生産性向上とは?業務効率化との違いや具体的な手順を解説
2022/1/07公開2024/3/08更新
今、日本で働くホワイトカラー人材の生産性の低さがさまざまなところで指摘されています。労働人口が減り続けIT業界では「2025年の崖」が心配されるなか、生産性向上の必要性を感じている人も多いはずです。
生産性を上げるためには、生産性向上と業務効率化の違いや、生産性を測る指標、具体的な手順を知っておく必要があります。本記事では、生産性向上の基礎知識から、実践に向けた手順まで詳しく解説します。
目次
生産性向上とは?
生産性向上とは、少ないインプットで多くのアウトプットを生み出せるよう、リソースを有効活用することです。生産性を計算式で表すと、以下のようになります。
- 生産性 = 生み出したアウトプット÷投入したインプット
生産性を向上させようと考えた場合、アウトプット量を増やすかインプット量を減らす必要があります。仮に生産する商品をアウトプットとすれば、少ない人数・少ない投資額で同じ数の商品を生産する、もしくは同じ人数・同じ投資額でより多くの商品を生産することが、生産性を上げる方法です。
ここからは、さらに詳しく生産性について解説していきます。「とりあえず生産性向上についてまとまった資料がほしい」「コスト削減の具体例が知りたい」という方は、こちらから生産性向上BOOKをダウンロードなさってください。
生産性向上と業務効率化の違い
生産性向上と業務効率化の違いは、アウトプット(成果)にあります。生産性向上は、少ないインプットで多くのアウトプットを生み出す、すなわちより効率的に成果を上げる取り組みです。 一方の業務効率化は、ツールやシステムを活用して作業時間を減らすことを指します。すなわち、インプットを減らすことに着目した考え方であり、成果に貢献しているかどうかは問いません。
そのため、業務効率化だけに取り組んでいても生産性が上がらない場合があります。業務効率化は生産性向上のためのひとつの手段であって、意味が異なるため注意が必要です。
生産性向上に取り組む目的
日本企業が生産性向上に取り組む目的は大きく2つあります。ひとつは、少子高齢化による労働人口の減少に対応するためです。今より少ない労働力で現状と同じもしくはそれ以上の成果を出すためには、生産性を上げなければなりません。
もうひとつの目的は、国際競争力を強化するためです。公益財団法人 日本生産性本部の「労働生産性の国際比較 2023」(*1)によると、日本の時間あたりGDPは、主要先進7か国(G7)で最下位となっており、世界で後れをとっている状況にあります。グローバル化が進む社会で生き残る企業であるためには、生産性向上が欠かせません。
生産性向上で企業が得られるメリット
ホワイトカラー人材が生産性を上げることによって、企業が得られるメリットは以下の3つです。
- 人材不足に対応できる
- 競争力の強化
- 労働環境の改善
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきます。
1.人材不足に対応できる
IT化やDXが進む今、働き手の中でも特にエンジニアの数が足りないと言われています。今後はさらに労働人口が減り、企業にとって採用が厳しい状況となるでしょう。その中で企業として成果を出し続けるため、少ない人数でも対応できる環境を作っておくことが重要です。生産性を向上できれば、今後人材が不足しても困ることなく成果を上げられるようになります。
2.競争力の強化
企業として利益を最大化するためには、コストを削減して売上を拡大する必要があります。そのためには生産性を向上が欠かせません。生産性が上がれば利益は増え、その利益をさらに投資に回すことで、企業としての競争力を強化できます。国際競争力だけでなく、国内の競合他社との競争にも有利です。
3.労働環境の改善
少ないインプットで成果が出せるようになれば、従業員の勤務時間は短くて済みます。つまり生産性を上げることで、長時間労働によって成り立っていた状況を改善し、従業員のワークライフバランスも向上させられるのです。労働環境が良好であれば、従業員のエンゲージメントも上がり、優秀な人材確保にも有利になるでしょう。
生産性分析で活用する4つの指標と計算式
生産性の定義は上述の通りですが、企業を経営するうえでは生産性をさらに細かく分析する必要があります。ここでは、生産性分析に利用される主な4つの指標を紹介します。
- 労働生産性
- 資本生産性
- 全要素生産性(TFP)
- 付加価値生産性
労働生産性
労働生産性とは、労働量に対して生産される成果を数値化したもののことです。労働量は、労働者数もしくは労働者数×労働時間、成果は生産量もしくは生産金額となります。この指標によって、従業員1人あたりのアウトプットや1時間あたりの成果量を可視化できます。 計算式は以下の通りです。
- 労働生産性=生産量(または生産額)÷従業員数(または従業員数×労働時間)
労働生産性については下記の関連記事で詳しく解説しています。
資本生産性
資本生産性は、事業のために使われた資本がどれだけのアウトプットを産出しているかを測る指標です。保有している設備や土地(=資本)がどれだけ効率的に価値を生み出しているか、資本1単位あたりの生産量もしくは生産額を算出できます。 資本生産性を上げるためには、設備の稼働率や使用頻度を上げることがポイントです。計算式は以下の通りになります。
- 資本生産性=生産量(または生産額)÷有形固定資産
全要素生産性(TFP)
全要素生産性(=Total Factor Productivity)とは、労働力や資本を含む全ての生産要素に対してどれほどの成果を得られているかを測る指標です。労働生産性や資本生産性では測れない、技術革新や経営戦略などによる質的な成長の度合いを分析するために用いられます。 計算式は以下の通りです。
- 全要素生産性の増減=生産量÷全生産要素投入量
付加価値生産性
付加価値生産性は、商品の付加価値を創出するためにどれだけの資本を投入したのかという割合を測る指標です。付加価値とは、売上高から原材料費や経費などを除いた、企業努力によって生み出された金額のことを指します。計算式は以下の通りです。
- 付加価値生産性=付加価値÷従業員数(または従業員数×労働時間)
業務の生産性向上を進める手順
いざ生産性向上に取り組もうとしても、どこから手をつけるべきか悩む人は多いのではないでしょうか。そこで、ここからは生産性向上を進めるために必要な手順をお伝えします。
今回は、人が行う業務を中心に生産性向上を進める手順をお伝えしますが、上述したどの生産性を求めるかによって計算式が変わる点には注意が必要です。
1.現在の業務内容・生産性の「見える化」
生産性向上を図るには、まず正確な生産性を算出しなければなりません。一般的に、人が行う業務の場合は労働生産性を指標とします。
そのためには現在の業務をすべて見える化し、業務フローや業務にかかっている人員の数、労働時間、パフォーマンスの質、それによって生み出された成果など、インプットとアウトプットを明確にすることが第一歩です。生産性向上策を考える際にも、業務内容が見える化されていると改善点が見つけやすくなります。
2.生産性が低い業務の洗い出し
現在の業務が見えるようになったら、次は生産性の低い業務がないかを洗い出します。もし、「慣習で続けてきただけ」というような成果に結びつかない業務があれば、廃止するかITツールで効率化するなどの策を練らなければなりません。
営業部門のように売上の立つ部門であれば、獲得した売上額を、一人ひとりの営業もしくは営業チームが売上を獲得するのにかかった労働時間で割ることで、ざっくりとした労働生産性が算出できます。 しかし、経理などのバックオフィス部門では売上ベースの労働生産性を算出するのが難しいので、「月次締め処理」「社内問合せ対応」などの業務ごとの労務費を洗い出すことで、生産性の改善の余地のある業務を洗い出すことができるでしょう。
すぐに対策が浮かばなくても、どの業務・セグメントの生産性が低いのかを知っておけば、のちのち生産性を上げられる糸口になります。
3.業務フローの見直し
生産性の低い業務が見つかったら、その業務を改善できるよう業務フローを見直すことが重要です。
- 決裁や承認の流れに無駄はないか
- 二重入力は起きていないか
- 抜け漏れによって無駄が生じていないか
といった観点で見直すと良いでしょう。
4.適切な人員配置
業務に対して適切なスキルを持った人員を配置すれば、より少ない工数で同じ成果もしくはより大きな成果を上げられる可能性があり、生産性向上が図れます。従業員一人ひとりのスキルアップによっても同様の効果が得られるため、社内教育やスキルアップの機会を設けることも大切です。
本人の現状のパフォーマンスやスキル、今後のビジョンを把握したうえで、適切な教育を行いましょう。業務に対して適切な人員配置ができれば、ワークライフバランスも向上し、さらに各個人のパフォーマンスが上がる可能性もあります。人員配置においては、従業員のポテンシャルや人材育成計画など、複数の要素を考慮することも大切です。
5.ITツール・システムの導入の検討
業務効率を上げるためには、ITツールやシステムの利用が有効です。既存の業務にITツールを取り入れたり、人力で行っている業務をシステムに置き換えたりすることで、生産性は一気に向上します。
たとえば、RPAを利用して作業を自動化すれば、少ない従業員数でも同じ成果をあげられます。特に定型業務はRPAを利用したほうがミスも少なく、短時間で終わらせることも可能です。
さらに、基幹業務を統合することで、ホワイトカラーから経営層まで全社単位での生産性向上も見込めます。これまでバラバラに管理されていた情報を一元的に管理できるERPは、生産性向上の強い味方です。ただしコストがかかるため、選定や導入は慎重に行いましょう。
まとめ
ホワイトカラーの生産性は数値化しづらく、どこに手をつければ改善できるか判断しづらいものです。しかし、労働人口の減少や国際競争力強化の観点から、ホワイトカラーの生産性向上はあらゆる企業において重要な課題と言えます。
生産性と一口に言っても、さまざまな視点による算出方法があるため、まずはその定義を知っておくことが大切です。そのうえで現状の業務を洗い出すことから手をつけていき、生産性向上を進めていきましょう。
生産性向上BOOKにヒントをまとめていますので、ぜひ生産性向上に取り組む際の参考にしてください。