プロジェクト収支管理とは。進め方や最適なツールを紹介
2021/6/25公開2024/8/06更新
プロジェクトの利益を正確に把握するためには、プロジェクト収支管理が欠かせません。部門ごとや担当者ごとの売上は把握できているものの、プロジェクトごとの収支を正確かつタイムリーに把握できていない方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、プロジェクト収支管理の基本から押さえるべきポイント、スムーズに管理するためのツールについて解説します。これからプロジェクトごとの収支管理に力を入れ、利益向上を目指している担当者の方や、正確かつタイムリーなプロジェクト収支管理を行いたい企業におすすめのシステムもご紹介します。
目次
プロジェクト収支管理とは
プロジェクト収支管理とは、プロジェクト単位の原価を適正に把握し、必要なタイミングでプロジェクト収支を可視化できるようにすることです。単に収支管理と呼ばれることもあり、プロジェクトごとに目標とする利益を確保できるよう計画立案や見直しなどを行うことも含まれています。
赤字プロジェクトを防ぎプロジェクトの利益を確保するため、ひいては適正な経営管理を行うために、プロジェクト収支管理が欠かせません。見込段階から進捗中、終了までのプロジェクトの収支、着地見込を見えるようにしておく必要があります。
プロジェクト収支管理を行う上では、予算と売上だけでなく、原価を正確に把握することがポイントです。プロジェクト単位での個別原価計算を実施したり、予算に対し、実績がどれくらいなのかを見て、差分があればそれを埋めるための行動を計画・実践したりすることは、企業の利益創出には欠かせません。
まず、プロジェクト収支管理を構成する3つの指標を紹介します。
予算管理
プロジェクトを遂行するうえで、何に・いつ・どれくらいの費用を使うのかを計画・把握し、計画通りに推移しているかチェックするのが予算管理です。プロジェクトの期間は、月単位で終わるものから年単位になるものまで、さまざまです。 長期プロジェクトの場合、途中で計画変更があったりトラブルによって計画とズレたりすることがあるため、毎月の目標と実績値を正確かつタイムリーに把握しなければ、最終目標から大きくズレかねません。予算が売上を超えれば赤字プロジェクトとなるため、利益が出るようプロジェクトを進めていくことが重要です。
原価管理
経費や仕入、人件費といったプロジェクトにおける原価の算出・把握をすることを原価管理といいます。プロジェクトを遂行するなかで外注した費用や物品を購入した経費だけでなく、プロジェクトを推進するための労働時間=工数も原価としてとらえ、正確かつタイムリーに把握することが重要です。 複数のプロジェクトが同時進行している業種の場合、計算が煩雑かつ、正確な工数の把握が難しいことから、原価管理でつまずく企業も多く存在します。
売上管理
プロジェクトを完遂して得られる売上がどれくらいなのかを記録し、売上目標を達成するために分析することを売上管理といいます。一般的には、製品・サービスの価格と販売数、販売時期などを把握してまとめ、常に最新の情報が得られるようにすることを指します。 売上が目標に届いていない場合、原因を分析して軌道修正することも必要です。売上があってこその利益であるため、重要な管理指標となります。
プロジェクト収支管理を行う重要性・メリット
プロジェクトにおける収支管理を行う重要性・メリットは、主に以下の4点が挙げられます。
プロジェクトの赤字リスクを早期発見につながる
収入と支出のバランスをタイムリーに把握することで、赤字になりそうなプロジェクトや、収支のバランスが悪いプロジェクトを早期発見できます。早めに気づければ、何が原因なのか探って対策を打つことが可能です。 プロジェクトの赤字は、企業としての赤字につながるため、経営上重要な管理項目だと言えます。
プロジェクトの利益の向上につながる
利益率もプロジェクトの価値を測る重要な項目です。売上が伸びていても、その分だけ支出(原価)が増えてしまえば利益は伸びません。プロジェクト収支管理を行うことで得られる利益を算出でき、どのプロジェクトが企業の利益に貢献しているのかを把握できるようになります。 また、利益率が低いプロジェクトを見つけられるため、改善策を考え利益率向上を図ることにもつなげられます。
時間的コスト意識を高められる
プロジェクトにかかるコストは、大きく分けて2種類あります。1つは人件費や消耗品費など、直接お金がかかる金銭的コストです。もう1つが、業務にかかる時間の長さを表す時間的コストです。 プロジェクトにかけた工数といった時間的コストは、金銭的コストに返還されます。プロジェクトにどれだけの工数がかかっているか見える化できれば、時間的コスト意識が高まり、同じ時間でもより多くの価値を生み出そうという意識改革が見込めるはずです。
意思決定の判断材料になる
プロジェクトごとの収支を把握し、モニタリングしていくことは、次年度の計画立案に役立ちます。似た内容のプロジェクトを行う際も、過去の記録があればより緻密な予測を立てられるようになります。データに基づいた適切な意思決定をスピーディに行えるようになるでしょう。
プロジェクト収支管理の流れ
ここからは、プロジェクト収支管理を実践する場合の具体的な進め方を解説します。収支管理を効率よく進めるためには、PDCAサイクルを回すことがおすすめです。以下のPDCAのステップに沿って、各フェーズで何をすべきなのか紹介するので参考にしてください。
①プロジェクトの予算計画(Plan)
まずは収入と支出の計画を立てることから始めます。どれだけの売上を作ってどれだけの費用をかけるのかをプロジェクト開始までに計画し、その計画をもとに予算を設定します。 売上は、過去の実績データや現時点での見通しを含めた内的要因と、景気や季節などの外的要因を考慮することがポイントです。このとき、収支の管理方法や確認のタイミングなども計画しておきましょう。
②進捗中のプロジェクト収支のモニタリング(Do)
計画を立てたらプロジェクトを実行していきます。予算に沿って進められるよう常に計画を確認し、定期的に実績を記録していきましょう。実績を確認・記録するタイミングも、計画通りに行うことが大切です。
③プロジェクトの最終実績を確認(Check)
プロジェクトが終わったら、当初の計画通り進んだのかを検証・評価します。このフェーズでは、収支の計画と実績を比較してどれだけの差が生じたかを把握することがポイントです。その結果、差が大きければ次のプロジェクトの反省とし、ズレがあまりなければ次の参考値とします。
④次のプロジェクトに向けた対策・改善(Action)
③のフェーズで、プロジェクト予算計画と収支の実績が大きく乖離していた場合、その原因を探って対策を考えます。原価もしっかり確認し、何が予算からズレていたかを確認することが大切です。売上は計画通りでも、原価がかかりすぎていた場合には利益が減少してしまいます。企業として利益を確保するために何を改善すべきか考えましょう。
プロジェクト収支管理のPDCAを回すためには、計画をまとめたり、数字の変動を記載したりするツールが必要です。次の項目からはどのようなツールを選ぶと良いのか、それぞれの特徴を紹介します。
プロジェクト収支管理に最適なツールとは
ツールを使うことで、収支管理を効率化できるようになります。プロジェクト収支管理に使用するツールとしては、以下のようなものが代表的です。
- Excel
- プロジェクト管理ツール(システム)
- ERP(システム)
ツール選びに正解はなく、自社の規模や利用する目的に合わせて選ぶことが大切です。
プロジェクト収支管理はどちらのツールがおすすめ?
ここでは、Excelとシステム、それぞれの方法のメリット・デメリットをお伝えします。
Excelで行う方法のメリット・デメリット
Excelでプロジェクト収支管理を行う場合、自社で管理用のシートを作成するか、インターネット上に公開されているテンプレートをダウンロードして使用することになります。プロジェクトの予算・売上・原価など、収支管理に必要な情報をExcel上に集めて管理します。
メリット
Excelを使う場合、ソフトがインストールされたPCを使えば、無料でシートを作成・運用できます。カスタマイズ性が高く、自社に合わせた管理表を作成できる点もメリットです。業務でExcelを利用している企業であれば、多くの人が使い慣れているため、すぐに運用をスタートできます。
デメリット
インターネット上に公開されたテンプレートを使用できますが、請求書や見積書と異なり、テンプレートの種類が限られています。また、ひとつのシートだけで管理することが難しく、多くのシートまたはファイルを作成することになり、結果的に管理が煩雑になる場合もあります。
全ての情報を集約するためには、多くの人がそのファイルに情報を入力できなければなりません。しかしExcelでは、複数人での同時編集ができなかったり、誤ったデータの入力・削除のリスクがあります。逆に、一人だけで管理する場合は、個人の業務負荷が高くなってしまうでしょう。またその人が休職や退職したケースでは、Excelを編集できなくなるというリスクもあります。
そのほかExcelで収支の分析・報告を行う際には、別のシートを作成する必要があります。そのため、管理シートがどの時点の情報なのか、プロジェクトのステータスや予定売上日を常に把握しておかなければなりません。
システムで行う方法のメリット・デメリット
システム管理を行う場合は、プロジェクト収支管理に対応したシステムを導入して運用することになります。メリットとデメリットは以下の通りです。
メリット
集計用、分析用、報告用など複数のファイルが必要なく、システム内で一元管理できるため、管理工数の削減につながります。複数人での同時入力も可能なため、特定の部署や人のみに管理負荷が偏ることもありません。
日次や週次で勤怠締めを設定できるシステムであれば、労務費を含めたリアルタイムな収支のモニタリングが可能です。労務費を含めた支出が多く、予算額を超えているプロジェクト(赤字プロジェクト)が発生した場合には、アラートが出るように設定できるシステムもあります。そのような機能を使えば、問題のあるプロジェクトを早期発見できます。
デメリット
システムの場合は、導入費用や運用コストがかかってしまいます。費用も、規模や搭載する機能によって異なります。また、導入するまでにシステム設計や構築が必要となり、すぐには運用を開始できない点にも注意しましょう。 導入するシステムによってはカスタマイズ性が低い場合もあり、システムに合わせて自社の運用を変えることも考えなければなりません。社員が使い慣れるまでに時間がかかる可能性もあります。
Excelとシステムの比較まとめ
「プロジェクト収支管理をExcelで行うか」「システムで行うかの違い」をまとめると下記の表のようになります。
Excel管理 | システム管理 | |
---|---|---|
コスト | 導入費のみ。PCにインストールされている場合は無料 | 導入費・運用費がかかる |
導入期間 | 即時導入可 | 導入までの期間が必要 |
カスタマイズ性 | 高い | 低い場合もある |
リアルタイム性 | 低い | 高い |
保守性 | 低い | 高い |
統制 | 利かない | 利く |
複数人数での作業 | 同時入力不可 | 可能 |
管理の煩雑さ | 複数のファイル、シートに分けるため煩雑 | システムで一元的に管理可 |
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予算と実績の管理を正確かつ効率的に管理するなら、ERPの活用がおすすめです。ERPなら社内のデータを一元管理できるので、売上管理や原価管理といった収支管理に必要な機能がそろっています。
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さらにプロジェクト管理に特化したERPなら、進捗中のプロジェクトごとの収支管理もスムーズに行えます。例えば本ブログを運営する株式会社オロが提供する『ZAC』では、プロジェクトの当初予算と、収支予測の変更履歴、そして最終利益の情報すべてが保存されているため、個別案件の予実対比ができ、プロジェクトマネジメントの品質向上に役立てられます。プロジェクトベースの事業において、より効率的な収支管理ができるシステムです。
これからプロジェクト収支管理に取り組みたいと考えているなら、ERPを活用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
企業の収入と支出、特にプロジェクトにおける収支を把握する収支管理は、利益創出のために重要なことです。売上・予算・原価を正確な数値でタイムリーに把握できれば、赤字プロジェクトを早期発見できるだけでなく、利益向上や従業員の意識改革が実現でき、企業は大きなメリットを得られます。
収支管理を行う際は、ツール選びもポイントです。特に進捗を含めたプロジェクト収支管理を行うには、プロジェクト管理に特化したシステムを選定しなければなりません。プロジェクト管理に強みのあるERPであれば、プロジェクトを軸に販売・購買・勤怠・経費などの各種データをプロジェクト軸で集約し、プロジェクト収支の予実をモニタリングできます。
すでに収支管理を行なっていても、プロジェクトにかかる工数や外注費など複数の原価を正確に把握することが難しく、悩んでいる企業も多いはずです。原価の把握に課題を感じているなら、正しい原価を出すために「プロジェクト別原価計算ガイド」も参考にしてください。