業務のシステム化とERPの歴史
1970~80年代、企業のシステムは、コストに見合った処理能力がなく、業務のすべてをシステムでまかなうのは困難でした。そのため、システム化の流れとしては、まず必須のシステム(会計や給与計算など)を導入し、販売・購買・在庫管理などについては、投資対効果が高い業務からシステム化していくのが一般的でした。ここではユーザー部門の業務の効率化という視点のため、重視されたのはもちろん各ユーザー"部門"の最適化です。
しかし、ERPを見ていく上では、経営者からの視点が必須です。
ERPが必要とされる具体的なケース
例えば、経営者が月の途中で営業利益の分析をするとします。ここ1週間の営業利益を分析する場合、まず「会計的」に正しい売上があるのは、当然会計システムです。
しかし、会計システムでは販売データの詳細がわかりません。そのため、売上の内訳を分析するためには会計システムと販売システムの突き合わせる必要があります。突き合わせのタイミングが月末の締処理の際だとすると、経営者は月の途中では正確な売上の分析ができません。
多くの場合はExcelやAccessなどで各システムのデータを突き合わせた上で分析を作成しているため、各システムでの処理タイミングが違い、それぞれのシステムに二重に入力していることで、データの整合性がとれていません。
そもそもERPは、企業活動において経営資源投入の最適化を図ることをコンセプトとしています。経営者は意思決定をする際、正確なデータをリアルタイムで得られないのは致命的です。自社のシステムすべてがこういった"部門"の最適化に重点を置いたシステムだったら・・・。
上で述べたユーザー"部門"最適化のシステムとは反対に、企業"全体"の最適化を目指し、経営視点での支援を目的とした業務システムが、ERPなのです。
なぜERPが普及したか
問題を抱えつつも、1980年代までのシステムは、ユーザー"部門"最適型のシステムがメインでした。その潮流を大きく変えたのが、「BPR(Business Process Reengineering)」ブームです。
このBPRをきっかけに、日本を含む世界中でERPパッケージの導入ラッシュが起こりました。1990年代欧米でBPRブームが興った当時、日本はバブルが崩壊し経済が閉塞していました。
BPRに注目した多くの企業は、全社レベルの抜本的なビジネスプロセスの構築へ向け改革を進めました。そのBPRのなかで新たなITの基盤が必要とされ、ERPが注目されました。「古いやり方ではダメだ、コストとスピードを第一に経営を刷新すれば、また陽は昇る」そんな期待から、ブームは広がりました。
一方、ITテクノロジー面でみると1990年代はメインフレームからオープンシステムに移行が進んだ時期で、「2000年問題」対策として、システムを刷新しようというニーズが現れた頃でもありました。このニーズに乗じ、欧米を中心にERPパッケージは一気に広まりました。
MRPからERPへ
ERPの起源はMRPに由来しています。MRP (material requirements planning※)とは資材所要量計画のことで、製造業において生産計画立案・統制を支援するシステムを指します。
MRPは1960~70年代、米国で急速に広まり製造業の生産管理は大きく変革しました。最初は資材発注の管理・計画のみでしたが、次第に人員や設備などの生産計画や需要予測の要素も加わる形で進化していきました。さらに決済や資産管理の機能が加わり、その機能を全社に広げるという概念でERPの基礎が生まれました。生産管理の機能があるERPの多くはMRPから派生しています。
これからの時代に求められるERP
1960年代、第三次産業(サービス業)の占める割合は3割程度でした。しかし、その3割程度だった第三次産業も、今では7割を超えるほどに増加しています。
時代の流れに伴い、今までにないスピードでビジネス環境はめまぐるしい変化を続けています。半世紀前は製造業に特化されたシステムが必要とされていました。しかし、今必要とされているのは第三次産業に特化されたシステムです。そして、その変化のスピードについていける情報システムが必要とされています。 「第三次産業に特化」し、「SaaSで常に進化し続ける」をコンセプトにしたERP、それが『ZAC』です。『ZAC』はこれからのビジネスを支えるERPとして、進化を続けます。
※1 MRP:Material Requirements Planning。企業の生産計画の達成を前提に、部品表と在庫情報から発注すべき資源の量と発注時期を割り出すもの。最適な生産管理を行うことで在庫の削減やリードタイム削減などが実現される。