【事例あり】ERP導入のメリットとデメリット。導入成功の鍵とは?
ERPを導入する目的
ERPを導入する目的は企業によってさまざまですが、一般的には以下のような目的で導入されることが多いです。
- 本部や支店、グループ会社全体の情報を集約。
- 経営会議のための資料作成の時間を○○%削減。
- 手作業によるデータ入力や転記作業を削減し、ヒューマンエラーを防止。
ERP導入の6つのメリット
ERPを導入すれば、企業は多くのメリットを得られます。では、具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
情報を一元管理できる
ERPを導入することで、企業のさまざまな情報を一つのシステムに集約できます。ERPは、ある業務処理を実行するとその業務に関連するデータが全て更新される仕組みです。データの整合性を保ちつつ、リアルタイムで正確な情報を取得できます。
リアルタイム経営を実現できる
ERPの特徴は、ヒト・モノ・カネなどの経営資源に関する最新情報をいつでも取得・確認できる点です。これにより、経営の「見える化」が進み、経営者の迅速かつ的確な意思決定が可能となります。
内部統制の強化につながる
内部統制は不正防止や法令順守につながるため非常に重要です。しかし、適切に実施する際は多大な労力とコストがかかります。特に上場を目指す企業では、制度整備や業務フローの見直しが必要となり、大きな負担になることがあります。
こうした負担を軽減し、内部統制を強化できるのがERPです。ERPは、業務効率向上と内部統制の強化を同時に実現できます。具体的には、マスタ情報の一元化やデータ連携、重複処理の削減など、業務が標準化されることで、監査対応も早くなるのが特徴です。
さらに、電子申請・承認のワークフローや、アクセス権限の設定、操作ログの管理など、データの検索性や透明性を担保する機能も搭載されています。これらを利用することで、企業は負荷を抑えつつ、効率的に内部統制を強化できます。
業務の見直し・属人化排除につながる
ERPの導入は、システムに合わせて業務フローを整理する必要があるため、既存のやり方を見直すきっかけになります。これにより、属人化していた処理を洗い出し、ワークフローを整理・統一することで、誰が対応しても同じ品質で業務が回る体制を構築できます。
現場レベルでは、データの収集・集計作業や確認業務の自動化により、ミスや手戻りが減り、日々の業務負荷を軽減できます。また、経営層にとっては、標準化されたデータをリアルタイムで把握できることで、より的確な意思決定が可能になります。
全体最適につながる
各部門が個別に管理していた情報がERPに集約され、部門間の連携がしやすくなることで社内の情報共有が円滑になり、全体最適につながります。例えば、部門ごとで重複していた作業がなくなり、報告の形式が統一されることで、。無駄なコストや時間を削減できます。また、部門間で協力し合う体制を強化することができ、経営判断がスピーディーかつ的確に行えるようになるため、企業全体のパフォーマンス向上が期待できます。
他システム連携による拡張性が高まる
ERPと外部システムと連携させることで、業務の幅を広げられます。
さらに、BIツールやメール(情報系システム)などと連携することによって、ERP単体では対応しきれなかった特定の業務にも柔軟に対応できるようになります。この連携により、複数のシステム間でのデータ整合性が保たれるため、必要なタイミングで、迅速かつ正確なレポートを提供できるようになります。
ERP導入のデメリット
ERPの導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットも理解する必要があります。ここでは、ERP導入のデメリットについて解説します。
選定~導入~稼働に時間がかかる
ERPを導入する際は、選定・設計・テスト・導入・運用の各段階で十分な時間が必要になります。ERPの選定から導入、稼働までの期間は数か月~数年の期間になるケースも珍しくありません。
特に大企業や業務が複雑な企業ほどプロジェクトの規模が大きくなり、期間が長期化する傾向があります。また、ERP導入は多くの部署や関係者が関わるため、調整や合意形成にも時間がかかることがあります。これらの要素を考慮した上で、十分な計画とリソースの確保が求められます。
既存の業務フローの変更が発生する
ERPを導入することで、従来の業務プロセスを大きく変更しなければならないことがあります。たとえば、これまで紙やExcelで管理していた業務をERPに置き換える場合、作業手順やデータ入力の方法が根本的に変わる等の変更が挙げられます。
業務のやり方を変えることに対し、抵抗を感じる従業員が出ることもあるでしょう。
金銭的コスト、教育コストがかかる
ERPを導入する際は、導入初期費用だけでなく、運用・保守費用などさまざまなコストが発生します。金銭的コストだけでなく、社員向けのトレーニングを実施したり、サポート体制を整えたりなど、教育コストが発生するのもデメリットです。
また、ERPには多彩な機能が搭載されているため、社員がシステムを正しく使えるようになるまで時間がかかるケースが多く見られます。
ERP導入を成功させる鍵
ERP導入を成功させる鍵は以下の3つです。
- システム要件を固める
- 導入の目的・ゴールを明確にする
- 導入プロジェクトに関わる社内メンバーのリソースを確保する それぞれ解説していきます。
システム要件を固める
ERPを導入する際は、事前に自社の業務課題を明確にし、必要な機能を洗い出す必要があります。この段階で、業務フローやデータ管理方法を見直し、改善点をピックアップしましょう。これにより、導入後の運用がスムーズになります。
ERPに企業の業務を合わせるという考え方で導入を進めていけば、追加の開発費用を抑えやすくなります。事前に明確な要件を定めておくことで、システム導入後の運用効率も高まります。
導入の目的・ゴールを明確にする
次に、なぜERPを導入するのか、どの業務を改善するのかを明確にしましょう。導入目的が曖昧だと、後々の運用において方向性を失いがちです。そのため、具体的な目的を設定することが非常に重要です。
例えば、ERPを導入してある作業工数を◯%削減する、処理にかかる時間を◯日削減するなど、具体的な数値目標を立てることがポイントです。
導入プロジェクトに関わる社内メンバーのリソースを確保する
ERPの導入プロジェクトでは、通常業務と並行して作業を進める必要があるため、社内メンバーの負担が大きくなりがちです。社内メンバーが導入プロジェクトの作業に専念できるように、リソースを確保することもポイントです。
社内メンバーの負担を考慮しながら、無理のない導入計画を立てるようにしましょう。
ERP導入の成功事例
ERPはさまざまな目的で活用できるため、どのように活用するべきか迷うケースがよく見られます。ここでは、ERP導入の成功事例を3つ紹介します。ERPを有効に活用するためにも、ぜひ参考にしてください。
NECネッツエスアイグループ3社様
DXソリューション事業やネットワークインフラ事業、社会・環境ソリューション事業などを展開しているNECネッツエスアイ株式会社様。同社と株式会社ニチワ様、K&Nシステムインテグレーションズ株式会社様のグループ企業3社は、共通の基幹システムを利用するメリットを最大化するため、ZACを導入しました。
基幹システムの刷新を検討した理由は、経営情報の早期把握や業務効率化、ITガバナンス強化などを実現するためです。
ZAC導入後、業務のデジタル化により、削減された業務工数は3社合計で月間2,000時間になる見込みと語っています。また、システムを3社で統一したことにより、セキュリティ対策も共通化できました。これによりITガバナンスが強化され、内部監査業務の効率化も実現しています。共通のシステムを利用することで、企業間のコミュニケーションも活発になりました。
株式会社フラッグ様
映像・Webなどの企画・制作から配信・広告までをワンストップ提供する株式会社フラッグ様。同社は部門ごとに販売管理システムや購買・勤怠・経費管理システム、受注管理システムなどを運用していましたが、全体的な連携が考慮されていなかったため、システム間の連携が不十分な状態でした。その結果、各所で非効率な業務が発生したり、業務負荷が重くなったりといった弊害が生じていました。
そこで案件単位の原価や利益を把握しやすく、映像制作やWeb制作などのクリエイティブな業種に対応しているZACを導入。
ZAC導入後、社員一人ひとりに数字の意識が芽生え、ミドルマネジメント層においても計数管理や意思決定が自然に行われるようになりました。
株式会社丹青研究所様
ディスプレイ業界を代表する企業・株式会社丹青社のシンクタンクとして、1984年に誕生した株式会社丹青研究所様。同社は親会社が開発したシステムで案件管理や個別原価管理を実施していましたが、仕組みの老朽化が課題となっていました。また、領収書を撮影し、メールで転送を行ったり、2・3日メールの経歴を追いかけて申請漏れがないかチェックをしたりなど、非効率な業務も見られました。
業務の非効率さを改善するためにZACを導入。メール転送による申請漏れ確認の作業を改善することに成功し、経費精算の承認が2日→1日で完了できるようになりました。
また、月末から5営業日ぐらいまで月次処理が締まらない状況でしたが、ZAC導入後は3営業日までに全て締められるようになったとのことです。さらに、勤怠管理の効率化や残業時間の可視化、案件データや経営情報のリアルタイム確認などが進み、業務の効率化と迅速な意思決定なども可能になりました。
まとめ
ERPの導入によって、業務の一元管理が可能になり、リアルタイムな経営判断や内部統制の強化など、さまざまなメリットをもたらします。
しかし、ERPの選定から導入、そして実際の運用に至るまでには時間がかかり、その過程で導入・運用コストが発生します。また、既存の業務フローの変更が必要になるため、スタッフへの教育や調整が求められる点もデメリットとなります。
ERPの導入を検討する際は、事前にメリット・デメリットを把握することが重要です。目的・ゴールを明確にした上で導入を検討してください。