システム内製化はDXに必要?メリットやデメリット、実現への課題を解説
2024/7/05公開
近年DX化が推進される中で、これまで外部のSIer・ベンダーに委託していた社内システムの開発・運用を、自社で実施していく「社内システムの内製化」に注目が集まっています。
システム内製化によって得られるメリットは大きいものの、同時にデメリットもあり、すべての企業が内製化すべきなのか、また内製化が実現可能かどうかはよく考えなければなりません。
本記事では、システム内製化が注目される背景やそのメリット、注意点を解説します。すべてを内製化せず、パッケージシステムを導入したことで課題を解決できた事例も紹介するので、自社に合う進め方について検討してみてください。
目次
システムの内製化が注目されている背景とDX
システム内製化に注目が集まる背景には、DX需要の高まりがあります。近年、デジタル技術の進歩が著しく海外企業の国内進出も進む中、国内企業は競争力を高めるために、デジタル技術で仕事のプロセス自体を変革する動き(DX)が求められています。
自社のDXを進めるにあたって、システム開発や運用を自社で行うことで、時代の流れに即座に対応できる体制を作りたいと考える企業が増えています。その結果、システムの内製化に注目が集まっているのです。
これまでは、システムの開発から運用までをベンダーに一任することが一般的でした。経済産業省が作成したDXレポート2.1によると、従来のようなベンダー依存のITシステム導入においては、システムのユーザーとベンダーに相互依存関係が生まれていました。(*1)その問題点の1つとして、ユーザーがIT化をコストと考え、コスト削減に重きを置いた結果、ベンダー側が適切な提案や開発ができないことが挙げられています。これでは、互いに必要な能力を獲得できず、DX推進を阻む要因となってしまいます。今後はそのようなやり方を変革し、デジタル競争に強い企業を作っていくことが重要です。
本記事では特に、受発注管理や販売管理や会計といった、企業の経営に欠かせない業務を担う基幹システムを中心に、システム内製化について解説していきます。
システム内製化のメリット
基幹システムを内製化することで、企業は以下のようなメリットが得られます。
開発・対応の迅速化
システムを開発するスピードは、外注と内製で異なります。外注の場合、ベンダーに発注して作業に取り掛かってもらうまでリードタイムがかかるうえ、スケジュールもベンダーとの調整が必要なため、内製化と比較してスピード感が落ちてしまう傾向にあります。
しかし社内で開発すれば、発注や調整の工数が不要になり、社内の事情に合わせたスピーディな開発・対応が可能です。変化の激しい時代だからこそ、迅速にシステムを開発・変更できる点は大きなメリットだと言えます。
ブラックボックス化の防止
自社システムの構造や中身がわからなくなる、ブラックボックス化を防げる点もシステム内製化のメリットです。システム開発から運用、改修まですべてベンダーに任せている場合、システムでトラブルが起きても、どの部分でどのような不具合が起こっているのか即座に状況を把握できません。
そのため、緊急性の高いトラブルがあった際も開発元に対応を依頼しなければならず、手間や時間がかかっていました。ところがシステムを内製化すれば、ブラックボックス化が起こりにくく、いつでもシステムの状況を社内で把握できるようになります。
柔軟なシステム開発
システムを自社で構築・運用することで、細かな仕様変更や機能追加にも社内で柔軟に対応できます。
ベンダーに外注した場合、システムに追加したい仕様を理解してもらうために時間も手間もかかるでしょう。一方、社内であれば仕様変更の事情もわかるうえ、都度仕様を確認しながら開発を進められるなど、外注するより柔軟な対応が可能です。
ナレッジ・ノウハウの蓄積
システムに関するナレッジやノウハウは、システムを内製化する中で社内に蓄積されていくものです。DXが進み、データの活用やシステム開発の需要が高まるほど、社内に蓄積されたナレッジ・ノウハウが企業の競争力強化につながります。
また、社内で開発や運用を行うことは、IT人材の育成という観点でも重要です。外注では得られなかったようなナレッジやノウハウをもとに、次世代のIT人材育成の土壌を作れます。
システム内製化のデメリット
システム内製化に注目が集まっている一方、なかなか内製化に踏み切れない企業も多いのが実情です。その背景には、以下のようなデメリットがあります。
クオリティの担保が困難
システムを提供するベンダーはシステム開発の知見やノウハウを持ち、多くのシステム開発を行ってきた経験から、クオリティが高いシステムの開発から保守までを一括で依頼可能です。
一方、新たにシステム内製化を図ろうとしても、社内エンジニアはベンダーと比較して実績や専門性が少なく、クオリティやシステムの性能の担保が難しいケースもあります。また、品質を担保するための指標やテスト項目といった仕組みも構築する必要があるうえ、社内開発であることから基準も曖昧になりがちです。
IT人材の離職によるリスク
内製化する場合、開発や運用は社内のIT人材が担うこととなるため、社内で属人化が進むことにも気を付けなければなりません。蓄積したナレッジやノウハウを社内で共有できる仕組みがなければ、システムを内製化できたとしても、ブラックボックス化する恐れがあるのです。
もし担当者が離職した場合、システムの運用を継続できなかったり、仕組みがわからず仕様変更できなくなったりと、システムを利用するうえで大きなリスクを伴います。
内製化にかかるコストが把握しにくい
ベンダーに依頼する場合、見積書や発注書などからシステム開発に必要な費用は明確です。不具合改修や機能追加に必要な費用も、都度発注することで把握できます。しかし内製の場合は、社内でどれだけの工数がかかっているかを正確に把握しなければ、開発にかかるコストが算出できません。
外注の場合はコストが目に見えるため「高い」と感じることがあるかもしれませんが、内製で対応する工数を積み上げてみたら、実は外注よりコストがかかっている可能性もあるのです。
システム内製化のために必要なこと
これからシステムを内製化したいと考えている場合に、あらかじめ準備しておくべきことを紹介します。
必要なシステムの整理
まずはどのようなシステムを開発したいのか、必要な機能や規模、仕様を整理します。必要な機能を満たすだけでなく、使い勝手の良さや誤操作防止策など、ユーザーへの配慮も必要です。
勤怠管理や販売商品の集計システムといったシンプルな機能は、中小企業であっても比較的内製化しやすい傾向があります。一方、販売管理や会計管理など、基幹業務に関するシステムは複雑になるため、自社で内製するには一定以上の技術や経験が必要になる点に留意しましょう。必要なシステムが内製化でまかなえるものかどうか判断するためにも、まずは必要なシステムや機能を整理することが重要です。
人材の確保・社内育成
システム内製化に欠かせないのが、社内エンジニアなどのIT人材です。現在、IT人材が社内にいないもしくは足りない場合は、新たに採用して十分な人材を確保・育成する必要があります。すでにIT人材がいる場合でも、システム開発に必要なスキルや知識を身につけるための教育が必要となるケースもあるでしょう。
人材確保も育成も一朝一夕でできないため、実際にシステム開発をスタートするまでにかかる期間も考慮する必要があります。
人員不足がシステム内製化を阻む課題に
上述したように、IT人材の確保・育成はシステム内製化の必須事項です。まずはシステム開発や運用に必要な人員を社内で用意しなければなりません。
ただし、もともと少ない人員で事業を運営している中小企業やスタートアップ企業は、システム開発・運用のための人員を用意できず内製化に至らないケースもあります。
深刻化するIT人材不足
IT人材の不足は、日本における深刻な課題です。経済産業省が公表した参考資料によると、2030年時点でIT人材が最大79万人不足すると予想されています。(*2)
さらに2040年には労働人口が大きく減少することも予測されており、ますますIT人材の確保が難しくなる見込みです。これから新たにIT人材を確保するには相応の時間と費用がかかると考えておかなければなりません。 詳しくはこちらの記事もご覧ください。
内製化が難しければ、パッケージシステムの導入を
さまざまなメリットを持つシステム内製化ですが、現実的に内製化が難しい企業もあるでしょう。そのような企業であれば、パッケージシステムの導入がおすすめです。内製化のデメリットをカバーしつつ、かつ以下のメリットが得られます。
導入・運用コストを抑えられる
システムを社内で一から構築するオンプレミス型に比べ、パッケージシステムは導入コストも運用コストも抑えられます。オンプレミス型のシステムは自社のサーバー構築から仕様検討、設計などに工数がかかり、導入までのコストがかさみがちです。
一方のパッケージシステムはあらかじめ必要な機能が備わっているため、新たに開発する必要がなく、導入コストを抑えられます。さらに、内製化で必要な運用に関しても、パッケージシステムならベンダーに任せられるため、運用コストの削減が可能です。
社内にIT人材がいなくても運用できる
上述したように、IT人材の確保・育成は年々厳しくなっています。しかしパッケージシステムを利用すれば、導入・運用・トラブル対応をすべてベンダー側で対応してもらえるため、社内にIT人材がいなくても利用可能です。ただし、トラブル等も都度ベンダーが対応することになるため、事前にベンダー側の保守体制を確認しておきましょう。
スピーディな導入が可能
導入までの期間が短くて済むこともパッケージシステムの特徴です。システムを早急に利用したいと考えている場合、システムを自社で構築するより、すでに完成しているパッケージシステムを導入するといいでしょう。システムによっては、3か月程度の短期間で導入できるものもあります。
クラウド型なら柔軟な機能拡張にも対応
一般的にパッケージシステムは、カスタマイズしにくかったり、自由度が低かったりすると言われています。しかし、近年主流のクラウド型であれば、システムの機能拡張も柔軟に行えます。たとえば組織の拡大、企業の成長などで必要な機能が変化した場合も、追加開発を行う必要がなく、状況に合わせた機能の拡張や変更がしやすいのが特徴です。
【事例】内製化せず、パッケージシステムを導入した成功事例
企業の規模やIT人材の有無などによって、システム内製化よりパッケージシステムを活用したほうが適しているとお伝えしました。ここでは、本ブログを運営する株式会社オロによるクラウド型のパッケージERP『ZAC』を導入したことで、自社の課題解決につながった2社の事例を紹介します。
INSIGHT LAB株式会社様
企業内のビッグデータの分析・可視化・活用提案によって、クライアントのビジネス成長を支援するINSIGHT LAB株式会社様。同社では、月次決算を行ううえでの業務効率化を図るために、システムの導入を検討していました。
もともと部署や業務内容に応じた複数のツールを利用していたものの、月次決算の実現に結びついておらず、新たに業務管理システムを内製化しようという声もあったそうです。しかし社内エンジニアのリソース不足が懸念となっており、案件のかたわらでシステム作りも行うとなると、パッケージ製品の導入に比べて数倍の時間がかかることから内製化を断念しました。
その後、同社が求める「月次決算の実現」と「業務管理・原価管理の効率化」が叶うツールを探した結果、ZACに辿り着いたと言います。求める要件をすべて満たしていたことや、導入まで3ヶ月という早さが決め手で導入。運用も2〜3ヶ月で定着し、稼働から1年で半期決算、その翌月から月次決算を実現できました。
株式会社DKホールディングス様
展示会やイベントのディスプレイ制作を手掛ける株式会社DKホールディングス様。街の看板を制作する職人集団として創業した背景を持つ同社では、紙を使ったアナログな業務管理が残っていました。
しかし、企業の成長とともに組織が拡大し、顧客も増えてきたところで、アナログ業務が原因の問題が顕在化。経営に危機感を覚え、システムによる業務改革を図ったと言います。
いきなりシステムを導入して仕組みを変えては、社内の混乱を招く恐れがあると考え、まずは既存の帳票をベースにシステム化する方向でシステムの自社開発に着手したそうです。しかし、抜本的な問題解決には至らず、システムは複雑さを増すばかりで開発コストもかさむ一方でした。
そこでZAC導入を決断。同社の業種にフィットする点や、システムの完成度・費用対効果の面で導入メリットを感じたと言います。ZACによって、営業プロセスから経理、財務まで一気通貫に流れる仕組みが整備でき、ミスのない情報による経営判断が可能になりました。
まとめ
DXの必要性が高まる今、スピーディかつ柔軟にシステム開発・運用したいと考えてシステム内製化を考える企業が増えています。ナレッジやノウハウを自社に蓄積し、システムをブラックボックス化させないためにも内製化は有効です。しかし、企業によっては内製化することが難しかったり、有用な策ではなかったりする場合もあります。
自社に十分なスキルや経験を持ったIT人材がいない場合、内製は外注するよりも開発コストや期間がかさみかねません。またシステムのクオリティにも懸念が残ります。そこでおすすめなのが、パッケージシステムの導入です。自社にIT人材がいなくとも、高クオリティかつコストを抑えたシステム導入と運用を実現できます。
たとえばZACなら、導入時のカスタマイズが不要で自社に必要な機能だけ利用できるパラメータ設計を採用しているため、低コストかつスピーディに利用を開始できます。法改正に合わせたバージョンアップも提供しており、長く使える点もメリットです。
システム内製化を考えつつも、現実的に難しいと感じているなら、パッケージシステムの導入も視野に入れてみてはいかがでしょうか。