ERPと外部システムの連携とは。メリットや連携方法、事例を紹介
2024/7/22公開
ERPは企業の持つ「ヒト・モノ・カネ・情報」を一元管理することで、経営情報をタイムリーに可視化し、企業全体の業務効率化を実現するシステムです。
近年、クラウドサービスの普及により、特定業務の効率化に特化したシステムやツールが生まれています。これらの周辺システムとERPをデータ連携し、さらなる業務効率化を目指す取り組みが注目を集めているのです。
本記事では、ERPと他のシステムをどのように連携すればいいのか、また連携することで得られる具体的なメリットについて解説します。実際にERPと外部システムを連携したことで業務効率化に成功した事例も紹介するため、これからERPと外部システムの連携を考えている方の参考になれば幸いです。
目次
ERPと外部システムの連携とは?
社内の経営資源を一元管理するためのツールであるERPは、ERP内部でデータを連携することはもちろん、外部システムと連携して相互にデータを共有・活用することで、より広範囲の業務効率化が可能です。
例えば、ERPに登録された売上データをBIツールで可視化したり、ERPで管理する従業員の基本情報を外部サービスのユーザー情報として利用するなど、ERPと外部サービスの連携は多様なシーンで活用されます。
ERPについてはこちらの記事もご覧ください。
ERPと連携できる具体的な外部システム
具体的にどのような外部システムがERPと連携されるのか、また、連携することで得られるメリットを紹介します。
ERPの中には、財務会計や給与計算機能などの一部機能をあらかじめ包括し、連携が必要ないものも存在します。
財務会計システム
日々の発注や支払い、売上など、ERPに集約した情報を、仕訳データに変換して財務会計システムへと連携することが可能です。これにより、日々の業務で入力したデータをもとに、帳簿作成や財務諸表作成を効率的に行えます。
給与計算システム
ERPに入力した出勤・退勤データや勤務時間、休暇取得日、休憩時間などの勤怠情報を給与計算システムと連携することで、従業員の給与を効率的に算出できます。
打刻システム
出勤・退勤の情報を打刻するシステムを、ERPに連携する例もあります。打刻システムから取り込んだ出退社の時刻データを、日々の勤務時間や時間外労働の時間の算出に活用したり、勤務時間と工数を照合したりすることが可能です。
オンラインバンキングシステム
仕入れ情報や外注費の支払い情報をERPから出力し、金融機関のオンラインバンキングシステムと連携することも可能です。出力されたデータをもとに振込ができるため、各種支払いの手間を簡略化できます。
また、オンラインバンキングの振込データを取り込むことで、入金消込処理の効率化ができるERPもあります。
CRM
CRMは、顧客の基本情報や購買履歴など、顧客との関係性を管理するシステムです。顧客情報と社内リソースを関連付けることで、部門間の連携を強化できます。
たとえば、アフターサービスや追加受注などが必要となった際は、顧客が購入した製品に関する情報と照らし合わせる必要があります。そこで、CRMの顧客情報とERPの製品在庫情報を連携させれば、当該顧客に必要な製品や部品、サービスを即時に確認できるのです。
また、営業中の顧客の「取引ステージ(確度)」「金額」「売上予定」などの情報も同時に把握できるため、精緻なフォーキャスト管理に役立ちます。
社内の工数を削減できるだけでなく、スピーディーな対応が可能になり、顧客満足度向上にもつながります。
BIツール
ERPとBIツールを連携することで、ERP内のデータを簡単に可視化・分析できるようになります。自社の経営状況や見たい粒度でのデータをグラフや図でわかりやすくビジュアル化できるので、自社の課題が発見しやすくなったり、報告資料を作成する手間を削減できたりといったメリットがあります。
日々ERPに入力されるタイムリーなデータを元に分析できるため、経営判断のスピードアップにもつながります。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
RPA
RPA(Robotic Process Automation)とは、定型作業をロボット(ソフトウェア)化するシステムのことです。ERPへの入力作業や処理作業など、業務上どうしても人間の手で行わなければならない部分が発生します。経営資源を一元管理するERPは、さまざまな機能を有しているため、利用する機能や頻度が多いほど作業も煩雑化するでしょう。
そこでERPとRPAを連携させれば、ERPに関連する定型作業を自動化できます。たとえば、ERP上の予実管理表のデータをERP外のデータと組み合わせて加工するといった作業を、手作業なら手間がかかりますが、RPAなら自動で行うことが可能です。
連携によって得られるメリット
ERPと外部システムを連携することによって、大きなメリットが得られます。具体的なメリットは、以下の通りです。
不足する機能を補完できる
ERPは経営資源を一元管理できるツールであるものの、万能ではありません。CRMやBIツールといった、機能や目的の異なるシステムと連携することで、自社で利用しているERPにある情報を活用しながら、足りない機能を補えます。
自動化による業務効率化
ERPや外部システムごとにマスタデータや数字等の情報を管理している場合、情報を入力する手間が二重三重にかかります。情報の変更があった際にも、各システム間で整合性を取るのは大変な作業です。たとえば、ERP上のデータを人が集計して財務会計システムに入力するとなると、人的ミスも発生しかねません。
しかしシステム同士を連携すれば、集計やデータ共有が自動で行えるため、入力の手間がかからず、集計・入力ミスを防止できます。その結果、業務を効率的に進められるようになります。
より高度な営業活動の実施
CRMやBIツールと連携することで、顧客情報や分析データと合わせた高度な営業活動が実現できることも大きなメリットです。具体的には、CRMで更新された購買データと社内の在庫データから、新たに手配しておくべき予備部品を生産したり、必要なアフターサービスの手配をしたりと、スピーディーな営業活動が実現できます。
また、顧客情報をBIツールで分析し、顧客の特性や行動履歴に合わせた提案など、高度な営業活動も可能となります。
タイムリーで多角的な情報が把握できる
ERPと外部システムを連携することで、ERPの基本機能だけでは把握しきれなかった情報も管理できるため、よりタイムリーかつ多角的な情報が把握できるようになります。その結果、顧客ニーズや市場の変化などに対応でき、経営判断に生かすことが可能です。
拠点間のデータも一元化できる
ERPは、外部システムとだけでなくERP同士で連携できます。本社だけでなく他拠点で管理しているデータもERP内で一元化できるのです。
たとえば、各拠点で管理している受注状況、購買状況などを一元管理することで、企業全体の経営状況が把握可能です。さらに、すべての拠点における業務プロセスの標準化や、同一指標による管理もできるようになります。
2つの連携方法
ERPと外部システムを連携させる方法は、主に以下の2つです。それぞれどのような方法なのか詳しく解説します。
API連携
API(Application Programming Interface)連携とは、異なるソフトウェアやアプリケーション同士の接点を作って、必要なタイミングでデータのやり取りを可能にする技術です。
身近な例として、特定のWebサービスのログインにGoogleなど他のWebサービスのアカウントを利用したり、ネットショッピングの支払いで別の企業の決済サービスを利用したりする事例があります。API連携機能であれば、新たな開発が不要で都度手作業も発生しないため、効率的かつリアルタイムなデータ共有が可能です。
ファイル連携
互換性のあるファイル形式でデータを出力し、それをERPから外部システムへ、または外部システムからERPへ取り込むことで連携できます。必要なデータの範囲を指定してCSV等のファイルに書き出し、それを外部のシステムにインポートして読み込ませるという方法です。
入出力やデータ加工の手間は生じるものの、多くのITツールでファイル連携が可能であり、データを一度にまとめて連携できるという特徴があります。
連携するうえで注意したいポイント
ERPと外部システムの連携は、さまざまなメリットを持つ一方、とにかく連携させればいいというわけではありません。連携を考えているなら、以下の点に注意しましょう。
連携が可能な範囲を確認する
システムによっては、他のシステムとの連携ができない場合や、ごく限られたシステムとしか連携できない場合があります。まずは、今使っているシステムが他のシステムと連携できるかどうか確認しましょう。
ERPを使っているなら、そのERPと連携可能な外部システムから選定しなければなりません。逆に、これからERPを導入する場合は、既存のシステムとの連携性を調べたうえで選ぶことが重要です。
スモールスタートで始める
最初からあらゆるシステムと連携させるのではなく、優先度の高いシステム連携から始めるのもポイントの1つです。連携先が増えれば増えるほど、コストやメンテナンス工数がかかり、管理しきれなくなる恐れがあります。
連携する目的や叶えたいことを明確にしたうえで、優先順位をつけて連携していきましょう。
管理体制を整備する
システムを連携する際は、運用のルールを決めておくことも大切です。現場単位や個人単位で勝手に連携してしまうと、どのシステムと連携しているのか現状把握できず、機能が重複したシステムを導入してしまったり、連携しているにもかかわらず使っていないシステムが発生したりする可能性があります。
そのような事態を防ぐため、管理体制を整え、管理者側でルールを決めて運用することが肝要です。連携しているシステムの一括管理や、連携に際しての申請・承認フローの整備などを行いましょう。
ERPと外部システムの連携で業務効率化に成功した事例2選
本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』も、他システムとの連携が可能です。ここでは、ZACと外部システムを連携させたことで業務効率化した事例を2件紹介します。
これからERP導入もしくはERPと外部システムの連携を考えているならぜひ参考にしてください。
株式会社北海道ジェイ・アール・システム開発様
JR北海道グループ各社のICT基盤を支える北海道ジェイ・アール・システム開発様。同社では、損益管理に必要なデータが複数のシステムやファイルで管理されていました。各情報の紐づけができず、原価も給与データ及び会計データを元に手作業で計算していたために、案件ごとの損益計算や原価計算に時間がかかっていたそうです。
現在は、作業工数や販管費・原価などの経費データはZAC以外のシステムで管理しているものの、データをZACにインポートすることで案件別原価計算を自動化でき、経理が行う原価計算工数をひと月70時間削減することに成功しました。また、ZAC上の案件番号をRPAで抽出し、他の勤怠システムや経費精算システム、財務会計システムなどに日次で反映させることで、案件ごとのタイムリーな情報を管理できるようになったといいます。
東京テアトル株式会社様
映画製作・配給・興行をはじめ、飲食、不動産などの事業を展開する東京テアトル株式会社様。その中の一部門であるソリューション事業部は、元々子会社でしたが、親会社に移管されるタイミングで部門システムとしてZACを導入しました。
旧システムは老朽化していたことと、グループで利用している共通会計システムと連携ができなかったことから、連携可能なシステムを探していたといいます。
ZAC導入以前は、仕訳データを会計システムへ手作業で入力していました。ZACは仕訳をCSV出力できるため、取り込み作業のみで会計システムにインポートできるようになったといいます。月末の締め作業がシンプルでわかりやすいものになり、3営業日程度で終わるようになったそうです。
まとめ
ERPと外部システムを連携させることで、業務の効率化やタイムリーな情報の把握、情報の一元化など、さまざまなメリットがあります。一元化されたデータを上手く活用することで、営業活動にもプラスに働くでしょう。
ただし、既存システムと連携できるかどうかや、管理体制の整備といったポイントを意識して連携を進める必要があります。たとえばZACは『勘定奉行』をはじめとする財務会計ソフトとの連携が可能で、BIツールやCRMであるHubspotとの連携オプション等も豊富です。
これからERPを導入する場合は、既存のシステムとの連携のしやすさも視野に入れて選定しましょう。