サブスク管理とは?システム導入のメリットや選定ポイントを解説
継続的に定額料金を払うことでサービスが受けられるサブスクリプションサービス。中長期的な安定収益を期待できることから、サブスクリプションサービス(=サブスク)を提供する企業は近年、増加傾向にあります。そして今、サブスク管理手法に注目が集まっています。
一度販売して終わりではなく、顧客ごとに異なる利用プランや請求タイミングを把握する必要があるビジネスモデルだからこそ、管理が複雑になりがちです。
本記事では、サブスクリプションビジネスを提供する企業がサブスク管理を行う方法やそのメリットを解説します。サブスク管理を行うためのツールは年々増加しているため、ポイントを押さえた選定が肝要です。
企業におけるサブスク管理とは
サブスク管理とは、月額課金や定額料金で利用できるサービスを提供している企業が行う、毎月の料金請求や決済、顧客管理などに関する業務全般のことです。具体的には、以下のような業務の管理を行います。
- サービス提供に関する業務:登録、契約情報の管理、契約更新時期の管理など
- 料金の請求に関する業務:利用料金の計算、請求書発行、決済処理、売上集計など
- 顧客との関係構築:KPI管理、LTV分析など
サブスクとSaaSの違い
月々、定額料金を支払うという点で、サブスクとSaaSは似ているように思えるかもしれません。サブスク(=サブスクリプション)とは、定額料金を支払うという料金形態を表す言葉です。
一方SaaS(=Software as a Service)は、買い切りではなくサービスとして利用するソフトウェアのことを指します。
サブスクはサービスの料金形態、SaaSは製品・サービス自体を指す点が異なります。SaaSは、月額料金を支払っている期間のみ利用できるという特性上、その多くがサブスクで提供されています。
サブスクと定額制の違い
料金形態としてサブスクと似たものに「定額制」があります。毎月、一定の料金でサービスを受けるという点で両者に違いはありません。しかし、従来の定額制、例えば新聞購読などの多くは、一定料金で毎日新聞が届くという「同じ料金・同じサービス」であることが一般的でした。
しかし近年多く出ているサブスク型サービスは、顧客満足度を追求して様々なプランやオプションを用意し、柔軟にサービス内容を変更できるという特徴があります。料金形態としては同義ですが、受けられるサービス内容に違いがあると言えます。
サブスク管理における課題
サブスク型サービスを提供する企業は、そのサービスや料金形態の特性上、様々な管理上の課題を抱えています。具体的な課題は、以下のとおりです。
請求金額や請求日の管理が煩雑
サブスク型サービスは、契約内容や契約期間、請求のタイミング、請求金額などが顧客によって異なるため、請求漏れや金額ミスが発生しがちです。さらに、個別値引きや無料キャンペーン期間といったイレギュラーな対応もあるため、管理が煩雑になってしまいます。請求と計上のタイミングが異なることもあるでしょう。
顧客それぞれの契約状況に応じた適切な請求管理が行えなければ、余計なコストの増加やトラブルの元になり、その結果、企業として大きな損失を被る恐れもあります。
契約内容の変更で手作業が発生
プランの追加やライセンス数の変更など、随時契約内容の変更が起こりうるため、それらの変更に個別に対応しようとして手作業の業務が発生しやすいのことも課題です。
手作業が発生すると、時間や手間がかかるだけでなく、人的ミスの原因にもなりえます。しかし、サービス内容が複雑であればあるほど一律で処理できず、人の手で変更作業を行う必要が出てきます。
解約率やLTVの算出・分析ができていない
月々の請求管理や契約管理で手一杯となってしまい、解約率やLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)の算出、営業活動に必要な分析業務まで手が回らないことも課題のひとつです。情報をタイムリーに分析できないことで、顧客ニーズに合わせたサービス提供ができず、徐々にユーザー満足度が下がったり顧客数が低減したりといったリスクが考えられます。
毎月どのくらいの売上金額が見込まれるかや、月ごとの新規顧客数やその売上額、既存顧客から新たに発生した売上といったといった情報がわかるようになれば、販売に関連するKPIを適切に管理することができます。各情報を分析することで、より戦略的な営業活動も可能になるでしょう。
サブスク管理システムとは?具体的な機能を解説
サブスク管理で多く使われるのは、Excelのような表計算ソフトです。しかし、サービスの種類やプラン数、オプション、顧客数、キャンペーンなどが増えるほど管理は煩雑になっていきます。それらの管理を効率化するのがサブスク管理システムです。サブスク管理システムにはどのような機能が搭載されているのか、具体的に紹介します。
契約管理
顧客情報とその契約情報を管理できる機能です。具体的な管理項目として、契約プランや期間、オプション追加、請求サイクル、個別割引などがあります。請求や売上に直結する情報だからこそ、システムで自動化しつつ正確に管理することが大切です。
見積管理
サービスの見積書を簡単に作成・発行できる機能です。手作業で計算しなくても、登録したプランやオプション、値引き条件などを選択するだけで見積書を作成できるため、計算や入力のミスを減らして効率化が期待できます。作成した見積書をシステム上で承認できる場合もあります。
商品管理
サービスの料金プラン、オプションごとの基本条件を管理できる機能です。サービスの価格改定やプランを新設する場合も手軽に対応でき、各顧客の契約内容に即時反映できます。
料金・価格体系管理
定額・段階・従量など、サブスクの課金形態を管理できる機能です。月額料金やオプション料金だけでなく、キャンペーン価格、値引き、無料トライアル期間など、顧客ごとに個別で調整が必要な場合も、システムなら柔軟に管理できます。
ワークフロー管理
見積もり提示から受注、契約締結などの各申請・承認をワークフローで管理できる機能です。顧客ごとの契約ステータスや、社内の申請・承認状況を把握できるため、社内でのフォローもしやすく、申請漏れや請求遅れも防げます。
サブスク管理システムのメリット
サブスク型サービスの管理をシステムで行うメリットは、主に以下の2つがあります。
バックオフィス業務の効率化
サブスク型サービスでは管理すべき情報が多く、バックオフィス部門にとって大きな負担になりがちです。手作業では管理に手間がかかるうえ、計算ミスや請求漏れ、滞納などのトラブルを防ぎにくく、その対応にも時間がかかります。
Excelで管理するにも、顧客数やプランなどのデータが増えるほど計算式が複雑になり、二重チェックが必須となる場合があります。しかし、システムを活用すれば複雑な計算の自動化や管理工数の低減が可能です。手作業によるミスやそのチェック工数も削減できるため、バックオフィス業務を効率化できます。
顧客ごとの契約データを一元化できる
システムの利用によって、顧客ごとの契約内容を一元管理できるようになるため、営業活動における効率化や精度向上に役立てられる点もメリットです。契約更新のタイミングで忘れずにアプローチができたり、契約情報や利用データに基づいて、顧客の求めるサービスをクロスセル販売できる可能性もあります。顧客ごとに適切なサービスを提供できれば、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
さらに顧客のLTVを分析して、LTV向上のための施策立案や施策の効果測定にも役立てられます。
サブスク管理システムの選定ポイント
サブスク型サービスが増加している今、サブスク管理システムも様々な種類が提供されています。そこで、どのようなポイントで選べばいいのか、選定の際に検討すべきことを紹介します。これからサブスク管理システムを導入しようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
外部ツールとの連携性
サブスク管理システムは、他のシステムやツールと連携することでより効率的な業務が可能になります。そのため、まずは社内で現在使用している基幹システムやBIツールなどのシステムと連携できるかどうかが重要です。
たとえば、サブスク管理システムで扱うデータは顧客情報や売上金額など、企業のリソースに関わるものが少なくありません。そのため、基幹システム内のデータをそのままサブスク管理システムでも活用できれば、スムーズに業務を進められるのです。
サブスク管理システム内の情報をもとにデータを分析し、その結果を可視化して報告に使いたい場合も、BIツールと連携することでスムーズに行えます。
自社サービスに合った機能を搭載しているか
サブスク型サービスと一口にいっても、提供しているサービス内容や料金体系、課金方法はそれぞれ異なります。そしてサブスク管理システムの機能もそれぞれ異なるため、自社が提供しているサービスに合った機能を搭載しているかどうかを確認することが必要です。
たとえば、日割り計算での課金方法に対応しているかどうかや、オプションの数はどれだけ対応できるかなど、自社のサービス形態に合わせた管理ができるか確認しましょう。
現場にとって使いやすいか
サブスク管理システムを利用する、バックオフィスや営業部門などの現場メンバーにとって使いやすいと感じるかどうかも重要なポイントです。
せっかく必要な機能がそろっていても、実際の業務フローに沿っていなかったり、使いにくさを感じたりする場合は、定着までに必要以上に時間がかかる可能性もあります。導入前に、デモやトライアルで実際の操作画面を見て、使いやすさやUIを現場のメンバーとともに確認しておきましょう。
セキュリティ体制の確認
顧客情報や契約内容、売上金額といった機密情報を扱うシステムであるため、システムのセキュリティレベルが担保されているかどうかも重要です。特にクラウド型のシステムの場合は、セキュリティレベルや対策がベンダーに大きく依存するため、しっかりと確認することが欠かせません。またトラブルが発生した際にどのようなサポートを受けられるのか、リカバリまでの流れなど、サポート体制も導入前に確認しておきましょう。
まとめ
サブスク型サービスが増えている今、サブスクにまつわる様々な業務を効率的に行う必要性が高まっています。契約変更や個別対応が多く、管理が煩雑なサブスク型サービスだからこそ、システムを使った管理が有効だと言えます。
システムを利用することで、バックオフィスの業務効率化や顧客データの一元管理、顧客データの分析などが実現できます。自社の提供するサービス内容や現在使用している他システムとの連携、UIなどを考慮したうえで、適切なシステムを選定しましょう。
特に基幹システムとサブスク管理システムは、連携させることによって案件発生から毎月の請求までシームレスに進めることが可能です。たとえば、本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP「ZAC」は、サブスク管理システム「ハヤサブ」と連携できる「サブスクリプション管理オプション」を提供しています。
両者を連携することで、プロジェクト型ビジネスとサブスクリプション型ビジネスの損益管理や債権・債務の管理を一元化できます。さらに、SFA/CRMや会計システムといった周辺システムとの柔軟なAPI連携が可能です。 サブスク管理システムの導入を考えているなら、連携性の高いシステム選定や、あらかじめオプションを搭載している基幹システムも視野に入れてみてください。