販売管理システムもクラウド化の傾向。中小企業はどう選ぶ?
2022/10/07公開2023/1/18更新
販売管理のシステム化は、業務効率を上げて人件費を削減できるだけでなく、スピーディーな経営判断にもつながる施策です。その販売管理システムは現在、クラウド化の傾向にあります。
クラウド型の販売管理システムを使うメリット・デメリットは何でしょうか。また中小企業の場合はどのような軸で販売管理システムを選ぶべきなのでしょうか。本記事では、販売管理システムの基本的な情報から、中小企業がシステムを選ぶ際に気をつけるべきポイントまで詳しく解説します。
目次
販売管理システムとは
販売管理システムとは、企業活動におけるお金とモノの流れを管理する「販売管理」を効率化するためのシステムです。「何を・誰に・いつ・どこで・いくつ・いくらで」販売したのか、また請求や代金回収は済んでいるのかなどを管理できます。販売管理については、こちらの記事をご覧ください。
販売管理システムの主な機能は、商品とお金にまつわる以下の3つです。
- 販売管理
- 在庫管理
- 購買管理
これらの管理業務をシステムによって一元化すれば、これまで発生していたツールへの重複入力や手計算をなくし、業務効率を向上させるとともに人的ミスを減らせます。その結果、人件費の削減にもつながるでしょう。さらに、リアルタイムにデータをアウトプットでき、現時点で入力された情報に基づいて必要な軸でグラフ化し、経営を支援する機能もあります。システム化は、経営陣の意思決定スピードを上げる効果をもたらすのです。
販売管理システムには、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類があります。それぞれどのようなシステムなのか、以下で具体的に解説します。
クラウド型
クラウド型は、インターネット上に構築され、インターネット経由で利用可能なものを指します。インターネット環境さえあればどこからでもアクセスでき、利用デバイスも問わないことが特徴です。そのためリモートワークにも向いています。
自社で一からシステムを構築する必要がなく、メンテナンスもサービス提供側が行うため、コストが比較的安価で済むというメリットがあります。一般的には、サービスのベンダーに対して定期的な利用料が発生する仕組みです。導入のハードルも低く、スピーディーに利用開始できる場合が多いでしょう。
また、自社の業務によりフィットした機能を追加するカスタマイズを行うことも可能です。ただ、その範囲はベンダー側が用意した選択肢に限られることもあるため、注意が必要です。
オンプレミス型
オンプレミス型は、社内にサーバーを設置して、自社の業務形態に合わせて構築されたものを指します。一度導入すれば、その後はメンテナンス費用のみで運用可能となります。
業態に即したシステムが構築できるため、従業員が使いやすく、自社内で自由にカスタマイズもできる点がメリットです。社内にサーバーがあるため、クラウド型より高度なセキュリティを担保できるでしょう。
一方、導入コストがかかったり導入期間が長くなったりと、導入自体が大掛かりなものになりがちです。また、サーバーやシステムのメンテナンス、保守・障害時の対応、ハードウェアの管理も自社で行わなければならず、常時エンジニアが必要となります。
クラウド型販売管理システムのメリット
クラウド型販売管理システムは近年、導入する企業も提供するベンダーも増加傾向にあります。クラウド型のシステムにおけるメリットを見ていきましょう。
導入・運用費を抑えられる
クラウド型販売管理システムは、多くの場合、インターネット経由で導入が完了します。自社内にサーバーを設置する必要もないため、導入費用を安価に抑えられる点がメリットです。
また、メンテナンスもベンダー側で行われるため、システムに不備があっても利用者の手間や費用がかかりません。カスタマーサポートが充実しているサービスもあり、社内に管理者やサポート担当者を置かなくて済むため、人件費も抑えられます。
サーバー運用の手間がかからない
オンプレミス型であれば必要となるサーバーも、クラウド型では不要であるため、運用の手間を抑えられます。もしサーバートラブルが起こっても、復旧はベンダー側に任せられるので、自社で人員を割く必要がありません。
また多くの場合、BCP対策が施されているため、災害時やサーバ故障時でもデータ消失の危険性が低いという安心感もあります。
随時バージョンアップが提供される
クラウド型は、常にベンダー側でメンテナンスされているため、バージョンアップが随時提供される点もメリットです。不具合の改修だけでなく、より使いやすいように機能改善されたバージョンのシステムを利用できます。
法改正があった際も、都度自社でシステムに変更を加える必要がありません。もし利用中に不具合が出ても、自社の人員の手間をかけなくて済みます。
外部からの利用が可能
システムがクラウド上にあるため、インターネット環境さえあればどこからでも利用できます。営業先や自宅、出向先でもシステムにログイン可能なため、テレワークなど柔軟な働き方に対応していると言えます。
利用できるデバイスも、スマホやタブレットなど自由度が高い点が特徴です。
クラウド型販売管理システムの注意点
さまざまなメリットがあるクラウド型販売管理システムですが、導入・運用するにあたってあらかじめ留意すべき点もいくつかあります。
まず気をつけるべきなのは、オンプレミス型に比べてシステムのカスタマイズ性が落ちる点です。クラウド型はパッケージタイプであることが多く、基本的にはカスタマイズしないことを前提に作られています。カスタマイズできるとしても、ベンダー側が用意した選択肢の中から選ぶのみとなるため、全てを自社が希望した仕様に変更することが難しい場合もあります。
次に、サーバーが社外にあることで情報漏洩リスクがあることにも留意しなければなりません。クラウド型も、基本的には高いセキュリティ環境でシステム内の情報を守っています。しかしオンプレミス型に比べ、経営情報や個人情報など、機密情報の情報漏洩リスクは避けられません。
また、ベンダーへの依存にも注意したいところです。トラブルや不具合が起こった際はベンダーに頼りきりになってしまうため、ベンダーの対応スピードが日常業務や経営判断のスピードに関わる恐れもあります。
これらの留意点を意識し、社内で十分なリスク対策を検討したうえで導入することをおすすめします。
中小企業のためのクラウド型システム選定ポイント
販売管理にまつわる業務を効率的に行えるクラウド型システムは、導入する前に「どのようなシステムを選ぶか」をしっかり考えておきましょう。クラウド型、オンプレミス型と大別するだけでなく、そこからシステムのベンダーも選定しなければなりません。 ここでは、中小企業がクラウド型の販売管理システムを選ぶ際に押さえておくべきポイントをご紹介します。システム選定時の参考にしてください。
①あらかじめ必要な機能を整理しておく
システムは非常に便利なものですが、不要な機能が多いとコストが割高になります。機能が多すぎることで、利用する際も操作が煩雑になってしまうかもしれません。そのため、あらかじめ自社に必要な機能を精査しておくことが大切です。
商品や販売状況に関するさまざまなデータの管理や、見積書・請求書などの帳票発行作業といった、現時点で属人化している業務を洗い出し、それらをシステムに落とし込めるかをチェックしておけば、システムを有効活用できます。
②業種特化型パッケージに着目
幅広い業種に対応するよう作られた汎用型システムは、豊富な機能を備えているためにコストが高い傾向にあります。一方、特定の業種に特化したパッケージ型システムであれば、機能も限定的である分、コストを抑えられる可能性が高いでしょう。
業種ごとに必要な機能が備わっているため、カスタマイズが不要な点もメリットです。たとえば食品を扱う企業であれば、賞味期限や時期による価格変動に対応した設定ができる機能、IT企業であればプロジェクトごとの管理ができる機能などがあります。同業の事例があり、運用上で参考になるような他社の活用事例を聞きやすいなどのメリットも考えられます。
まずは自社の業種に特化したパッケージ型のシステムがないか調べ、そのシステムで必要な機能をまかなえるようであれば候補にしてはいかがでしょうか。
③活用イメージができるかどうか
システム導入後、新しい業務フローに沿って従業員がスムーズに使えるかどうかがシステム活用の鍵となります。「経理担当者のテレワークを推進させたい」「Excelベースの販売管理から脱却したい」など、クラウド型販売管理システムならではの導入目的を意識的に持つことが大事です。
活用のイメージができない、もしくはいずれかの工程で長期的に負荷の高い作業が発生するようであれば、実際に導入してもうまく活用できずに廃れてしまう可能性があります。あらかじめシステムを導入する現場の業務フローを洗い出し、システムの具体的な使い方と突き合わせて検討することがポイントです。
④サポート体制を確認
人的コストを抑えるためには、導入後のサポート体制やトラブル対策についても検討する必要があります。クラウド型システムのメンテナンスはベンダー側でしか対応できないため、トラブルが起こった際のサポート体制についても事前に確認しましょう。サポートの範囲や種類とあわせて、料金についても確認しておきたいところです。
ベンダーやシステムの種類によっては、サポートがオプション対応となっている場合もあります。もしオプションとして契約していなければ、いざトラブルが起きたときに即座に対応できないため注意が必要です。
⑤セキュリティ対策を確認
クラウド型システムはどうしても外部のサーバーに依存してしまうため、セキュリティ面をしっかりと確認することが必要です。リスクがゼロになることはありませんが、どのようなセキュリティ対策を実施しているシステムなのかを確認しておくことは重要です。
導入後にトラブルとなって人的コストを割くことがないよう、どこまでのリスクを受け入れられるか、また社内でできるセキュリティ対応方法はあるかなど、システム導入前に社内で調整しておきましょう。
まとめ
企業活動におけるお金とモノの流れを管理する「販売管理」は、近年、クラウド型システムで効率化する流れにあります。自社でサーバーを保有・管理するオンプレミス型と異なり、手軽に導入できてコストも抑えられるクラウド型は、これからシステム化を目指す中小企業におすすめと言えるでしょう。
しかしカスタマイズ性の低さや、オンプレミス型に比べて情報漏洩リスクが高いことなどをどこまで許容できるか、あらかじめ社内で検討しておく必要があります。システムに求める機能を明確にしたうえで、業種特化型のパッケージシステムが利用できそうであれば、導入を検討してみるのもいいでしょう。
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