたプロジェクトを可視化する機能があり、無料テンプレートも多数あるため、便利に利用できます。普段から業務でExcelに慣れていれば、チャート作成や操作も難しくないでしょう。しかし細かい設定や大規模プロジェクトの稼働状況を管理するのにはやや不向きでもあります。不可能ではありませんが、各リソースの管理が異なるシートやファイル上で行われ、各情報を連携させる作業が発生するケースが見られます。また、Excelは複数人での管理や容量の大きなデータの管理が得意ではありません。
まとめ
プロジェクトをスムーズに進め、リスクを極力抑えるために欠かせないリソース管理。ヒト・モノ・カネといった目に見えるリソースだけでなく、情報や知的財産などもリソースであることを認識し、適切に管理することが求められます。
リソース管理は、プロジェクトの全体像が把握できたり適切なリソース配分ができたりと、企業にさまざまなメリットをもたらします。限られたリソースの中で重要度や優先度をつけ、適材適所な配置を念頭にプロジェクトを進めることが大切です。
効率的かつタイムリーな管理を行うなら、専用のツールやシステムの導入をおすすめします。たとえば、「ZAC」はプロジェクト管理機能を持っており、ヒト・モノ・カネ・情報といったリソース管理に必要な要素を一元管理できます。そのため、システム開発業や広告業といった、複数のプロジェクトを同時進行する業種に最適です。
常に状況が変化するプロジェクトを成功させるために、自社に合った適切な方法で、正確かつ効率的にリソース管理を実践しましょう。