企業におけるコスト削減とは。手順やアイデア、成功事例を解説
2024/9/20公開
企業が利益を上げるためには、コストを削減することが重要です。しかし、いざコスト削減に取り組もうとしても、どのコストから手をつければいいのか、またどのような方法で削減できるのか迷うかもしれま
せん。
そこで本記事では、コスト削減のアイデアや取り組む際に押さえておきたいポイント、手順を紹介します。自社に合ったシステムを導入することでコスト削減に成功した事例も紹介するので、コスト削減の効果もあわせて参考にしてください。
目次
コスト削減とは
そもそもコストとは、企業活動を行う際に必要な費用全般を指します。そしてコスト削減とは、企業活動でかかる費用を減らし、売上に対して残る利益を増やすために行われる活動のことです。
企業の利益は、以下の式から算出できます。
- 利益=売上−コスト
つまり、同じ売上額であっても、コストを減らせば利益向上を実現できるということです。企業が利益を最大化するためには、無駄な支出を減らすコスト削減が重要であるため、多くの企業が苦心して取り組んでいるのです。
企業におけるコスト
企業活動で発生するコストの種類はさまざまです。例えば、人件費やオフィスの賃料、光熱費といった固定費や、製品・サービスの生産量で変わる材料費や外注費といった変動費があります。それぞれのコストについて、さらに詳しく見ていきましょう。
人件費
人件費とは、企業で働く従業員にかかわる費用全般を指します。具体的なコストは以下の通りです。
- 給与、各種手当
- 賞与
- 役員報酬
- 法定福利費
- 福利厚生費
- 退職金
オフィスコスト
オフィスコストとは、事務所や店舗、工場などの企業活動を行う場所でかかる費用のことです。具体的には以下のようなコストがオフィスコストに分類されます。
- オフィスの賃料
- 水道光熱費
- 備品代
- OA機器のリース代
ITコスト
ITコストとは、業務で利用する情報通信機器やシステムに関連する費用のことです。具体的には以下のようなものが該当します。
- パソコン、スマートフォンの端末代
- インターネット通信費
- 社内システム運用保守費用
- SaaS利用料
採用コスト
採用コストとは、人材を採用する際に必要な費用のことです。具体的には以下のようなものが挙げられ
ます。
- 採用にかかる人件費
- 採用媒体への掲載料
- 採用エージェントへの紹介料
- 採用プロモーション費用
経費
上記以外にも事業活動を行ううえではさまざまな費用が発生します。これらの費用は経費に分類され、具体的には以下のようなものがあります。
- 消耗品費
- 広告宣伝費
- 交際費
- 出張の宿泊費
- 交通費
コスト削減を実施するメリット
コスト削減を実施することで、企業は以下のようなメリットが得られます。
利益の拡大
上述したように、利益は売上からコストを差し引いた金額になるため、コストを削減できれば同じ売上額でも得られる利益を増やせます。売上を増やすことでも利益は拡大できますが、製品・サービス価格を上げたり売上数を増やしたりするのは簡単ではありません。しかし、コスト削減は自社内でコントロールできるうえ、効果も確実です。
労働生産性の向上
労働生産性とは、労働者1人あたりが成果を生み出すうえでの効率を数値化したものです。業務の無駄を省いて効率化することで、同じ業務を少ない労働時間で行うことができるようになるため、必然的に従業員の生産性が向上します。それによって、無駄な残業をなくせたり、従業員の長時間労働を防いで働きやすさを向上したりといった効果が見込めます。労働生産性を向上させることで、少ない人数で利益を上げられるようにもなるのです。
企業価値の向上
コスト削減によって増加した利益を、新たな事業や設備に投資したり、従業員に還元してモチベーションやエンゲージメントを向上させたりすることも可能です。その結果、長期的な企業価値向上や企業の成長が期待できます。
単純な利益向上だけでなく、幅広い観点で企業の価値を高められるのもコスト削減の大きなメリットです。
環境保護への貢献
企業コストのなかには、削減することで環境保護・サステナビリティにつながるものがあります。例えば、ペーパーレスで印刷代や用紙代を削減したり、リモートワークの推進で車通勤による排出ガスを削減したりといった環境に影響するコストの削減によって、環境保護に貢献できるのです。環境への配慮は、企業の持続可能性を高め、ESGにも影響を及ぼします。
コスト削減の具体的な手法・アイデア
ここからは、コスト削減の具体的な手法やアイデアを紹介します。コスト削減に取り組みたくても、どこから手をつけていいかわからない場合はぜひ参考にしてください。
固定費の見直し
毎月かかる固定費の削減は、コスト削減に大きな効果があります。オフィスの賃料や機器のリース代、水道光熱費などが固定費に該当し、いずれもすぐに減らすことは難しいように感じるかもしれません。しかし、これらのコストも働き方自体を変えて見直すことが可能です。
例えばコロナ禍をきっかけに、リモートワークに移行してオフィスを縮小し、それに伴って賃料や水道光熱費を削減する企業が増えました。また、リースしている機器や利用しているSaaSも、本当に必要なもの・プランなのかを見直すことで削減できる可能性があります。
ペーパーレス化
ペーパーレス化を推進し、これまで紙に印刷して運用していたものをシステム上で完結させるようにすれば、印刷代や用紙代を削減できます。コピー機やプリンターをリースしていた場合は、それらの固定費をなくせる可能性もあります。書類を保管していた場所も不要になるため、オフィススペースの削減や、書類管理工数の削減にもつながるのです。
アウトソーシングの活用
人手不足の部署や業務がある場合、今いる人材で無理に業務を回そうとすると、特定の従業員に負担が偏ったり残業代が増えたりしてしまいます。しかし新たに人員を採用すると、その分の人件費のみならず採用コストも必要です。
その際アウトソーシングを活用することで、結果的にコスト削減につながるケースがあります。アウトソーシングは採用コストをかけず、外部のプロに業務を任せられるサービスです。そのため、社内の人員に無理な負担をかけることもありません。繁忙期など必要なタイミングのみ依頼すれば、最低限のコストに抑えられます。
マニュアルによる業務の標準化
業務ごとにマニュアルを作成して標準化することで、業務効率を高められると同時に、教育や研修にかかる人件費を削減できます。新たな人材への教育も、マニュアルがあればスムーズに進められて工数を減らせます。「教える人によって内容が違う」「教え間違いによって業務にミスが生じる」といった事態も防止できるでしょう。担当者が不在の場合でも、マニュアルによって誰もが業務を実施できるようになれば、手待ち時間も削減できます。
また、マニュアルを作る際に業務フローを整理するため、これまでかかっていた不要な工程を見直すことも可能です。
ツールの活用・自動化
これまで手作業だった定型業務をツールに置き換えれば、業務効率化が叶うため、コスト削減につながります。近年は生成AIやRPAの発展も目覚ましく、精度が向上しています。ツールをうまく活用できれば、手作業による人的ミスの防止にもつながり、やり直しなどのロスも減らせるでしょう。
失敗しないコスト削減のポイント
コスト削減を進める際、失敗しないために注意すべき4つのポイントをそれぞれ詳しく解説します。
必要なコストまで削減しない
むやみにコストを削ることは、ときにはデメリットにもなりえます。企業のコスト削減においては、単純に削減することだけが目的ではないため、どのコストをどのくらい削減するのか見極めることが重要です。従業員のモチベーションを下げたり、製品・サービスのクオリティの低下につながったりするようなコスト削減は行わないよう注意しましょう。
また、変動費は売上と連動するものなので、削減する際は「本当に減らすべきか」と慎重に検討する必要があります。
コスト削減の目的やメリット・デメリットを社内で共有
コスト削減は、従来の業務のやり方を変える必要があるため、従業員の協力が必須です。ただし、従業員にとってはなかなか自身へのメリットを見出せなかったり、モチベーションにつながりにくかったりします。
そのため、どのような目的で行うのか、行うことでどのようなメリット・デメリットがあるかを共有しなければなりません。例えば、アウトソーシング活用は、わかりやすくコスト削減につながることが多いものの、アウトソーシング会社の事業撤退や情報漏洩といったリスク、社内にノウハウが残らないというデメリットもあるため、事前によく検討することが肝要です。
優先順位をつけて削減する
一気にコスト削減をしようとしてもうまくいかないケースがあるので、優先順位をつけて施策を打っていくことが重要です。削減しやすいものや、従業員にとってメリットが多いなど削減効果が大きいもの、といった観点から優先順位をつけましょう。
削減効果を可視化する
従業員がコスト削減のためにどれだけ頑張っても、実際に効果につながっているのかがわからなければ、効果の測定や改善ができません。削減効果がどれだけ出ているのか可視化して、従業員のモチベーションを維持することが重要です。
さらに、目標までのギャップを可視化することで、より効果的にコストを削減するための施策を考えることもできるようになるでしょう。
コスト削減の具体的な手順
ここからは、実際にコスト削減を進めるための手順を解説します。上述したポイントも踏まえて、失敗のないスムーズなコスト削減を進めてください。
①現状の社内コストを可視化・把握
まずは、社内でどれだけコストがかかっているか把握し、可視化することが重要です。現状が明確になれば、どのコストをどれだけ削減すべきか考えられるようになります。コストに含まれるものは漏れなく洗い出し、どこにどれだけコストをかけているか見える化しましょう。
②削減対象の選定
現状のコストを洗い出せたら、次はどの部分を削減するか選定していきます。企業のコストはさまざまあり、あれもこれも削減したくなるかもしれません。しかし、コスト削減の取り組みには従業員の協力が欠かせません。そのため、一気に多くの施策を行うのではなく、優先順位をつけてできる範囲から始めていくことも重要です。
施策実施には労力がかかるため、やみくもに削減しようとしても、うまくいかないケースが多々あります。また、削減可能なコストと削減してはいけないコストがあるため、見極めが重要です。
③目標の設定
削減すべきコストを選定したら、いつまでにどの程度削減するのか、目標を設定していきます。目標がなければコスト削減への意識も薄れてしまうため、具体的な数値をもとに目標設定するのがおすすめです。具体的には、以下のような目標を設定します。
- 〇年△月までに××部門で使う印刷用紙代をゼロにする
- 〇年△月までに経費精算のチェックにかかる時間を30%削減する
④削減方法の決定
目標が決まれば、その目標に向けてどのような手段で進めていくかを考えます。「コスト削減の具体的な手法・アイデア」の項で紹介した手法も参考に、自社の削減対象や業務内容に適した方法を選びましょう。
削減方法は、具体的に細かく決めたほうが実行に移しやすくなります。また、その方法が本当に対象コストの削減につながるのか事前にしっかり検討することも大切です。
⑤実施
続いては、決定した目標や方法に従ってコスト削減に取り組んでいくフェーズです。削減するコストの対象や目標によっては社内に広く影響する場合があります。そのため、直接実施する部署や従業員だけでなく、関係部署にも目的・目標を説明し、コスト削減に協力してもらうことが重要です。
⑥実施後の定期的な振り返り
コスト削減策を実施したら、定期的に振り返りを行うことも大切です。現状を確認できるだけでなく、結果が見えることで従業員のモチベーションにもつながります。どのくらい削減できたのか、目標に対する進捗はどのくらいなのかを定期的に振り返りましょう。
もし進捗が悪ければ、何が要因だったのか、挽回するために何をすべきかを都度検討することになります。
コスト削減に成功した事例
業務課題次第では、自社に合うシステムを導入するのも、長期的なコスト削減の一手です。そこで、本ブログを運営する株式会社オロのクラウドERP「ZAC」の導入・活用によってコスト削減に成功した企業の事例を3件紹介します。
主にプロジェクト型ビジネスの業種を紹介するため、近い業種の事例を参考にして自社に取り入れてみてください。
イメージ情報システム株式会社様
クライアントの課題解決に向け、ソリューション提案から運用・保守まで一貫したサービスを手掛けるイメージ情報システム株式会社様。既存システムの老朽化を機に、社内に分散していたシステムによる負荷増大を解消するためにZACを導入しました。
ZACの導入によってシステム統合に成功しただけでなく、管理会計業務の効率化を実現したこともポイントです。特に、これまで大まかな数字を確定させるために10営業日が必要だった月次決算は、残業時間を75%削減でき、5~6営業日ほどでより精緻な数字を出せるようになったそうです。
さらに、社外からもシステムを利用できるため、客先常駐の従業員は出社せずともデータを入力できるようになりました。月次決算業務の効率化と出社する必要がなくなったことで、年間約500万円分のコスト削減を実現したといいます。
共同ピーアール株式会社様
国内最大規模の総合PR会社として、企業・団体の広報やPR活動をサポートする共同ピーアール株式会社様。かつては紙ベースでの業務フローが定着しており、経理部門は、営業から年間約15,000枚の帳票を受け取ってシステムに転記しなければならない状態でした。
稟議なども紙帳票を使用していたため、申請・承認業務のために出社しなければならず、リモートワークができる体制も整っていなかったといいます。そのような状態から脱却すべく、ZACを導入しました。
導入後、転記など紙帳票で行っていたことがシステムに置き変わり、経理部門全員の作業工数を1日1〜2時間削減することに成功しました。紙・ハンコ文化からも脱却し、リモートワークを実現できた事例です。
株式会社早稲田大学アカデミックソリューション様
大学や大学職員に向けて学校運営に必要なソリューションを提供し、新たな価値創出の支援を行っている株式会社早稲田大学アカデミックソリューション様。長時間勤務や有給休暇未消化などの課題から、働き方改革を推進すべく、従来基幹システムとして利用していたZACに「勤怠実績の週次締め」(週次で勤怠・工数を締める機能)と「勤怠アラート」(残業時間等に対して、事前に設定した閾値や上限値を超えた場合にアラートを表示させる機能)を追加したといいます。
その結果、勤怠実績を週次で確認できるようになり、働きすぎた従業員は次週以降で勤務時間を調整することが可能になりました。一定条件下で本人と上長に勤怠アラートが表示されることから、本人が働きすぎの意識を持てるようになり、上長とのコミュニケーションも浸透しています。
さらに、プロジェクトの原価も、週次の勤怠実績をもとに労務費として反映させられるようになったため、タイムリーな原価の把握と必要なアクションの早期化が実現できたとのことです。
目的・自社に適したツールを活用し、効率的にコストを削減
上述の事例のように、業務課題解決と長い目で見たときのコスト削減を効率的に進めるには、自社の目的や業種に合ったツールを活用することが有効です。適切なツールを利用すれば、業務効率化だけでなく無駄なコストの発見にもつながります。
クラウド型ERP「ZAC」なら、プロジェクトごとや部署ごとといったセグメントごとに、売上とコストを把握できるため、より精緻なコスト管理が可能です。また、プロジェクトや業務ごとに把握しづらい労務費もプロジェクトに紐づけられるので、コストの大半を労務費が占めるプロジェクト型ビジネスを行う企業にも適しています。
まとめ
企業活動を行ううえでコストの発生は必然です。しかし、不要なコストが多ければ利益を逼迫するため、無駄を減らして適正化する必要があります。企業のコストには、人件費やオフィスコスト、ITコスト、経費などさまざまありますが、多くはバックオフィス部門にかかわるものです。
本記事で紹介したコスト削減のアイデアやポイント、手順を参考に、自社に必要なコスト削減を進めてみてください。その際はツールの活用も視野に入れることをおすすめします。
コスト削減は目標設定が肝要であるものの、間接部門では数値目標の設定に悩むことも多いはずです。もし目標設定がうまくいかないようであれば、下記よりダウンロードできる「今すぐ使えるバックオフィスのKPI38選」も参考にしてみてください。
詳しくはコスト削減とはをご覧ください。
①現状の社内コストを可視化・把握
②削減対象の選定
③目標の設定
④削減方法の決定
⑤実施
⑥実施後の定期的な振り返り
詳しくはコスト削減の具体的な手順をご覧ください。