プロジェクトを成功に導くコスト管理手法とは?注意すべきポイントも解説
プロジェクトにおけるコスト管理とは
プロジェクトコスト管理とは、プロジェクトに必要な費用をあらかじめ決められた予算内におさまるように見積もり、日々状況把握と調整を行うことです。どのようなプロジェクトであっても、必ず材料費や労務費などの費用が発生します。それらのコストを事前に見積もって予算を組み、その予算通りに進められるようコントロールすることがプロジェクトコスト管理です。
もしコスト管理が正しく行われていなければ、赤字プロジェクトになる恐れがあります。プロジェクトの日程や品質を計画通り完遂できたとしても、赤字になってしまえば、プロジェクトとしては失敗だと見なされることもあるため注意が必要です。赤字プロジェクトを防ぐためにも、プロジェクトコスト管理が欠かせません。コスト管理の知見が社内に蓄積されれば、今後のプロジェクトにも活かせるでしょう。
プロジェクトマネジメントにおいて、コスト管理が重視される理由は他にもあります。プロジェクトで重要となるスケジュールや人員といったリソースは、コストと密接に関わっています。コストを管理することで、プロジェクトの重要項目を網羅的に管理することにつながるのです。
プロジェクトコストの分類
プロジェクトコストは、固定費と変動費の2つに分類できます。ここでは、具体的にどのような費用がどちらに分類されるのか解説します。一般的な固定費と変動費の違いについてはこちらの記事を参照ください。
固定費
プロジェクトにおける固定費とは、プロジェクトの進行に欠かせない、もしくは仮に売上がゼロでも毎月必ずかかる費用のことです。プロジェクトの進捗に関係なく必ずかかる費用が固定費に該当します。
変動費
プロジェクトにおける変動費は、プロジェクトの売上によって価格が変わる費用のことです。生産量の増加とともに増え、逆にサービスの生産がなければ発生しないという特徴を持ちます。
コスト管理の重要性と4つのメリット
コスト管理の目的は、プロジェクトを予算内で行い、コストの予算超過を防ぐことです。これは、プロジェクト成功の鍵を握る業務でもあります。さらに、コスト管理を行うことによって得られるメリットを4つ紹介します。
プロジェクトの収益性を高められる
プロジェクトを実施することで得られる利益は、売上から費用を差し引いて算出されます。つまり、コストを予算内に抑えれば、より多くの利益を確保できるということです。逆にコスト管理を適切に行わなければ赤字プロジェクトになりかねないので、赤字を回避するためにも重要だと言えます。また、必要なコスト予測を日々見直し、利益の着地見込みを最新化することで、赤字を未然に防ぎ、利益を最大化するように手当てすることが肝要です。
スコープクリープにも柔軟に対応できる
スコープクリープとは、プロジェクトの途中で追加依頼や変更要求があることによって当初の要件と変わり、プロジェクトが膨らむことです。これによってプロジェクトの日程が遅れたり、予算がオーバーしたりする恐れがあります。
適正なコスト管理を行うことで、スコープクリープが発生しても柔軟に対応できる点もコスト管理のメリットです。もしコスト管理を適切に行えていなければ、スコープクリープが起きたときにどんどんコストが増え、赤字プロジェクトになりかねません。
コスト管理が正しくできていれば、予算内で対応できるのか、もしくは追加予算を手配すべきかなどを素早く判断でき、臨機応変な対応が可能となります。
リソースを適切に振り分けることができる
コスト管理をすることによって急な変更への対応がしやすくなるだけでなく、想定より早く作業を終わらせて手が空いた人員を他のプロジェクトに割り当てるなど、企業全体での最適化を図れます。
通常、複数のプロジェクトを並行して進めることが一般的です。そのため、他のプロジェクトも視野に入れた動きができるようになるのは、利益確保において大きなメリットとなります。
見積もりの精度上昇につながる
適切にコスト管理ができていれば、必要な費用を見積ったうえで実際にどれだけコストがかかったのかを比較できるため、今後の見積もり精度の上昇にもつながります。今後、類似プロジェクトが立ち上がった際、より精度の高い見積もりを作成できるため、予測のみで見積るよりもムダやムリのない予算立案が可能となります。
1人の経験や1つのプロジェクトでは蓄積できない情報が蓄積されるため、企業としての財産にもなります。
コスト管理の具体的な考え方と手順
続いてコスト管理を実践していく際の具体的な考え方と手順を解説します。プロジェクトマネジメントにおけるコスト管理にはPMBOK(ピンボック)の考え方が役立ちます。コスト管理に着手する前に理解しておきましょう。
PMBOKとは
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクト管理全体の知識を体系的にまとめたもので、世界標準でもあります。PMBOKでは、QCD(品質・コスト・納期)の管理を目標に掲げており、コスト管理工程についても解説されているため、プロジェクトコスト管理を行う場合に知っておきたい内容です。
①コスト・マネジメント計画の作成
まずは、どのようにコスト管理を行なっていくか、コスト・マネジメント計画を作成します。これはコスト管理の方針や手順を定める、コスト管理の土台となる部分です。プロジェクト全体でかかるコストや管理方針、手順などを文書化します。この段階で、発生しうるコストは全て洗い出しておくことも大切です。
②リソースの確保
続いて、プロジェクトに必要なリソースを確保します。リソースとは、人員、予算、設備などを含んだ、プロジェクトを完成させるために必要なものです。たとえば人員であれば、社内のメンバーで足りるのか、もしくは外部のスペシャリストに依頼すべきなのかも含めて検討します。
プロジェクトの内容に応じたリソースをこの段階で検討することによって、より精度の高い見積もりを作成できます。
③コストの見積もり
上記の①と②を踏まえ、必要な人員や材料、設備などにどれくらいのコストがかかるかを見積もります。見積もる際は、以下のような方法を用いることが一般的です。
- 過去のプロジェクトから類推して見積もる方法
- 過去の情報に変数をかけ合わせて統計的に見積もる方法
- タスクや工程を見積もり、それを積み上げて全体を見積もる方法
④予算設定
コストの見積もりをもとに、プロジェクトの予算を設定します。予算は、プロジェクトごとに一気に与えられることは少なく、時期やフェーズごとに分配されることが一般的です。
そのため、プロジェクトのスケジュールと照らし合わせて、どの時期にどれくらいのコストがかかるのかを予測し、時系列で出す必要があります。予期せぬリスクに備えることも大切ですが、現実的な金額であるかどうかを考えて設定しましょう。
⑤コストコントロール
予算が決定した後、社内発のプロジェクトでは予算承認を経て、対外的な個別プロジェクトでは顧客からの発注・契約をもってプロジェクトの実施に移ります。
プロジェクト開始後は、定期的に予実管理を行い、計画していた予算やその消費タイミングと実績値を比較しましょう。コストが予算を超過しないようコントロールすることが鍵です。
予算を超えそうになったら対策を講じる、やむを得ず超える場合は他の予算を削減するなどの手を打つ必要があります。
EVMとは
⑤のコストコントロールのフェーズでよく用いられるのがEVM(Earned Value Management)という手法です。以下の4つの指標から、コストやスケジュールの差異を分析し、プロジェクトの進捗を管理します。
- 計画上の出来高(PV)
- 実際にかかったコスト(AC)
- 完了している実績値(EV)
- 完了時の総予算(BAC)
失敗しないコスト管理を行うポイント
コスト管理で失敗しないためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
バッファを持たせた予算設定を行う
精緻な予算を組むことは重要ですが、プロジェクトにイレギュラーやトラブルはつきものです。長期プロジェクトであればなおさら、計画通りに進まないことが増えてきます。コスト管理において最も避けるべき予算不足が起こらないよう、十分に注意して管理しなければなりません。
そこで、そもそもの予算設定に余裕を持たせておくことがポイントです。プロジェクトによっては余裕を持たせることが難しいこともありますが、過去の見積もりを参考にトラブルなどのリスクに備えた余裕込みで予算設定しておきましょう。
プロジェクト全体の業務の流れを把握する
コスト管理を適切に行うには、プロジェクト全体の業務フローが明確になっていることが重要です。そのためには、計画を立てる際に、想定している業務フローや予定コストに不足がないかを各部署や担当者にヒアリングする必要があります。
工程に抜け漏れがあれば、その分予算が足りなくなり、プロジェクトのコスト管理はうまくいかなくなります。また、プロジェクトマネージャーや責任者だけでなく、プロジェクトに関わる全員がプロジェクトの全体像を把握することで、コスト意識が高まり、計画通りにプロジェクトを進められるはずです。
正確な労務費の把握
コストのなかでも特に注意すべき項目が、目に見えないコストである労務費です。労務費は人件費のなかで、製品やサービスを生産するためにかかった費用のことを指します。工数管理を怠ると、気づかないうちに労務費が予算を超えてしまうといったいうケースもあるため注意が必要です。
どのプロジェクトにどれだけの時間を費やしたか、従業員が普段からこまめに記録し、それをまとめて管理する必要があります。
タイムリーなモニタリングの実施
コストコントロールについて説明した通り、コスト管理では、定期的な予実管理が必要です。よりタイムリーな現状把握を行うことで、想像以上にコストがかかっている場合にもすぐ気づくことができて、迅速に対策を打てるようになります。
労務費を正確に把握するためにも、日ごろから製品やサービスの生産にかけている時間を管理し、常にモニタリングできる状態にしておくことが大切です。
システムの活用でコスト管理を効率化
上述の通り、適切なコスト管理を行うためには、タイムリーなコスト把握が欠かせません。とはいえ、各部署や担当者ごとに発生したコストを集計して記録するという作業は大変なものです。
そこでおすすめなのが、プロジェクトメンバーが入力した工数などのコスト情報を自動でプロジェクトごとに振り分けられる、プロジェクトの進捗をタイムリーに把握できるようなシステムの活用です。
プロジェクトのコスト管理に特化したシステムを活用することで、タイムリーな予実管理が可能になり、分析や予測といったこともスムーズにできるようになります。また、ボトルネックになっているフェーズや業務が可視化されれば、対策すべき箇所や取るべき手段も明確になります。
たとえば本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP「ZAC」であれば、各自で入力したコストがプロジェクトに自動で紐づけられるため、進捗中のプロジェクトに対しタイムリーな予実管理が可能です。
まとめ
プロジェクトの成功は、結果だけでなくコスト管理が鍵を握ります。そのため、プロジェクトコスト管理を行うことが重要なのです。これにより、プロジェクトの収益性を高められたり、進行中の急な変更要請にも臨機応変に対応することができたり、今後のプロジェクトに活かせたりといったメリットが得られます。
本記事で紹介したコスト管理の手順やポイントを参考に、プロジェクトコスト管理を実践してみてください。コストのなかでも正確に把握するのが難しい労務費は、システムを活用して管理することをおすすめします。
ZACのように、工数をプロジェクトに紐づけて自動でプロジェクトコストの積み上げが可能なものなら、スムーズにコスト管理を実施できるでしょう。効率的にコスト管理を行いたい方は、システム活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。