プロジェクト管理とは?基礎から実践までをやさしく解説
2021/9/10公開2024/2/29更新
プロジェクトを進めるうえで、多くの関係者やタスクを管理できず計画倒れになってしまったり、納期に間に合わなかったりと、管理方法に課題を抱えている人も少なくないでしょう。プロジェクトの目標を達成するためには、適正なプロジェクト管理が重要です。
プロジェクト管理とは、具体的にどのような業務を指すのでしょうか。把握すべき情報や使うべきツールは何なのでしょうか。本記事では、プロジェクト管理の基礎から実際の業務で使える知識、ツールを紹介します。プロジェクト管理にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
プロジェクト管理とは
プロジェクト管理とは、プロジェクトを計画通り遂行するため、人・物・お金・情報・時間を適切にコントロールすることです。プロジェクトには納期や予算といった要件が決まっています。それらを満たしてクライアントに納品するためには、プロジェクト管理が欠かせません。
一般的には、プロジェクト管理を行う人のことを「プロジェクトマネージャー(PM)」と呼びます。人・物・お金・時間といったリソースには限りがあるため、プロジェクトマネージャーが適切な方法で管理しなければなりません。
人員の配置や、スケジュールの管理、経費の予実管理、品質管理など、プロジェクトに関わることを幅広く、かつ細分化して把握しておく必要があります。プロジェクトの各フェーズにおいて、計画達成できるよう働きかけることもプロジェクトマネージャーの仕事のひとつです。
主な管理項目
プロジェクト管理では、さまざまなリソースを把握して活用・調整していく必要があります。ただし、各項目の細かい部分にとらわれすぎず、全体を統合して管理することが重要です。以下に、具体的な管理項目を解説します。
コスト管理
プロジェクト全体の予算や実績、今後の見通しなどを管理します。プロジェクトに必要なコストを見積もり、それに応じて予算配分を行います。予算は限られているため、無駄な支出がないよう留意しなければなりません。状況に応じて予算を調整する必要もあるでしょう。原価管理もコスト管理に該当します。
スケジュール管理
プロジェクトが納期通りに完了するよう、日程の計画や進捗を管理します。各タスクにどれだけ工数がかかるのか把握したうえで、無理のないスケジュールを組まなければなりません。プロジェクトの進捗に合わせて、計画変更などの調整も必要です。
要員管理
プロジェクトに関わる人員についての管理です。必要なメンバーをアサインし、各タスクに適材適所で振り分けていきます。1人で複数プロジェクトを担当するケースも少なくないため、プロジェクト進行中も各メンバーの負荷を把握し、適宜配置を調整しなければなりません。
要員管理についてはこちらの記事もご覧ください。
品質管理
プロジェクトの成果物や業務の品質を管理します。目標はどこなのか、品質の方針やゴールを決めるところからがプロジェクトマネージャーの仕事です。最終的な品質を定めるだけでなく、プロジェクト進行中に品質検査の日程や測定方法を計画し、目標に到達するまでの経過も管理します。
リスク管理
プロジェクトの進行中に発生しうるトラブルやリスクと、その対処法を管理します。プロジェクト進行中に予期せぬトラブルはつきものです。トラブルによるプロジェクトの遅延を防ぐために、事前に考えられるリスクを洗い出し、対処法を検討する必要があります。トラブルが発生しないように監視するとともに、発生したトラブルに随時対応できるような体制を整えます。
プロジェクト管理の目的
プロジェクト管理の目的は大きく2つあります。ひとつは、プロジェクトに求められる要件を達成することです。求められている期日までに、求められる内容で納品できるよう、プロジェクトの進捗を管理しなければなりません。
もし計画より遅れそうであれば、メンバー間のタスクを見直して再振り分けするなど、挽回策を練る必要があります。そのためにも、常にプロジェクトの状況を把握しておくことが大切です。
もうひとつの目的は、プロジェクト達成による利益の最大化を図ることです。決められた予算内でプロジェクトを達成するだけでなく、利益を最大化するためにムダをなくすことも求められます。
利益を最大化するには経費だけでなく、人員のムダや工程のムダも削減することがポイントです。要件を満たした上で何を削減できるか考えるためには、プロジェクトをリアルタイムに管理する必要があります。
プロジェクト管理をしないとどうなる?
プロジェクト管理を行わないと、プロジェクトを計画通りに遂行できなくなる恐れがあります。具体的に考えられるリスクは、以下の通りです。
・納期に間に合わない
・求められる品質を満たせない
・予算をオーバーしてしまう
その結果、クライアントからの信頼を失い、取引がなくなる可能性もあります。コストをかけすぎることで、自社の赤字要因にもなりえるでしょう。また、目標や計画が可視化、共有されないことでプロジェクトに関わるメンバー間のコミュニケーションが上手くいかず、トラブルの原因になることも考えられます。
プロジェクト管理は企業に課せられた義務ではないものの、プロジェクトの炎上や赤字といった致命的な失敗を未然に防ぐために重要な業務です。適切な知識とツールによって管理することをおすすめします。
プロジェクト管理の主な手法
プロジェクト管理を行なっていくうえでは、さまざまな手法やチャートの活用が欠かせません。ここでは、プロジェクトマネージャーとして最低限知っておきたい知識を紹介します。
ガントチャート
ガントチャートとは、棒グラフなどを用いてプロジェクトの進捗を一覧で管理する表のことです。縦軸にプロジェクトのタスクや担当者を記載し、横軸に日付を入れます。ガントチャートにより、いつ・誰が・どのタスクを実施すべきかわかるようになります。
個々のタスクや作業期間、期日などを視覚的に把握できるため、プロジェクトのスケジュール管理に便利なツールです。
WBS(Work Breakdown Structure)
WBS(Work Breakdown Structure=作業分解構造)は、プロジェクトに必要な作業を細かく分解して構造化する手法です。プロジェクト達成に向けてどのような作業が必要なのかを洗い出せます。ガントチャートの縦軸を作るためにも必要な手法です。
作業を洗い出したのち、順序を設定して構造化し、すべての作業に担当者を設定するという流れでWBSを作成します。
アジャイル
アジャイルとは、作業をいくつかのステージに切り分け、ステージごとにレビューを行う管理手法です。最終工程まで待たずにステージ分けして検証することで、こまめな確認・修正が可能になります。
ステージごとに切り分けてフィードバックを得られるため、クライアントのニーズに寄り添いながら、スピーディーに完成させられるというメリットがあります。各ステージに目を向けるあまり、全体のスケジュール感が見えづらくなる恐れもあるので、プロジェクトマネージャーによる全体管理が重要です。
ウォーターフォール
ウォーターフォールとは、要件をもとにプロジェクトを複数のフェーズに分け、上から順番に終わらせていく管理手法です。プロジェクトの要件が具体的に固まっている場合に用いられます。
この方法では、ひとつ前のフェーズが終わらない限り、次のフェーズは開始できません。また、終わったフェーズはクローズするため、一度通り過ぎたフェーズに戻ることもできません。進捗管理のしやすさがメリットである一方、修正する場合は最初のフェーズからすべてやり直さなければならず、手戻りが大きくなる点がデメリットです。
EVM(Earned Value Management)
EVMは、労務費などのコストを軸とした管理手法です。プロジェクト管理では、日程だけでなく予算も計画範囲内に収める必要があるため、ガントチャートなどと合わせて活用します。
計画上の出来高(PV)・実際にかかったコスト(AC)・完了している実績値(EV)・完了時の総予算(BAC)の4つの指標がEVMの構成要素です。これらの4指標から算出されるスケジュールの差異(SV)とコストの差異(CV)によって、プロジェクトの進捗が把握できます。
プロジェクトを深く学ぶために知っておきたいPMBOK
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクト管理に関する知識を体系的にまとめたものです。米国の非営利団体・PMI(Project Management Institute)によって作られ、プロジェクト管理の世界標準として浸透しています。
PMBOKを学ぶことで、プロジェクト管理の基礎知識を網羅的に身につけることが可能です。PMBOKではQCD(品質・コスト・納期)の管理を目標としており、実務でも効率的にプロジェクト管理できるようになります。プロセス管理にも主眼が置かれているため、改善点の洗い出しにも役立つ知識を得られるという特徴があります。
プロジェクト管理の具体的なステップ
プロジェクト管理は、一般的に以下のステップで進めていきます。これからプロジェクト管理に携わる方は参考にしてみてください。
目標の設定
プロジェクトの目標を明確にすることが最初のステップです。主に品質、予算(コスト)、スケジュールについて目標を設定しましょう。目標が明確であれば、計画もより具体的に立案できるうえ、メンバーのモチベーション向上も図れます。
必要タスクの整理
目標が決まったら、プロジェクトを完遂するために必要なタスクを洗い出します。タスクの実行順序や優先順位を決め、スケジュールに落とし込みましょう。タスクごとに業務量は異なるため、各タスクに必要な日数や人員数を把握しておかなければなりません。
計画書の作成
整理したタスクに対して必要な人員を割り振り、納期に間に合うようスケジュールを立てていきます。このとき、品質テストの日程もあわせて計画しましょう。プロジェクトメンバーは、本人の適性や希望も踏まえたうえで、業務負荷に問題がないよう割り当てることが重要です。
進捗チェック
プロジェクトが始まったら、進捗を随時チェックし、計画通りに進んでいるか把握する必要があります。もし計画より遅れているなら、ボトルネックを探り、どこを改善すべきか検討しましょう。必要に応じて、人員を追加することも考えなければなりません。人員やスケジュールだけでなく、予算や品質の面でも随時チェックを行い、計画通り進むよう調整していく必要があります。
プロジェクト管理に役立つツール
実際の業務でプロジェクト管理を行う場合、何かしらのツールを使うことになります。Excelを使った方法か、プロジェクト管理専用のツールを用いる方法が一般的です。Excelとツール、それぞれでプロジェクト管理を行う方法について解説します。
Excel
Excelは導入費用がかからず、手軽に利用できるため、多くの企業でプロジェクト管理に利用されています。ガントチャートのような表を作成するのに向いており、特別な技術がなくても管理できる点がメリットです。テンプレートも多数存在します。
セルに色をつけて工程を表せば、簡単にガントチャートを作成できます。条件付き書式を活用することよって、日付指定で自動的にセルを着色することも可能です。
ただし、計画変更が発生した際には手動で修正しなければならず手間がかかります。どこをどのように変更したのか分からなくなり、履歴を追えなくなるリスクも考えなければなりません。
また、タスク間の作業順序や関連付けができなかったり、担当者ごとの工数集計や負荷管理がしづらかったりと、管理上の難しさがあります。
プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールとは、ワークフローや日程、工数、コストなどのプロジェクトに関する情報を一元管理できるシステムのことを指します。必要な要素を入力するだけで、自動的に工程表が作成され、ガントチャートも簡単に作成できます。
一般的なプロジェクト管理ツールは、以下のような機能を持っています。
・プロジェクトのスケジュール管理
・タスク管理
・工程表(ガントチャート)の作成
・工数集計
・他システムとの連携
他にも、日報管理や物品管理、予算管理、アクセスログ管理といった、人・物・お金・情報を管理する機能がついている場合もあります。
変更履歴の把握やタスクの関連付けなど、Excelでは難しいこともツールひとつで可能になります。一方、導入・運用にコストがかかったり、導入までに時間がかかったりと、企業によっては簡単に導入できない点がデメリットです。
プロジェクト管理ツールのメリット
プロジェクト管理ツールを使うことで、計画時の工程表作成やプロジェクト進行中の状況管理といった、管理工数を削減できる点が大きなメリットです。また、現時点でどこまで進んでいるのか、どの工程に遅れが出ているのかを可視化でき、進捗も把握しやすくなります。
プロジェクトに関わるメンバーが同じ情報にアクセスできるため、情報共有も容易になるでしょう。プロジェクトの進捗に関して、関係者で共通認識を持てる点も、ツールを利用するメリットです。
プロジェクト管理ツールの費用感
ツールの機能 | 相場 |
---|---|
タスク管理のみ | 数百円 |
タスク管理、スケジュール管理、 工程表(ガントチャート)の作成、 工数集計などを含む |
2,000~3,000円/人 |
月額1~3万円/20人、月額5~15万円/100人 |
プロジェクト管理ツールは、企業独自のシステムとして独自に構築するのか、すでに提供されているパッケージサービスをそのまま利用するのかによって費用感が大きく異なります。また、利用する機能や人数によっても変動します。
パッケージサービスの場合、メンバー間でのタスク管理機能のみであれば、費用は一人あたり月額数百円程度が相場です。機能が増えると、一人あたり月額数千円ほどになります。一定の人数まで利用できるプランであれば、利用者20名までで月額1〜3万円、100名までで月額5〜15万円あたりが相場です。
まとめ
プロジェクト管理では、クライアントに求められている要件の達成と会社の利益最大化を目的として、人・物・お金・情報・時間を適切にコントロールしなければなりません。もしプロジェクト管理がなされていなければ、計画通りに進行できず、納期に間に合わなかったり、予算をオーバーしたりといったリスクが考えられます。
プロジェクト管理を行うにあたっては、どのような手法を用いるべきか、事前に基礎知識を身につけておくことが大切です。実際に管理する場合は、Excelや専用ツールを使うことになります。ただし、企業規模やプロジェクト規模によっては、Excelだけではカバーしきれないこともあるため、Excelに依存しない「脱Excel」という方法がおすすめです。
さらに進んでプロジェクト別の利益の可視化や個別原価計算、実行予算から作業担当者のアサイン管理など、プロジェクトを軸にした損益管理を行いたいと考えている方には、本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』のプロジェクト管理機能が役に立つでしょう。
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正確かつリアルタイムなプロジェクト管理を行うには、ZACのようなツールの利用を検討してみてはいかがでしょうか。