テレワーク時の労務管理。3つの注意点と解決のポイント
2020/6/10公開2020/7/02更新
新型コロナウイルス感染拡大により外出自粛が求められたことで、多くの企業で導入されているテレワーク。業務効率の向上や会議時間の短縮など、その効果を実感した人も多いのではないでしょうか。
一方、上司や同僚の目が届かなくなったことで、テレワーク勤務者の労働時間を正確に算出・管理することが難しくなったり、どこでも働けるようになったことで、かえって長時間労働になってしまったり...。様々な課題も浮き彫りになったかと思います。そこで本記事ではテレワーク時に労務管理を適切に行うためのポイントや、有効なツールを紹介します。
目次
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テレワークの歴史
いまや当たり前のように使われるようになった「テレワーク」という言葉ですが、その意味を正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。日本にテレワークが導入され始めた当初からその普及を推進している「日本テレワーク協会」によると、その定義は「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方である」とされています。
そもそもテレワークという働き方が生まれたのは、1970年代のアメリカ。当時は自動車による大気汚染が大きな問題となっており、その打開策としてテレワークが注目されました。
その後、テレワークが日本にも広まったのは1990年代前半。バブルにより都心の地価が高騰したことで郊外に住む人たちが増え、通勤ストレスが社会的問題となったことがきっかけでした。
2000年代に入ると日本では労働人口の減少が懸念され、採用力強化や生産性向上の観点から再びテレワークが注目されるように。政府がテレワークを推進したことや国内のIT環境整備が進んだことも相まって、テレワークの普及が加速しました。
テレワークの分類
前述したように、テレワークとは「働く場所や時間にとらわれない働き方」。新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに多くの人が経験した「在宅勤務」のほか、「モバイルワーク」「サテライトオフィス勤務」と、大きく3種類に分けられています(※1)。それぞれについて、具体的に見ていきましょう。
在宅勤務
文字通り、自宅にいながら業務を行うことです。通勤する必要がないため、本来通勤に使う時間を有効に使うことができます。特に育児中の父親・母親は、子どもを預ける保育所と自分たちが働く場所(=自宅)を近い距離に置くことができます。そのため、育児と仕事の両立がしやすいワークスタイルになります。
モバイルワーク
勤務する場所を固定せず、ノートパソコンや携帯電話を持ち歩き、その時々で都合のよい場所で業務を行う働き方です。自宅やコワーキングスペースはもちろん、カフェや移動中の車内なども勤務場所となりうるため、自身の生活スタイルに合わせて効率的に時間を使うことができます。
サテライトオフィス勤務
自身が所属するオフィスではなく、それ以外に企業が開設している「サテライトオフィス」で働くワークスタイル。この働き方を導入する場合、都市を拠点とする企業は郊外や地方に、地方を拠点とする企業は都心部にサテライトオフィスを設置します。そのため、労働者は働く場所の選択肢が増え、自身や家族の生活圏により近い場所で勤務することが可能です。
サテライトオフィスは自社専用で設けることもありますが、数社共同のオフィスがあるパターンや、レンタルオフィスなどの施設を利用する場合もあります。いずれにしても、Wi-Fiや複合機などが整備され、自宅以上に整った環境で仕事をすることが可能です。
リモートワークとの違いについて
テレワークと同じくらい耳にすることが多い「リモートワーク」ですが、「遠隔(remote)で働く」という意味で、テレワークとほぼ同義と考えてよいでしょう。
言葉が世に出たタイミングとしては、テレワークの方が先といわれています。そのためか、テレワークを導入する中小企業に対して国が助成金を支給する制度にも「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」(※2)という名前がつけられています。
テレワークでの労務管理の注意点と解決のポイント
総務省の調査によると、テレワークを導入している企業は、導入していない企業にくらべて労働生産性[=(営業利益+⼈件費+減価償却費)÷従業者数]が約60%も高いことが明らかになっています(※3)。時間を柔軟に使えることが業務の効率化に繋がり、このような結果が出ているのでしょう。
しかしテレワーク時には従業員の"働いている姿"が見えないゆえ、管理者はオフィス勤務時以上にコミュニケーションの取り方に気をつけなくてはいけません。
また大前提として、テレワークでもオフィス勤務と同じく労働基準関連の法令が適用されます(※1)。勤怠管理や労災認定については判断が難しいことも多く、厚生労働省が推奨するガイドラインを参考にしながら、臨機応変に対応していかなくてはなりません。
それでは、テレワークにおいて管理者が特に注意すべき「コミュニケーション」「勤怠管理」「労災認定」についてチェックしていきましょう。
コミュニケーション
テレワークが普及したことで、ビジネスチャットツールのChatworkやSlack、Web会議ツールのZoomなどが急速に広がりました(※4)。コミュニケーションツールが広がり、オフィス外でも気軽にやり取りができるようになったからこそ、管理者はコミュニケーションを取るタイミングや物事の伝え方に注意を払わなくてはいけません。
たとえば、管理者がチャットツールで従業員に指示や投げかけをしたとき、従業員は違う作業で手が離せなかったり、返事の内容を考え込んだりするかもしれません。お互いがオフィスにいれば、その様子は一目でわかります。
しかしテレワーク時には「きちんと働いているのか」「こちらの指示が的確に伝わっているのか」と不安になる管理者も多いでしょう。そんなとき、必要以上に疑ったり干渉したりすると、従業員にストレスを与えることになってしまいます。がんじがらめに管理するのではなく、あくまで「柔軟に働いてもらう」意識を持つことが肝要です。
また、予定表や日報を活用し、こまめに報告・相談できる仕組みを整えておくのも一つの手段です。予定と実績に大きな乖離はないか?想定より多くの時間を使いすぎていないか?など、ツールを使いコミュニケーションを仕組み化しましょう。
勤怠管理
オフィス勤務時には、従業員がいつ始業・休憩・終業したのか一目で把握することができます。しかしテレワーク導入の際には、勤務状況の報告方法をあらかじめ取り決めておかなくては、適切に勤怠管理をすることができません。
テレワークには、労働時間を柔軟に使えるメリットがあります。そのため、たとえば従業員から「銀行や役所の用事を済ませるために休憩を1時間延長し、その分終業時刻を繰り下げたい」といった相談を受けることもあるかもしれません。
厚生労働省のガイドラインによると、このような所定労働時間の変更は可能とされています(ただしあらかじめ就業規則への記載が必要)(※1)。しかしテレワークでは、このようにイレギュラーな勤務状況が発生しやすく、その都度記録をしなくてはいけません。
またカフェや移動中に仕事をするモバイルワークや、勤務時間の一部だけテレワークする場合、就業場所間の移動時間が労働時間に該当するかについては状況により個別に判断されます。原則的に、テレワークが会社都合であった場合は労働時間として、自己都合であった場合は休憩時間として取り扱いましょう(※1)。
テレワークの勤怠管理では、臨機応変な判断を求められることが少なくありません。導入に成功している多くの企業では、始業・休憩・終業時間や作業状況の記録ができ、かつ給与システムとも連携可能な「勤怠管理ツール」を活用しているケースが多いようです。
Point2、勤怠管理はツールを活用し、イレギュラーにも臨機応変に対応!
労災認定の難しさ
たとえば在宅勤務中、パソコン業務の合間にトイレに行き、作業場所に戻ってイスに座ろうとした際に転倒してケガをした。この場合、労災と認定されるでしょうか。答えは「Yes」です。
テレワークには、オフィス勤務と同様に労働基準法が適用されるため、企業は労働災害に対する補償責任を負っています(※1)。しかし当然、その原因が業務とは関係のない私的行為にある場合は労災とは認められません。体調不良については、オフィス勤務の場合も判断が難しく、テレワークにおいてはますます複雑になってきます。
労災のリスクを少しでも減らすため、テレワークを導入する際には部屋の明るさや温度、作業中の姿勢などについて、労働衛生管理のためのガイドラインなどに基づきアドバイスを行うことが望ましいでしょう(※1)。
Point3、テレワーク時の労災を減らすため、健康面や作業環境についてもサポートを。
テレワーク時の労務管理をクラウドERPで解決
テレワーク導入に成功している企業の多くは、始業・休憩・終業時間の記録ができる「勤怠管理ツール」を活用しています。この勤怠管理機能を搭載し、かつ業務の進捗状況や従業員の給与管理、さらには仕入れや在庫、販売までも総合的に管理できるシステムがERP(Enterprise Resources Planning/基幹業務システム)です。
ERPでは、企業のヒト・モノ・カネの動きを一元的に把握することができます。総務や会計、人事、生産など部門別に管理するのではなく、企業全体の状態を"見える化"することで、業務効率や生産性の向上が期待されるのです。テレワーク時の労務管理においては、「ヒト」の動きが部門の垣根を超えて可視化されることで、いつ・誰が・どんな業務をしたのかを正確に把握できるというメリットがあります。
テレワーク時の労務管理に対応!ZACの3つの機能
昨今では、多くのベンダーから様々な特徴を持ったクラウドERPが提供されています。本ブログを運営する株式会社オロでは、プロジェクト型ビジネスに特化したクラウドERP『ZAC』(導入実績700社、17万ライセンス突破)を提供しています。
ソフトウェアやアプリの開発、広告業、デザイン制作といったプロジェクト型ビジネス。これらは案件単位、プロジェクト単位で業務が進行するため、複数のプロジェクトが並行することも多く、テレワークでなくとも労務管理が複雑になりがちです。
工数管理
ZACの工数管理機能では、プロジェクトや作業工程別の作業時間集計が可能です。毎日顔を合わせずとも、業務報告としてその日の進捗が報告されるので、管理者はチームの課題にいち早く気付くことができます。
工数管理について、詳しくはこちら
勤怠管理
勤怠管理機能では、出勤・退勤・休憩などの勤務時間管理のほか、36協定や個社ごとの就業規則に準拠した残業・休暇管理が行えます。前述の工数管理と連動し、自動で労務費をプロジェクト原価に反映。入力画面は予定表とも連動しており、入力の負担もありません。
勤怠管理についてはこちら
ZAC mobi
テレワーク実施時、スマホで業務処理ができるかどうかは重要なポイントです。ZACは外出先でもちょっとした業務を終わらせられるよう、一部機能がスマートフォンにも対応しています。
ZAC mobiについてはこちら
まとめ
多様な生活スタイルへの対応や生産性向上など、様々な効果が期待できるテレワーク。一方で、勤怠管理やコミュニケーションが難しくなるという課題もあります。本記事でご紹介したポイントを参考にしながら、ぜひテレワーク導入時における労務管理の課題解決を目指してください。
<参考記事>
※1...テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン | 厚生労働省
※2...働き方改革推進支援助成金(テレワークコース) | 厚生労働省
※3...平成 28 年通信利用動向調査の結果|総務省
※4...情報通信統計データベース|働き方改革×チャットツールのビジネス活用|総務省
Point1、予定表や業務報告ツールを使って、顔の見えないコミュニケーションを円滑に!