ERPパッケージとは?特徴やメリットを解説【ERP初心者必読】
2021/1/29公開2023/12/28更新
規模や業種に関わらず、様々な企業に導入されているERPパッケージ。「ERPってそもそもどんなもの?」「パッケージ以外のERPもあるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今回の記事ではERPパッケージに関する基礎知識について解説します。
目次
ERPパッケージとは
ERPパッケージとは、企業の財務・会計・人事・生産などの各種基幹システムを統合した「ERP」を、パッケージ化して販売しているソフトウェアのことです。発注元に合わせてオーダーメイドで開発するスクラッチ型のERPに対し、ERPパッケージは企業活動に必要な機能をあらかじめ備えているのが特徴です。
ERPとの違い
「ERP」は、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」といった企業の持つ資源を一か所に集めて管理し、有効活用するという考え方、または概念や手法を具現化したシステムを指します。
ERPを導入することで情報が一元化され、企業内の情報が相互に更新されます。その結果、常に整合性を保ちながら、最新の情報をリアルタイムで確認・管理できるのです。
ERPは、構築方法によって3種類に分けられます。その1つがERPパッケージなのです。
ここからは、さらに詳しくERPパッケージについて解説していきます。「とりあえずERPについて概要を理解したい」「ERPを図解でまとめて知りたい」という方は、こちらから「【図解】8ページでざっくりわかるERPとは」をダウンロードください。
ERPの種類
ERPは「どのように作るのか」によって種類が異なり、
- スクラッチ型
- パッケージ
- パッケージ+カスタマイズ
の3種類に分けられます。それぞれ見ていきましょう。
①スクラッチ型
スクラッチ型ERPとは、対象業務に合わせ、独自システムをゼロから構築するスクラッチ開発によって作られたERPです。自社業務に最適なシステムをオーダーメイドで構築できるため、独自性の高い業務にも柔軟に対応できます。
また、基本的に買い切り型となり、システム構築後は年間のライセンス料などはかかりません。そのため、機能拡張やシステム改修を行なったとしても、ランニングコストの面ではパッケージ型より安価になるケースが多く見られます。
一方、デメリットとしては開発が長期にわたり、初期費用が高額になることが挙げられます。規模によっては開発期間が数年、費用が数千万円になるケースもあります。システム化する業務を整理した上で、システムに必要な機能やセキュリティ等の要件定義を行う必要があるため、システムを開発するERPベンダーだけでなく、発注する企業側にもそれなりの工数がかかってしまうことは避けられません。
②パッケージ
ERPパッケージは、標準的な業務に合わせ、必要な機能がパッケージングされたシステムです。すでに形になっているものがあるため、スクラッチ開発に比べて初期費用を抑えることができます。また、短期間での導入が可能です。導入実績の多いベンダーでは、ERPの導入支援までパッケージになっていることも多く、利用者側の負担も少なくスムーズに利用を開始することができるでしょう。
一方で、自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズするわけではないので、求める機能がなかったり、自社の業務には不要な機能を含んでいたりする場合があります。また従業員が多い場合、ライセンス料などのランニングコストがかさむリスクもあるでしょう。
③パッケージ+カスタマイズ
スクラッチ型とパッケージの中間的な位置付けです。既成のパッケージを活かしつつカスタマイズをすることで、自社業務に合わせた機能追加や部分的なシステム改修が可能です。
カスタマイズを行うことで導入期間やコストは増加しますが、独自の商習慣にも対応できるようになる点は大きなメリットです。ただし、スクラッチ型ほど柔軟にユーザーの要求に応えることは難しいと言えるでしょう。
近年ではコストメリットや技術の発達、対応業務の拡大、業務の標準化などの理由から、パッケージやパッケージ+軽微なカスタマイズでERPを導入する企業が増えています。
メリット | デメリット | |
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スクラッチ型 |
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パッケージ |
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パッケージ+カスタマイズ |
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ERPについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
ERPパッケージの機能
ERPパッケージには具体的にどのような機能があるのでしょうか。製品によって保有する機能は様々ですが、基本的には、
- 人事・給与管理
- 販売管理
- 生産管理
- 購買管理
- 会計管理
- 営業管理
などの機能が搭載されていることが多くあります。
「基本的には」と述べたのは、ERPパッケージと一言で言っても、その種類は多岐にわたり、全ての機能が共通しているわけではないためです。
ERPは各製品によって業種や業態、企業規模など、特化している分野が異なります。財務会計のみ別のシステムと連携して業務を行う仕様の製品もあれば、人事・給与、会計、SCMなど基幹業務に関わる機能を包括しているものもあります。
たとえば、株式会社オロが提供するクラウドERP「ZAC」は前者のタイプのERPパッケージです。下記の機能一覧のようにプロジェクト管理に特化しており、財務会計や給与計算は外部システムと連携できます。
ERPパッケージ導入の5つのメリット
ERPパッケージ導入で「情報の一元管理」を実現することによって企業が享受できるメリットは、主に5つあります。
①業務の効率化・迅速化による生産性向上
ERPパッケージを導入することで非効率な業務を排除でき、業務の効率化・迅速化が可能です。
たとえば、それぞれの業務で独立した基幹システムを導入している場合、経営分析のために必要なデータを集めたくても、データ収集に時間がかかり、意思決定に活用できないといった問題が起こる可能性もあります。さらに、データの二重入力や部門間の不必要な確認作業などの非効率が発生するでしょう。ERPパッケージによって情報を一元管理することで、このようなムダを削減することができるのです。
②コスト削減
基幹システムが散在している場合、システムの数だけ保守運用の手間やコストがかかってしまいます。基幹システムがERPパッケージに一元化されることで、コストを削減することが可能です。ERPパッケージにはライセンス費用がかかるものの、スクラッチ開発と比較した場合に初期費用が抑えられます。
③経営意思決定の精度向上
情報を一元管理することで、リアルタイムな経営状況の見える化も可能になります。経営に必要な判断材料もスピーディーに確認できるため、正確な意思決定ができるようになるでしょう。データを収集・分析し、ビジュアル化するBIツール機能を含んだERPパッケージであれば、より多角的な経営分析を行えます。
④内部統制の強化
ERPパッケージには申請・承認等のワークフローが組み込まれていたり、アクセス権限の管理・付与機能をもっていたりと、自然に内部統制の強化が実現できます。またデータの整合性も取れるようになり、J-SOX法に対応した環境を整えることが可能です。
⑤業務の標準化
業務標準化とは、業務フローを整理・明確化し、誰もが同じ成果を出せるように整えることです。ERPパッケージには、業務に必要な機能が備わっていたり、効率的な業務フローとなるように設計されていたりと、業界のベストプラクティスを反映したシステムになっています。そのため、自社の業務をパッケージに合わせることで業務の標準化が可能になり、企業全体の生産性向上や属人化防止につながるのです。
業務標準化について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ERPパッケージの選定ポイント
ここからは、実際にERPパッケージを導入する際に、どのように製品を選んでいけばいいかを紹介します。
自社の規模・業界に合っているか
ERPパッケージを検討する際には、自社の規模や業界に適しているかどうか検討しましょう。世の中には様々なERP製品が存在しますが、特定の業界や分野に特化した「中位製品」と、多くの機能を網羅する「上位製品」の2つに大きく分けられます。SAP社やOracle社が提供するような上位製品のERPは、多くの機能を有する分、費用が高額である傾向があります。企業規模によっては、不要な機能が多くなってしまうことも考えられるでしょう。
また、規模に合っていても業界独自の商習慣にマッチしなければ、別途カスタマイズが必要になり追加でコストがかかってしまう恐れもあります。自社の業界に特化したパッケージであれば、業界で必要とされる標準機能が備わっていることが多いです。また、自社と同じ業界での導入実績があるかどうかも1つの指標とするといいでしょう。
ERPパッケージには、デモやトライアルが用意されているものも多いため、実際に操作して確認することも重要です。
他システム・ツールと連携可能か
ERPパッケージは企業の主な業務範囲はカバーしつつも、あらゆる業務を100%カバーするものではありません。そのため、導入する製品が、各部門の業務に必要なシステム・ツールと連携ができるかどうかも重要です。例えば、経理部門で使用する財務会計ソフトと連携ができたり、経営分析のためのBIツールと連携が可能だったりすることで、より一層の業務効率化を図ることが可能になります。
サポートが充実しているか
社内の基幹業務を担うERPは、エラーや障害で機能が停止してしまうと、業務自体が止まってしまう可能性があります。そのため、いかにシステムを早く復旧できるかが重要です。
特に、近年主流となりつつあるクラウド型ERPの場合、自社でサーバー保守や復旧などを行わなくて良い反面、ベンダー側に対応を一任することになります。ベンダーのサポート体制が万全か、サポート内容がどこまで含まれるか等を事前に確認しておきましょう。
また、機能追加や法改正に即したバージョンアップがあるかどうか、都度費用がかからないかも選定ポイントです。
まとめ
企業が直面している多くの課題に対し、ERPパッケージは業務改善やコスト削減など、幅広い解決策を提供することができます。そのため、ERPを導入する際は、現状の課題を整理した上で導入目的を設定することが大切です。
また、ERPパッケージはスクラッチ開発と比較して、初期費用や導入にかかる期間を抑えながら導入することができます。業種に特化したパッケージならば、自社に必要な機能が標準機能としてあらかじめ備わっています。パッケージ内容には、ベンダーの導入サポートが含まれていることも多いため、スムーズな利用開始にも期待できるでしょう。