株価の計算方法

2013/6/01公開

前回コラムではストックオプションの価値について、会計基準に従って解説しました。
今回は、株価の計算方法について説明します。

株価の計算方法について

株価というのはその会社の価値を示すものですが、未上場株の評価方法についてはその対象となる株の量が企業支配権に関係するくらいの量なのか、それともそれには及ばない僅かな量なのかでまず異なります。企業支配に関係する株式の量は全体の1/3を超えたところから始まり、それ以外の僅かな株はそれだけでは泡沫株と称されます。泡沫株について企業支配権に関連しないので、配当請求権を基に株価を計算する配当還元価値が基本的な株価の評価法となり、相続税法による評価においても同属株主以外については配当還元価値による評価が認められています。

一方企業支配に関係する量の株についての評価については、過去からの企業財産の蓄積を示す純資産を基に評価する方法、最近の実際の業績を基に評価する方法、将来に期待される業績を基に評価する方法、というように3つの時間軸によって評価法が分けられています。

純資産を用いて評価する方法には清算価値を前提とする時価純資産法と継続企業価値を前提とする簿価純資産法がありますが、相続税法による純資産法は時価純資産法による評価から含み益にかかる税金部分を控除したり、特有の調整を図った時価純資産法の変形です。

次に最近の実績を基に評価する方法としては、類似業種比準法、類似会社比準法あります。相続税法の類似業種比準法の比準するものは純資産と利益と配当の3要素あり、上場時の公募価格算定の基礎に使われる類似会社比準法では配当は使われなくなっています。相続税法上の評価額については歴史があって過去に業績の良い時代があってそのときにかなり利益の留保を行ったために純資産が膨らんでいるが最近の業績はいまひとつという会社は、純資産法の評価額より類似業種比準法が低くなり、逆に社歴はさほどないが業績は非常に良好であるような場合は純資産法の評価は低いが類似業種比準法による評価は高くなります。つまり上場準備会社においては、常識的には類似業種比準法の方が高くなることになります。

最後に事業計画などに基づく将来価値から株価を算定する方法がDCF(ディスカウント・キャシュ・フロー)法といわれ、将来性が非常に有望であるベンチャー企業の評価やM&Aに際する株価の評価に多く用いられています。過去における蓄積はなく、現時点においての業績についてもいまだ低迷しているが、その将来性については素晴らしい、というような会社はこの評価方法でなければほとんど無価値と看做されてしまうことになます。

ディスカウント・キャシュ・フロー(DCF)法

DCF法による株価評価は、株式の評価をその企業が将来生み出すフリーキャシュフローの総合計の現在価値として計算するものです。

DCF法で株価を計算するためには、対象となる会社の将来キャシュフローの予測が不可欠であり、そのためには正確な中期事業計画の算定が必要となります。事業計画の期間は通常3年から5年ですが、正確に予測可能であれば期間は長いほどDCF法の計算にとっては良いことになります。

しかし現実には10年先を正確に予測できる会社は少ないので、5年程度で計算する事例が多いといえます。ただし予測最終事業年度のフリーキャシュフローを現在価値に割り返したターミナルバリューの部分が評価額に占める割合が多い場合には、計算結果について一般的には説得力を持つことが難しいといわれています。通常予測最終事業年度に向けて事業拡大と利益拡大が見込める場合には、ターミナルバリューの評価額全体に占める割合は半分以上となります。

一方で予測最終事業年度のフリーキャシュフローがマイナスとなった場合はその影響で株価がマイナスになってしまう現象が起こったりもします。

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この記事の筆者

日之出監査法人 統括代表社員 公認会計士

小田 哲生

公認会計士。1979年より朝日会計社(現あずさ監査法人)に勤務。2002年より2009年まで代表社員。1985年以降はIPOを専門に扱う企業公開部に所属。20年以上に渡り、IPO業務推進の中心的役割を果たす。関与先でIPOを達成した企業数は30社以上となるが、特に2005年から2008年の4年間にかけて上場を達成した企業は15社となり、公認会計士業界では最多となる。東証、JASDAQ、ヘラクレスなどの主催するセミナーでも数多くの講師を務める。2009年上場準備・中堅企業のための日之出監査法人を立ち上げ、現在に至る。

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