システムを味方につける! 情シスのためのERPパッケージ導入事例
2022/7/15公開
社内のIT担当として、システムの運用や保守など、多岐にわたる業務を行う情報システム部門。情シスと呼ばれ、社内システムの選定や導入も業務の一つです。
毎日のように使用されるシステムは、日々の業務を効率よく行えるかどうかに大きく関わるため、多くの情シスはシステムについて常に情報収集を行っているでしょう。
本記事では、システム導入・活用に悩める情シスに向けて、自社に適したシステムを導入し、企業の成長につなげた成功事例を紹介します。
目次
システム選定が企業の成長に影響
現代社会では、多くの企業で毎日何かしらのシステムを利用しており、システムなくしては業務が回らないと言ってもいいほどです。そのような中で、自社の業務に合ったシステムを選定、利用することは、ムダな業務の削減につながり、社内の情報共有が進むなど様々なメリットが得られます。
特に、企業の経営に欠かせない基幹業務を同一システムで管理すれば、業務の進行状況が可視化されます。各部門の情報がシステム上で管理できるため、二重管理などの手間がなくなり、独立したシステム間での転記作業も削減可能です。
基幹業務について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
業務のムダがなくなった結果、各部門の生産性が上がり、企業の成長が見込まれます。しかし、システムを導入してから長い年月が経っている場合、老朽化による問題や、実際の業務とシステムの設計が乖離してしまうといった問題が多発しています。つまり、社内システムが企業の成長や停滞の一因になっている場合があるのです。
そのような状況の中、社内インフラや社内SE、コーポレートエンジニアといった、企業の情シス部門は、いかに自社にマッチするシステム選定をするか頭を悩ませています。これからのシステムは、自らの敵になりうるものではなく、味方になるものを選ぶ必要があるでしょう。
システム老朽化の弊害
システムの老朽化によって、様々な問題が引き起こされる危険性があります。最悪の場合、企業の存続を脅かす程の大問題に発展することも。以下に代表的な問題をピックアップしました。
管理コストが増加
過去に導入したシステムが複雑化・肥大化することで、運用が煩雑になり、管理コストが通常以上にかかってしまう状態です。自社サーバーにて構築したシステムを、ことあるごとに変更・拡張してきた結果、継ぎはぎだらけのシステムが出来上がってしまったというケースは多くの企業で見られます。構築した担当者が退職してしまった場合、システムの全貌がわかる者がおらず、新たな変更要請時やトラブル発生時に時間的なコストもかかってしまいます。
また、OSなどのアップデートや外部システムとの連携に合わせ、都度開発コストやカスタマイズコストがかかってしまうのも問題です。
セキュリティ問題
老朽化したシステムでは、最新のOSやソフトウェアに対応できないという事態も起こりえるため、セキュリティリスクが高まります。新たに出現したランサムウェアなどのウイルスに対するアップデートが追い付かず、老朽化したシステムは狙われやすくなってしまうのです。また、最新のプログラムや大量の情報処理に対応できないことにより、システム障害が多発する可能性もあります。
このようなトラブルが起きた際は、社内業務が停止する可能性があるだけでなく、顧客データや開発データなどの重要なデータが消失する恐れもあります。法改正に臨機応変に対応できないことも、企業としては大きな痛手です。
業務変化に対応できない
規模の拡大や新事業の開始などに伴い、企業において業務内容は常に変化していくものです。そのような変化に柔軟に対応できることがシステムには求められます。
10年以上同じシステムを使っている場合は、当初の業務に合わせたシステム要件のままであり、現在の業務にうまく当てはまらない可能性があります。その場合、結局システムだけではまかなえず、人的なフォローが必要となります。システムによってムダな作業が発生し、業務の効率化を阻む原因の一つです。
また、近年では働き方の多様化が進み、テレワークを導入する企業も増えています。社外からシステムにアクセスできない、紙ベースの管理を行っている、という業務形態ではテレワークの促進を阻むこととなり、ひいては優秀な人材の流出や、新たな人材の獲得機会の損失にもつながりかねません。
システム選定において情シスが注目すべき4つのポイント
社内のシステム選定の核となる情シス部門。いかに自社に合った、最適なシステム選定を行うかが肝となります。ここでは、システム選定で注意すべきポイントを紹介します。
①自社に必要な機能を備えている
システムによって、あらかじめ備わっている機能、オプション機能などが異なるため、自社の業務に必要な機能がそろったものを選ぶことが基本です。反対に、いくら機能が充実していても、自社に不要なものばかりでは、コストのムダ遣いになりかねません。自社の規模や業態に適したものを選ぶようにしましょう。
また、適切なシステムとは、日々の業務をできるだけシンプルに実施、管理できるシステムを指します。様々なデータを一元管理できるシステムであれば、データの二重入力や独立したシステム間でのデータ照合といった作業が削減でき、さらに部門間で連携を取ることが容易になります。そのため、導入時は実際にシステムを利用する現場の声を反映することが望ましいです。
さらに、集約したデータを経営判断に活かせる機能があればなおよいでしょう。部門ごとクライアントごとといった多様なメッシュデータを出力できれば、業績がよい、もしくは振るわない原因がどこにあるかや、未来の経営指標に役立てることが可能になります。
②連携機能が充実
企業の業務すべてをカバーできるシステムがあれば一番ですが、そのようなシステムはなかなかありません。そのため、システム間での連携ができることも外せない条件です。自社で使用している会計システムやメールソフトなどの重要なシステムとの連携ができるかどうかも確認しておきましょう。
外部システムとデータ連携する機能があれば、転記の手間や二重入力によるミスの発生を防ぐことができます。
③IT統制が担保されていること
内部統制の一つであり、安定したITシステムの運用を行うために欠かせないIT統制。ITを有効かつ適切に利用できる体制を構築、運用、管理し、システム利用に関わるリスクヘッジを行います。
システムは便利であると同時に、不正アクセスによる情報漏洩や、内部不正によるデータ改ざんといったリスクをはらんでいます。情シスは、健全にシステムを利用できるような環境づくりを担っており、その中でもシステム選びは大きな割合を占めています。
データ入力の正確性や、アクセス権のコントロールなど、IT統制上で必要な機能があらかじめ備わっているシステムを選ぶことが大切です。
IT統制について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
④バージョンアップや法改正に対応
ITを取り巻く環境は常に変化し続けています。そのような中で、システムは継続的なアップデートや柔軟な対応ができなければなりません。
システムを最新の状態に保てないと、ウイルスの脅威に脅かされたり、最新のプログラムに対応できず業務に支障が出たりする恐れもあります。さらに、法改正などでワークフローや機能自体を変える必要も出てくるでしょう。
クラウド型のシステムであれば、随時バージョンアップが実施されるケースが多く、都度システムを変更したり入れ替えたりする必要がありません。社内にサーバーを保有する必要がないため、点検や監視などの運用保守費用を削減できるのもメリットです。また、サーバーの寿命によってシステムが利用できなくなる、といった事態も避けることができます。
情シスが主導となり、システム導入に成功した事例
ここからは、本ブログを運営している株式会社オロが提供するERP「ZAC」を導入した事例の中から、実際の情シス担当の声をピックアップしました。
①UEL株式会社様
社員数191名規模で、純国産の3次元CAD/CAMシステムの提供をしているUEL株式会社様。日本のものづくりを支援するソリューションプロバイダーです。
同社は、システムの老朽化、内部統制への対応、収支情報の分散といった複数の課題に対応するためにZACを導入しました。
選定の際には、運用や保守に手間がかからないクラウド型、なおかつ会社として投資できる規模、販売管理とプロジェクト原価管理がオールインワンになっているシステムに限定。当初の課題だった「システム老朽化」はクラウド型のシステムを選ぶことで解決しました。内部統制についても、新業務プロセスにあわせてワークフローを設計し、今まで人力で行っていたことをある程度システムで対応できるようになったといいます。
ZAC導入後は、経営企画部門と経理・会計部門に顕著な効果がみられています。経営企画部門では、売上・原価予測の帳票作成期間をこれまでの1/2に短縮。経理部門では、チェック作業が自動化され、経理処理の漏れが少なくなったことで会計報告の作業時間が1/2程度になるなど、経理業務が全般的に効率化するといったメリットが得られました。
②INSIGHT LAB株式会社様
社員数60名規模でZACを導入したINSIGHT LAB株式会社様。データマネジメント領域におけるコンサルティングから開発・導入・運用までを主要業務としています。
以前から様々なツールを用いて業務管理を行っていた同社。しかし、部署の中で二分化が進んでおり、業務管理や経営データが複数のツールごとでも分断されていました。特に、案件別の工数管理がうまくいかず、原価計算のスピードと精度に課題をもっていたそうです。また、データの正確性が担保されていなかったのも課題でした。
開発部のメイン業務は担当案件の作業ですから、システムへのデータ入力は後まわしになりがちです。そのせいで、現場のスタッフが今手一杯なのか、リソースが開いているのかすらわからない状況でした。さらに営業との連携にもあいまいな部分があり、現在進行している案件なのかどうかを即座に判断できないという問題もありました。ZACを導入してからは、開発メンバーの稼働状況がシステム上で把握できるようになったのがうれしいですね。アサイン調整もスピーディに行えていますし、テレワーク中でもメンバーが何の案件でどう動いているかが可視化されているので、稼働状況のマネジメントもできています。
社内でシステムを開発する案もありましたが、内製は社内エンジニアの時間を使ってしまうことがネックでした。案件作業に割けるリソースが減るだけでなく、本業がある中で社内プロジェクトの開発を進めるとなると、パッケージ製品の導入に比べて数倍の時間がかかってしまうことが懸念点だったといいます。
ZACでは締め処理機能があり、案件の担当者は毎月の締め日までに情報登録をする必要があるため、現場社員のデータ入力の意識が高まりました。結果、案件別の工数が厳密かつ素早く集計可能になったそうです。
さらに、見積の段階から、営業と開発で同じデータを見ながら意思疎通できる点にも大きなメリットを実感しているといいます。以前はそれぞれが感覚に頼って見積の根拠を議論していましたが、ZAC導入後はシステム上の数字をベースに部門間の相談ができるようになり、今までより一段高いレベルでのコミュニケーションが実現しました。自分が担当している利益が可視化されることで、各々のモチベーションや責任感の向上にもつながっているとのことです。
③東京テアトル株式会社様
部門システムとしてZACを導入した東京テアトル様のソリューション事業部。映画製作・配給・興行をはじめ、飲食、不動産など多彩な事業のうち、広告やプロモーションの企画・制作を行っている部門です。
もともと子会社の1部門であったところ、事業再編をきっかけに部門ごと親会社に移管されることとなり、そのタイミングで新システムの導入を行うことになったという経緯がありました。
ZACを選んだ決め手は、旧システムと同様にプロジェクト管理ができ、なおかつ「内部統制」「共通会計システムへの連携」という条件を満たしている点でした。当社の業務にフィットした、まさにイメージ通りのシステムで、デモンストレーションを見たその場で導入を決めました。
旧システムでは、仕訳を起こせてもデータとして出力できなかったため、結局は手作業で会計システムに仕訳入力する必要がありました。ZACは仕訳をCSVデータ出力できるので、ほんの10分程度で親会社の会計システムにインポートできているとのことです。さらに経理系のアウトプット帳票が充実しているので、そのまま提出するか、少し加工するだけでほとんどのリクエストに対応できるのもメリットだといいます。
ZACでは、見積書や請求書の発行、受注、発注などの処理を行う場合は、必ずシステム上での申請・承認が必須になるので、会社が求める内部統制にも対応可能です。
ZACで得られるデータによって、営業戦略もより具体性がアップし、月間売上・利益の推移を販売品目レベルで明示できるようになりました。売上や利益がなぜ伸びてきているか、なぜ落ちているのかといった原因の把握にも役立てているとのことです。
④住友林業情報システム株式会社様
社員数169名規模でZACを導入した住友林業情報システム株式会社様。住友林業グループのIT戦略を担う企業として、グループ各種事業における広範囲なシステム開発から、システムインフラの企画・運用・監視、利用ユーザーのサポート業務を行っています。
以前は、自社開発した案件別の原価管理システムを使用していたという同社。見積作成から受発注処理、請求、工数入力までカバーするシステムでしたが、14年ほど前に作られたシステムだったため、業務内容の変化に対応しきれず手作業で運用する部分が多くなってきていました。会社規模が小さい頃は問題ありませんでしたが、会社の拡大に伴い限界を感じることが増えてきたといいます。Excelを併用し、中には三重、四重入力になっている処理もありました。見積書や請求書の出力機能もありましたが、システム稼働後に業務内容が変わってしまったため、ほとんどが使えず結局Excelで対応していたのも大きなムダでした。
元々は、自社開発したシステムの二次開発を行う計画がありましたが、社内リソースの問題から業務内容に合わせたシステム改修が進められず、もどかしい思いをしていました。社内業務よりも社外向けのクライアント業務を優先しており、かつ優秀な社員であればなおさら社外向け業務にアサインしたかったのです。その点を考慮し、社内のSEがいなくても動かせるシステムという前提のもと、パッケージシステム中心の選定を行い、カスタマイズも極力しない方針で進めました。
プロジェクトメンバー全員が自社に最もフィットするシステムと感じ、かつ「今後10年の仕様に耐えうるシステム」であると、ZACを導入することに決定。
ZAC導入後の具体的な効果は、月次の経理作業において1人分の作業時間を削減できたことだといいます。月末支払いの確認作業が、ZAC上のデータと請求書を照合させるだけで完了できるなど、各所で重複入力がなくなり、多岐にわたって業務効率化が実現しました。
さらに、ZACは日次の工数入力に対応しており、マネージャークラスからは工数入力の精度が上がったと評価されているとのこと。また、請求書の未発行や仕入計上の漏れなど、未処理の業務をアラートしてくれる機能も重宝しているそうです。
まとめ
今回は4つの導入事例から、実際に情シス担当がどのような目線でシステムを選定したか、どういった活用をしているのかを紹介しました。自社に合ったシステムを導入することで、業務の効率化はもちろん、経営戦略に役立てたり社内の意識改革につながったりと、様々なメリットが得られます。そのためには、自社の課題を洗い出し、必要な機能を備えたシステム選定を行うことが重要です。
情シス担当者は、老朽化したシステムを使い続けることで、管理コストの増加やランサムウェアの脅威など、味方であるはずのシステムに脅かされる可能性があることを認識しておきましょう。
クラウドERPを導入することで、一元管理による業務効率化をはじめ、アップデートや法改正への対応、データの正確性など、ゆるぎないシステム基盤を築くことができます。クラウドERP「ZAC」は、IT業やクリエイティブ業、コンサルティング業などの、プロジェクト単位で業務進行する業種に特化した機能を備えています。そのような業種でシステム導入に迷っている情シスの方のために、システム見直しのポイントをまとめました。ぜひダウンロードして参考にしてみてください。
システム担当者として一番の課題はシステムの老朽化でした。個人的にはシステム老朽化対策を急ぎたかったのですが、複数の課題に包括的に対応するため、全社を対象にした業務改善プロセスの刷新からスタート。1年目は課題の整理と優先順位を決め、2年目からは業務プロセスの刷新を進めました。新システム導入を行う前に、まずは人の動きから変えていき、その後に新システムの導入検討に入るという流れです。