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実践的事業計画書の作り方と利用方法 第2回

実践的事業計画書の作り方と利用方法 第2回
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2011/7/26公開

さて今回は、事業計画書作成のステップ1として、戦略構築の前提となる中小企業にとって「使える」SWOT分析のお話です。
手軽に行える実践的なSWOT分析の手順は以下のように行います。
・過去の財務諸表を分析する
・商品ライフサイクルと競争ポジションを仮定する
・自社の資源(リソース等)を分析する
・SWOT分析一覧表に取りまとめ
 まずは、(1)過去の財務諸表を分析する から、順を追ってステップを見ていきましょう。

目次

    ステップ1 過去の財務諸表を分析する(内部環境分析)

    SWOT分析の手始めに、まず内部環境分析として自社の財務分析を行い強み・弱みを財務面から把握していきます。

    財務分析では3年~5年分の決算書を元に、時系列に分析数値を比較することによって、良くなっているのか、あるいは悪くなっているのか等の大まかな傾向をつかみ、次にベンチマークすべき個別企業の数値(上場企業の場合、有価証券報告書等により入手可能)、あるいは、業界標準値等と比較し、自社の強み・弱みを探っていきます。その際、成長性の視点、損益の視点、資金の視点から分析指標を選定すると良いでしょう。

    表1 財務分析の観点と分析項目

    分析の観点分析項目ポイント
    1:成長性の視点 成長性分析 業界の平均成長率を上回っているか
    2:損益の視点 収益性分析,生産性分析
    • 粗利と費用面から分析する
    • 収益性を改善するためには生産性(投入要素単位当たりのアウトプット)の改善が重要
    3:資金の視点 借入余力,収支構造,安全性
    • 債務償還年数を10年以下に
    • 売上が増えると資金はどうなるか
    • 自己資本比率(資本構成)をどうコントロールしていくか

    表2 代表的な分析指標例

    分析指標名算出方法内容・ポイント
    a:売上高成長率 (当期売上高/前期売上高-1)×100% 成長性の代表指標
    b:営業増益率 収益性分析,(当期営業利益/前期営業利益-1)×100% 本業の成長性を表す
    c:総資本経常利益率 (経常利益/総資本)×100% 収益性の総合指標
    d:売上高経常利益率 (経常利益/売上高)×100% トータルな採算性を示す
    e:総資本回転率 (総資本/売上高)×100% 資本の効率性を見る
    f:売上高営業利益率 (営業利益/売上高)×100% 本業の収益性を示す
    g:粗利益率 (売上総利益/売上高)×100% 商品力を表す
    h:売上高販管費率 (販管費/売上高)×100% 費用効率を見る
    i:一人当たり売上高 売上高/従業員数 販売効率を見る
    j:一人当たり粗利益 粗利益/従業員数 従業員への分配の源泉
    k:労働装備率 有形固定資産/従業員数 設備投資の状況
    l:債務償還年数 {短長借入金+社債-運転資金(売上債権+棚卸資産-買入債務)}÷(経常利益-法人税等+減価償却費) 金融機関が重視する
    5年以下...優良
    10年以下...普通
    10年超...要改善
    m:運転資金回転期間 (売上債権+棚卸資産-買入債務)/売上高÷12 月商の何倍の運転資金が必要か
    n:自己資本比率 純資産/総資産×100% 債権者が重視する指標

    ステップ2 商品(製品)ライフサイクルと競争ポジションを仮定する(外部環境分析)

     財務的な面から、自社の強み・弱みを把握した後には、商品(製品)市場と競争ポジションの分析を行います。

    各種統計データを参考に市場全体の動向を把握した後に、自社の販売データに基づき、

    1. 主要な商品(製品)はライフサイクル上どのあたりに位置づけられるか。
    2. 市場における自社の競争ポジションははどの位置にあるか。

    を仮定、それに対応した進むべき方向性(経営戦略)を検討していきます。


    cycle.png

    商品(製品)ライフサイクルを考える上で、典型的な競争環境は、以下のようにまとめることができます。

    • 導入期...市場には少数の参入者。商品(製品)の普及に伴う市場拡大効果が大きく競争はそれほど感じられない。
    • 成長期前半...新規参入が続き、激しい競争が起きる。市場シェア拡大が必要となりキャッシュフローは赤字が続く。
    • 成長期後半...競争はますます激化し、市場脱落者が発生する。
    • 成熟期...寡占化が進み競争状態は安定的になる。商品(製品)間の差別化特性が失われ価格勝負になってくる。高コスト体質の企業から脱落していく。

    ステップ3 自社の資源(リソース等)を分析する(内部環境分析)

     商品・市場についての分析により自社の立ち位置、進むべき今後の方向性(経営戦略)を確認した後は、現状の資源(人材、設備、ノウハウ等)の棚卸を行います。人材については現状の組織図を確認、続いて目標を達成するための将来のあるべき組織図を作成しそのギャップを把握します。

     会社の進む方向性を決め、それを達成するために必要な資源(人、設備、ノウハウ)をいつどのように調達し行動するか、そのための資金をどうするかを総合的に記述したものが事業計画書であり、SWOT分析はその事業計画書作成の第一歩となるべきものとなります。

     次回は、事業計画書作成のステップ2として、SWOT分析をもとに立てる戦略・戦術方針決定、経営目標設定についてお話します。

    INDEX : 実践的事業計画書の作り方と利用方法

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    表 順一

    この記事の筆者

    朝日ビジネスソリューション株式会社 マネージャー 公認会計士

    表 順一

    大学卒業後、民間会社を経て公認会計士試験合格。大手監査法人にて法定監査、企業再生、株式上場支援に従事。現在は朝日ビジネスソリューション株式会社にて、事業計画策定・予算等主として経営管理体制構築支援を行っている。アーリーから株式上場、あるいは事業承継のための会社の磨き上げなど様々なステージの企業ニーズに対応したコンサルティングを手掛ける。