中期経営計画とは?メリットや策定プロセスについて解説!
2022/2/09公開
中期経営計画は、今から3〜5年先まで企業が設定する将来計画のことです。中期経営計画を策定することで、会社の中期的な方向性を明確化し社内で共有できます。
本記事では、中期経営計画のメリットや策定プロセスについて詳しくご紹介します。
目次
中期経営計画とは?
中期経営計画は、企業が現状から3~5年先までに行うべき計画を示したものです。中計とも言われ、 現状と目標のギャップを明らかにし、そのギャップを埋めるための中期的な目標を示すことです。 目標には主に、売上やROEなどの定量的な指標が用いられます。 なお、長期経営計画は10年先を見据えた目標、短期経営計画は毎年の目標を設定します。
中期経営計画を策定するメリット
中期経営計画は法律によって策定を義務付けられているわけではありません。しかし、策定することで次のようなメリットが考えられます。 中期的な方向性を示す指針となる 企業が短期的な目標ばかりに目を向けていると、進むべき方向性を見失ってしまう恐れがあります。
中期経営計画を策定することで、この先数年間で何を達成すべきなのか理解しやすくなるでしょう。 また、中期経営計画を策定することで、毎年策定する短期経営計画の目標数値も定めやすくなります。
短期経営計画 | 中期経営計画 | 長期経営計画 | |
---|---|---|---|
策定のタイミング | 毎年 | 3~5年 | 5~10年 |
目的 | 1年で達成すべき目標の共有 | 3~5年以内に達成すべき大きな成果の共有 | 5~10年後を見据えた長期的な会社のビジョン。戦略などの共有 |
特徴 | 1年間で達成すべき目標を定める。中期経営計画で定めた目標との整合性が重要。具体的な行動目標や数値目標が中心 | 利益率の飛躍的な向上や事業の黒字化など、1年では達成できないが数年で達成すべき目標を定める | 長期的なスパンでの正確な数値予測は困難なため、会社のビジョンや理想の将来像などについて掲げることが多い |
例えば、中期経営計画で5年後の事業の売上を2倍にすると決めた場合、毎年の計画ではそのためにどのような短期目標を達成すべきなのか、毎年達成度を確かめられます。
現状と長期経営計画のズレを認識できる
中期経営計画では売上やROEなどの目標を設定します。そして、現状と長期経営計画で立てた目標のギャップを生み出す要因を分析することで、社内のあらゆる課題を改善することに役立ちます。 課題には単なる業務フローの見直しといったものから、従業員への教育、採用計画の見直しなど抜本的な見直しも含まれます。
同時に、目標とのギャップを埋めるためには、市場の状況や競合他社のシェアなどを改めて分析する必要があるため、外部環境の状況把握にも役立つでしょう。
社員と目標を共有できる
企業内部では、経営者や役員と従業員が必ずしも同じ目標を共有できているとは限りません。社内のエンゲージメントを高めるためには、目標やビジョンの共有が必要不可欠です。 中期経営計画では、企業が中期的に目指すべき目標やビジョンが明確化されます。
そのため、直接意思決定に参加できない従業員でも、企業が将来目指すべき姿をイメージできます。 例えば、中期経営計画に事業の海外進出を掲げることで社員が外国語の習得に励むといったことが考えられます。
中期経営計画の策定プロセス
中期経営計画は以下の流れで策定することが大切です。
1.経営理念を明確化する
中期経営計画を策定するには、まず企業の経営理念を明確化することが求められます。これまで曖昧にしていた企業でも、ここで改めて経営理念を表明することで、従業員に周知、浸透させられます。「パーパス」(自分の会社が何のために社会に存在するのか)を今一度定義づけするのもよいでしょう。
また、すでに経営理念が明確にされている企業でも、中期経営計画策定の機会に内容を見直しても良いかもしれません。
2.自社の現状を分析する
経営理念を明確化したら、次は自社の経営に関わる現状分析が必要です。 現状分析では、データなどを用いて定量化し、自社のボトルネックや伸ばすべき長所などを客観的に分析します。
分析対象となるデータは、決算書のデータや業務ごとの従業員数などの人的リソース、部門ごとの開発力や成長性など、多岐にわたります。 これらの詳細な現状分析から、長期的な目標達成に不足している要因を洗い出すことになります。
3.外部環境について把握する
中期経営計画の策定には、社内の現状だけでなく、外部環境の現状も同時に把握しておく必要があります。 外部環境を把握するフレームワークとしては、「PEST分析」が有効です。政治(Politics)、 経済(Economy) 、社会(Society) 、 技術(Technology)の4つ観点から分析を行います。
これらは自社ではコントロールできない要素なので、常に変化をチェックし、自社の戦略に活かすことが求められます。
例えば、競合他社の市場シェアを把握することで、自社の価格設定や商品の差別化、品質向上などに役立ちます。 また、市場の成長性や顧客の属性を把握することで、それぞれの分野にどの程度資金や労力の投資が必要かを理解しやすいでしょう。
- PEST分析の4つの観点
-
- 政治(Politics)法改正、政権交代、規制緩和など
- 経済(Economy)競合のシェア、業界動向、物価変動、為替変動、経済成長、景気など
- 社会(Society)消費行動、流行など
- 技術(Technology)イノベーション、インフラ整備など
4.数値目標を設定し、行動計画を立てる
経営理念の明確化、内部環境・外部環境の現状把握が終わったら、いよいよ中期経営計画の策定に移ります。 現状分析から得られたデータなどをもとに、今後3~5年でどの分野にどの程度資金や労力を費やすのかを明らかにしましょう。
策定の際には、他の企業が公開している中期経営計画の構成や項目なども参考にすると良いでしょう。 また、定量化が難しい目標は無理に数値目標にせず、定性的な目標として明記しましょう。例えば「会社のビジョンに適した人材育成」、「会社のブランド価値向上」などの目標が挙げられます。
5.進捗のモニタリングをする
中期経営計画は一度策定したら終わりではなく、小まめなモニタリングが必要不可欠です。目標と実績を比較し高頻度でギャップを検証することで、いち早く課題に気づき軌道修正を図ることが可能です。モニタリングを続けなければ、上述したメリットを得ることはできません。
進捗のモニタリングは、短期経営計画の策定時や業績評価のタイミングで行うことが考えられます。 例えば、中期経営計画を業績評価に紐づけ、計画達成に貢献している部門に高い評価を与えることも考えられます。 こうすることで、社内の計画達成へのモチベーションを向上させることができます。
また、月次ベースでPDCAサイクルを回すための会議を開くなど、部門を超えて全体で振り返りを行う場を設けると、意識的にモニタリングを継続できます。
中期経営計画を策定する際の注意点
中期経営計画は策定するだけでは意味がなく、実際に経営に有効活用しなければなりません。 計画策定後、社内に内容を浸透させ、計画倒れにならないように継続的な取り組みが必要です。
できるだけ定量的な目標を立てる
中期経営計画は現状と目標のギャップをその都度振り返り、改善する際に役立ちます。 そのため、目標はできるだけ定量的に定める必要があります。多くの企業では、中期経営計画の目標数値として売上高、営業利益、当期純利益、営業利益率、ROEなどを設定しています。
また、新しい市場で顧客を獲得することを目標とする場合は新規顧客の獲得数、海外進出を目標にしている場合は地域別の売上高などを設定することも可能です。
ただし、あらゆる目標を定量化すれば良いというわけでもありません。事業における環境負荷の低減やガバナンス体制の強化など、定性的であっても定めておくべき目標は存在します。 定量的な目標設定を基本としつつ、どうしても定量化が難しい目標は定性的な目標として設定するようにしましょう。
モニタリングの実施時期をあらかじめ決めておく
先述のとおり、中期経営計画は小まめなモニタリングが必要です。 実績のチェックは、記帳や月次の労働時間を確認することですぐに把握可能なものもあります。 必要なデータがどの部門で、どのタイミングで得られるか把握し、適切なタイミングで定期的にモニタリングできる会議やミーティングの機会を確保することが大切です。
計画とズレが生じた場合の対策を考えておく
中期経営計画は策定したものの、計画通りに進まないことが多々あります。しかし、挽回の見込みがある場合は、挽回施策をとってギャップを埋めることができます。
もしも挽回が難しいなら、中期経営計画自体を再度策定する必要があります。融資を受けるために金融機関に中期経営計画を提出している場合、各目標に修正があればその都度話し合わなければならないでしょう。 とはいえ、小さなギャップでその都度計画を修正する必要はありません。
計画のズレは早期に認識できるようにモニタリングを徹底するとともに、あらかじめ計画とのズレが生じた場合の対策を考えておくことが大切です。
まとめ
中期経営計画は社内の現状や課題を明確化し、3~5年先の達成すべき目標を社内で共有する重要な計画です。今回ご紹介した策定の流れや注意点を踏まえ、効果的な中期経営計画を策定しましょう。