工数削減とは。実施方法から成功のためのポイントまでを解説
2022/9/22公開
業務の効率化を目指すうえで、工数を削減することは無視できません。しかし、正しい知識がないまま工数削減を実施してしまうと、逆効果になってしまうことも少なくありません。
本記事では、工数削減に関する基礎知識と工数削減を効率的に行うための具体的な方法を紹介します。
目次
工数削減とは
工数削減の「工数」とはある作業を完了するまでにかかる時間と人数のことを指します。そして、工数削減とは、作業完了までにかけている時間や人数を見直し、削減することです。
たとえば、プロジェクト型ビジネスの場合は、工数が多くなるほど商品の原価率が上がってしまいます。工数(原価)を減らすことができれば、会社の利益向上に貢献できるでしょう。 しかし、現場のスタッフと話し合わずに工数を削減することだけを優先すると、現場の業務プロセスにズレが生じ、逆にコストがかかる可能性があります。作業を完了するまでのプロセスを細かく把握して、どこの工数を削減するかを見極めることが必要です。
また、工数削減には現在の工数管理の見直しも大切です。工数管理について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
工数削減の効果
工数削減では、得られる効果をしっかりと把握し、どこの工数を削減すれば業務を効率化できるか理解することが重要です。 工数削減で得られる効果の例として、
- コスト削減
- 生産性の向上
が挙げられます。
以上の2点について具体的に説明します。
コスト削減
工数を削減すれば、少ない人員かつ短時間で業務をまわせるので、人件費を削減できます。また、作業に使用していた電気代やスペースコストといった人件費以外のコストもカット可能です。
生産性の向上
生産性を向上させるには、インプットを減らすことやアウトプットを増やすこと、またはそのどちらも行うという手段があります。工数削減は、インプットをより少ない工数で行えるように改善するため、生産性向上が期待できるでしょう。また長い目で見たときに、生産性を上げることは会社の利益を上げることにも繋がっていきます。
工数を削減するための手法
工数削減にはさまざまな手法があり、どのような手法があるか把握しておくことが大切です。
以下に代表的な工数削減手法の流れを紹介します。社内のフェーズによっては、すでに取り組んでいるものもあるでしょう。自社の工数削減を進める際に参考にしてください。
- 業務プロセスを整理する
- ECRS(イクルス)の原則で工程を見直す
- 優先順位をつける
- 担当者と作業範囲を決定
- 新しいプロセスに沿って作業を実施する
- 削減効果の評価
これより、以上6つの手順を1つずつ詳しく解説していきます。
①業務プロセスを整理する
工数を削減するには業務プロセスを詳細に把握しておく必要があります。 業務プロセスの内容を整理し、現状の工数を測定しないと、どこの工数を削減すれば効果的かがわからなくなってしまうからです。
最初の段階でどこの作業を削減できそうか明確にすると、効率的に工数を削減できるでしょう。
②ECRS(イクルス)の原則で工程を見直す
ECRS(イクルス)の原則とは以下4つの頭文字を取った、業務効率化で使われるフレームワークです。 具体的には以下のような検討を行います。
Eliminate(排除) | 無駄な作業はないか |
Combine(統合または分離) | 似たような仕事は1つにまとめられないか。また、異なる属性の業務を分けられないか |
Rearrange(順序変更) | 作業の順番や場所を変えることで効率化できないか |
Simplify(簡素化) | 業務をさらに単純化できないか |
E→C→R→Sの順で進めていくことで効果があるといわれています。まずは「無駄な作業はないか」について確認しましょう。ちなみに、Combineは業務を統合するほかに仕事を分離するという意味も含まれ、Rearrangeは作業の順番を入れ替えるだけでなく代替案と入れ替えることも指します。
ECRSの原則を利用して、作業に無駄がないか、違う方法を取り入れたほうが効率的かなどを1つ1つ確認することが大事です。
③優先順位をつける
業務プロセスを整理し、それぞれの改善点が見つかったら優先順位をつけます。優先順位は緊急度と重要度をベースに考えましょう。
以下の順で作業に優先順位をつけることで、工数の削減を効率的に進められます。優先度を決め、その中で影響範囲の少ないところからプロセスを見直すことで、仮にプロセスの変更によるトラブルが生じたとしても影響を少なく抑えることが可能です。
1.重要度も緊急度も高い作業
2.重要度が高く、緊急度が低い作業
3.重要度は低く、緊急度が高い作業
4.重要度も緊急度も低い作業
④担当者と作業範囲を決定
優先順位を決めたら、各作業の担当者と作業範囲を決めましょう。作業範囲を限定しなければ、担当者が実施しなくてもいい範囲まで作業を行ってしまう可能性が出てきてしまいます。どの作業にどれくらいの人数を配置すればいいかがわかれば、人員や作業にかける時間を無駄に増やさなくて済みます。
さらに、特定の業務だけに集中できるため、担当者の練度も上がり、生産性の向上につながるでしょう。
⑤新しいプロセスに沿って作業を実施する
新しく決まったプロセスに沿って作業を実施してみましょう。実際にやってみることで新たな発見がある可能性があります。
従来の業務プロセスと新しい業務プロセスとを比較することで2つのプロセスの違いを具体的に把握でき、さらなる業務効率化につなげることができます。
⑥削減効果の評価
最後に、工数が削減されているか、そして実際に業務の効率化につながったか評価する必要があります。評価という指標がなければ、工数自体が削減されているのか、また工数を削減したことに効果があるのかがわからないからです。
また、新しいプロセスを担当した現場社員からの定性的な感覚、各工程を集計したマネージャーからの定量的な工数情報といったそれぞれのフィードバックがあれば、さらに効率的な業務プロセスを発見できるかもしれません。
工数削減で失敗しないための4つのポイント
工数を削減することで、短期的にはコスト削減に成功したが、長期的に見るとかえって工数が増え、生産性が落ちてしまうことがあります。
工数削減を成功させるために以下のポイントを押さえておきましょう。
- 社内の協力体制を整える
- 優先順位を加味しつつ、影響の少ない範囲から始める
- 新たな作業追加も検討する
- ツールを導入する
以上の4つのポイントを1つずつ解説していきます。
社内の協力体制を整える
失敗しないためには社内に工数削減することを認知してもらう必要があります。今までの業務のやり方が急に変わると、場合によっては社内が混乱してしまう恐れがあるからです。
前もってどのような変更をいつ行うか伝えることで、社内もスムーズに対応しやすくなり、無駄なトラブルを未然に防ぐことができます。
優先順位を加味しつつ、影響の少ない範囲から始める
まずは影響が少ない範囲から工数を削減することが大切です。いきなり多くの部署や人が関わるところところから実施してしまうと、ミスが生じたときに会社へのダメージが大きくなってしまいます。
影響の少ない範囲から始めれば、ミスが生じてもすぐに改善できるため、トライアルアンドエラーも繰り返し実行しやすくなります。
新たな作業追加も検討する
トライアルアンドエラーを繰り返すことで、新たな問題点が見つかるはずです。ときにはその問題を解消するために新しい作業を追加する必要も出てきます。しかし、場当たり的に追加するのではなく、一度その作業を追加することで本当に効果があるのか検討しましょう。
ツールを導入する
不要な作業を削減するだけではなく、ツールの使用も工数を削減するために有効な手段です。特に転記やシンプルな帳票作成といった定型業務は、RPAにより自動化することで大きな削減が期待できるでしょう。また、手順が決まっている作業ではツールを使用して作業を自動化するのが効果的です。たとえば、書類を電子化することで、社内で情報共有がしやすくなり、検索機能を用いることで書類を探す時間を削減できます。各作業の細かなデータを一括で管理できるツールなら、作業中に発生するミスも減らせるでしょう。
一方、ツールではなく手作業での対応が適した場合もあるため、ツールの導入は作業内容によって見極めることが重要です。たとえば、「会社にとって有益な情報を収集する」といった業務は、「有益な情報」の定義があいまいであるため、ツールでは判断が難しく、人による判断が必要です。また、Webサイトの検品作業などで人が介在していれば気付くことができたミスや改善点が、ツールに頼ってしまうことにより見逃されてしまうケースも考えられます。
【業種別】進んで工数削減したい工程
業種によってどこの工程を削減すれば効果的かが変わってきます。今回はシステム開発とクリエイティブ業において、どの工程を削減すれば効果的なのかを解説していきます。
システム開発ではテスト工数の削減がおすすめ
システム開発においてはテスト工数にかけるコストの割合が多く、テスト工数を削減できれば大幅なコストカットが可能です。
しかし、ただテスト工数を減らせばいいわけではなく、一定量のテスト工数は残しておく必要があります。テスト工数を必要以上に減らしてしまうと、テストで発見するべきバグを見つけられず、リリース後のバグ修正が頻発してしまうからです。
上記で紹介したECRSの原則に沿って、減らしても影響のない工程を見つけるのが良いでしょう。具体的には、「不必要なテストをしない」→「まとめてテストできるものは一緒に行う」→「テストする順番を工夫する」→「テストツールなどでテストを自動化する」といった流れでテスト工数を削減できます。
クリエイティブ業では間接業務の削減がおすすめ
広告やWeb制作などのクリエイティブ業はクライアントによって工数が変動する業務が多いため、一定の型に沿っての工数削減が難しいです。そのため、クリエイティブ業では型があるバックオフィス系の間接業務の工数を削減するのが効率的です。
間接業務はコスト削減に対しての成果がわかりにくいため、事前に何をどのくらい削減するべきかを明確にする必要があります。
システムを利用して工数削減に成功した事例
ここからはシステムを利用して工数削減に成功した企業を紹介していきます。
事例①INSIGHT LAB株式会社様
データマネージメント領域におけるコンサルティングから開発・導入・運用までを主要業務として提供しているINSIGHT LAB株式会社様。
案件別の工数管理がうまくいかず、原価計算のスピードと精度に問題がありました。
そこで、本ブログを運営する株式会社オロのERP「ZAC」を導入したことによって、複数の業務を一元化して管理できるように。ZACの締め処理機能で、期日までに必要な工数データが集まり正確な原価集計が可能になりました。現場の社員は「まとめての工数入力をする」ことがなくなり、正確なデータ入力の意識が高まったそうです。
また、業務管理を一元化したことで各案件の稼働状況を確認できるようになり、どこにリソースを割くか判断しやすくなりました。 ZACの導入により、案件別工数管理の厳密かつ素早い集計を実現しています。
事例②株式会社クリエイティブアローズ様
企画からクリエイティブ制作までワンストップで行う、オールメディアのクリエイティブエージェンシーである株式会社クリエイティブアローズ様。
Excelベースでの集計作業により、規模が拡大するごとに煩雑な処理も増えて工数、管理コストがともに増加していました。
案件毎の作業を一元管理できる「Reforma PSA」を導入したことによって、原価情報、仕入れ価格、経費など細かい数字の集計、管理の効率化に成功しています。 ほかにも、発注書金額と請求書金額も一元管理が可能になったため、月次決算で必須の締め処理もスピーディーに行えるように。集計作業の工数削減ができたうえ、精度の高いデータを活用した経営が可能になりました。
まとめ
業務を効率化するには工数を削減することが重要です。しかし、場当たり的に工数を減らしても効果が出なかったり、逆に無駄なコストが生じたりする可能性があります。 まずは、業務プロセスを細かいところまで把握できるように整理し、どの作業を減らすのかを慎重に検討することが大切です。
ツールを導入することでも工数を大幅に削減できるので、自社にあった工数削減方法を見つけてください。