IT化とは?メリットや進め方、DXとの違いを詳しく解説
IT化とは
IT(Information Technology)は、日本語で「情報技術」という意味であり、コンピューターとネットワーク技術の総称のことを指します。IT化とは、ITやデジタル技術を活用し、自社で行っているアナログ業務をデジタル業務へ移行することです。近年トレンドとなっているデジタル技術として有名なものに、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)などが挙げられます。
これまで手作業で行っていた業務をIT化し、デジタル技術で行うことで、業務効率化や人件費削減など、様々な効果が期待できます。
デジタル化・DXとの違い
IT化は、デジタル化・DXと混同されるケースが多く見られます。
デジタル化とは、アナログ情報をデジタル情報で表示することです。デジタル化したものを活用できる状態にすることが、IT化であると言えます。
DX(Digital Transformation)とは、ITやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革を起こす活動のことです。IT化は現在実行されている業務の効率化を目的としており、DXのための手段の1つと言うことができます。
デジタル化 | アナログ情報をデジタル情報で表示すること |
IT化 | アナログ業務をデジタル業務へ移行すること |
DX | ITやデジタル技術を活用し、ビジネスモデルの変革を起こす活動 |
IT化の具体例
IT化といっても、具体的にどのようなものが当てはまるのか、どこから手をつけていいかわからないという人も多いのではないでしょうか。
IT化を実現する方法は様々であり、下記のような方法が挙げられます。ぜひ参考にしてみてください。
勤怠管理システムで集計作業の負担を軽減
勤怠管理や有給・代休の申請などを紙の申請書で行う場合、集計作業を手動で行う必要があります。特に従業員が多い場合は、人の力だけで従業員の勤怠を管理するには時間が掛かり、担当者に大きな負担が掛かります。また、集計ミスや転記ミスといったヒューマンエラーも起こり得るでしょう。勤怠管理システムを導入すれば、従業員の出退勤の時刻を記録し、労働時間の集計や各種申請をIT化できるため、担当者の負担を軽減できます。
文書管理システムで円滑な情報共有を実現
紙の書類で情報共有をしている場合、書類を直接渡す必要があったり、複数人への共有がしにくかったりと、様々なデメリットがあります。また、ファイリングなどの手間も発生するため、文書管理の手間・時間も大きくなりがちです。紛失のリスクも高まり、目的の文書を探すのにも時間が掛かるでしょう。
文書管理システムを利用すれば、文書の保管や活用、廃棄といったサイクルを一元管理できます。書類をクラウド上で簡単に共有できるファイル共有機能もあります。さらに、アクセス権限を設定することで、関係者のみに情報共有することも可能です。また、検索機能を利用し、必要な文書・データをすぐに見つけることができるので、業務の効率化にもつながります。
IT化の一例をご紹介しましたが、自社の課題や目的に合わせてIT化を進めることが重要です。コストや得られる効果を比較して、できる範囲からIT化を検討するといいでしょう。
IT化のメリット
この章では、IT化を進めることで企業がどのようなメリットを得られるかを詳しく解説します。
業務の生産性を高められる
IT化を推進すれば、該当する業務を自動化でき、業務の効率化が可能になります。特に、これまで手作業で行っていた集計作業をIT化すれば、作業時間の大幅な削減が期待でき、企業全体の生産性向上に繋がるでしょう。
また、業務効率化を実現できれば、少ない人数でも業務を回せるようになります。必要最低限の人数で業務を進められるようになるため、人手不足の課題にも対処できるでしょう。
柔軟な働き方を実現できる
近年、労働人口の減少傾向により、多くの企業で労働人口の確保や生産性向上が大きな課題となっています。そのような背景もあり、従業員に対してより働きやすい環境を提供するために、テレワークやリモートワークといった新しい働き方を採用する企業が増加しました。
自宅や外出先などでもオフィスと近い環境で業務を行うためには、ITが欠かせません。場所を選ばずに働ける環境を整備できれば、人材の流出を防いだり、新たな人材を確保しやすくなったりといったメリットが生まれるでしょう。
ビジネス拡大のチャンスを増やせる
IT化によって、より広範囲でのビジネスも可能になりました。例えば、これまで限られた領域や地域のみでビジネスを行っていた企業も多いでしょう。近年ではグローバル化が進行している背景もあり、海外企業とも繋がりやすくなりました。国内だけでなく、海外企業とも取引できるようになれば、より大きな市場規模でビジネスを行える可能性が生まれます。
一方、総務省の「令和3年「情報通信に関する現状報告」(*1)」によると、日本のICT(ここではITと同義)利活用等は後れをとっており、国際的にも人材やデータ分析等への評価は低いとされています。デジタル競争力や電子政府に関する「国際指標」の順位は、全63か国中27位となっています。(2020年時点)
仮にこのままの状態が続けば、世界的な競争力を失ってしまうリスクもあるでしょう。そうならないためにも、IT化を進め、ビジネスを拡大していくことが求められます。
社内のデータを適切に管理・活用できる
例えば、アナログな方法でデータを管理している場合、必要な情報を見つけるまでに時間が掛かったり、紙の手渡しによって共有するまで時間が掛かったりなど、様々なデメリットがあります。
IT化が実現すれば、点在している社内データを一元管理・検索できるようになります。場所や時間を選ばずに必要なデータがすぐに見つけられ、経営判断のスピードアップにつながったり、データから顧客ニーズを把握したりなど、様々なメリットを得られるでしょう。
IT化のデメリット
IT化を進めることで様々なメリットを得られますが、デメリットもいくつか存在します。IT化の主なデメリットは下記の3点です。
費用が発生する
IT化の推進には、ITツールの導入費用やランニングコスト、機材の購入費用などが発生します。IT化による効果を得られるようになるには時間が掛かるため、一時的にコスト負担が大きくなる点は認識しておかなければなりません。ITツールの中には、比較的安価で導入できるものもあるため、ミニマムスタートでIT化を進めることも一手です。
ITに精通した人材が必要
IT化を推進するためには、システム・ツール導入前の準備段階から導入後の運用までを率いるIT人材の確保が必要です。IT人材は社員がスムーズに業務を進められるように、システムやツールの使い方を社員全体に広める役割も担います。従業員が多い場合は、社内に情報システム部門をおく必要があるでしょう。
社内で人材を確保できない場合は、アウトソーシングするという方法もあります。しかし、アウトソーシングする場合にも、自社でどのようにシステム・ツールを活用していくかの判断は、企業側で行わなければなりません。そのため、IT化においてIT知識をもつ人材の確保は欠かせないと言えるでしょう。
適切なセキュリティ対策を講じる必要がある
業務のIT化に伴い、ネットワーク上でデータをやり取りする機会が増え、どうしても情報漏洩のリスクが高まります。デジタルデータの持ち出しによって、機密情報が漏洩してしまう事件も実際に発生しています。そのような事故を防ぐためにも、新たなセキュリティ対策を講じる必要があるでしょう。セキュリティソフトの導入や、アカウント・パスワードの管理など、適切なセキュリティ対策が必要になる点は認識しておきましょう。
IT化の進め方
IT化を適切に進めるためには、下記の流れで行う必要があります。
IT化の目的を明確にする
まずは、 何のためにIT化を行うのか、ゴールを明確にすることから決めていきましょう。例えば、以下のように具体的なゴールを決めておけば、IT化すべき業務や必要なツールなども明確になります。
- ゴール=残業を減らしたい
- IT化する業務=時間がかかっている経理業務
- 必要なツール=財務・経理系のシステム
ゴールが不明瞭なまま、ツール選定・導入を行ってしまうと、現場においてもツールを扱いきれず、業務の効率化が叶わないという結果になってしまう恐れがあるため注意しましょう。
IT化する業務・範囲を決める
IT化する目的(ゴール)を明確にしたら、IT化する業務・範囲を決めていきましょう。全ての業務をIT化することは現実的に難しいです。そのため、効果の出やすさや、利益に対しての影響度などを考慮した上で、どの業務からIT化するか優先度を決めていくと良いでしょう。
必要なツールやサービスの導入
IT化する範囲や順序を決めたら、必要なツール・サービスの導入を検討していきます。
ツール・サービスの初期費用や操作感、サポート体制などを踏まえて、自社に適したツールを選定していきましょう。無料トライアルをやデモを利用し、一度操作感などを確かめておくと良いでしょう。導入後に「操作しにくい」といったリスクを軽減できます。
運用開始・効果検証
ITツールの導入後は、期待していた効果が得られているかを定期的に検証するようにしましょう。仮に期待していた効果が出ていない場合、何が原因なのかを検証して改善する必要があります。
スムーズなIT化のために
この章では、スムーズなIT化のために必要なポイントを解説します。
身近なところから進める
IT化をスムーズに進めるためには、毎日や毎月行うような、身近な業務から着手するのがおすすめです。常日頃深く携わっている業務であれば、どのような点が課題なのか、どのような状態になれば成功なのか、判断しやすいためです。また、その業務に携わる頻度が高ければ高いほど、IT化による効果も大きくなると期待できます。
まずは、普段行っている業務の中で時間が掛かっている業務はないのかを探し、改善できそうかを検討すると良いでしょう。
補助金制度を検討する
ITツールの導入費用を抑えるためには、「IT導入補助金」などの制度を積極的に活用したいところです。IT導入補助金とは、ITツールを導入する際の経費の一部が補助される制度のことです。IT導入補助金は、業務効率化・生産性の向上を目的としており、申請枠ごとに申請条件や補助額・補助率が異なります。
申請する場合は、自社や選定したツールが制度の対象であるか、公募の期間であるかをよく確認しましょう。また、補助金を受けるためには、申請して採択される必要があります。IT導入補助金は、必ず採択されるとは限らないため注意が必要です。
詳細は「IT導入補助金最新情報」をご覧ください。
このような補助金制度を使うことで、ツール導入のハードルを下げることができるでしょう。
システム導入でIT化に成功した事例
IT化を進めるためには、自社に適したシステムやツールを導入することが重要です。ここでは、本ブログを運営する株式会社オロのクラウドERP「ZAC」を導入し、IT化に成功した事例を2つ紹介します。
一般社団法人電線総合技術センター様
電線・ケーブルに関する事業を行っている一般社団法人電線総合技術センター様。中長期的な組織ビジョン策定のために、過去5年間の財務データ分析を行う機会があったと言います。その際、データが複数のシステムに分散し、さらにそれぞれの運用方法が属人化していたため、データ自体の精度が低いという問題が発覚しました。
そこでIT化の手段としてZACを導入し、バラバラだったシステムを一つに統合し、組織が抱えている案件を一目で把握できるようになりました。さらに、売上予測データを活用することで、予算計画や経営分析にも活用できるようになったと言います。
株式会社ピーエーシー様
総合広告会社である株式会社ピーエーシー様では、オフィスコンピューター(オフコン)が老朽化し、業務が非効率になってしまっている点が課題となっていたと言います。売上見込・利益予測などは、営業個人がExcelで属人的に管理し、実績はオフコンに入力している状態であったため、営業部全体の数字が把握できなかったのです。また、売上実績などの入力ミスや漏れなども発生していました。さらに、システム自体に申請・承認機能が組み込まれていないため、未承認の売り上げ計上なども発生してたそうです。
ZAC導入後は、利益率変更などの営業案件の情報共有がスムーズに行えるようになります。その結果、社内のマネジメントレベルが向上。さらに、外出先からでもシステムにアクセスできるようになり、営業社員が業務時間を有効に活用できるようにもなりました。
まとめ
IT化を進めることで、業務効率化や生産性向上を実現できます。IT化によって得られるメリットは様々ですが、ITツールの導入費用が掛かる点や教育コストが発生する点は認識しておかなければなりません。
また事例で紹介したように、元々システムやツールなどのITを利用していても、老朽化や業務の実態にそぐわないシステムになってしまっていることで、IT化が上手くいっていないというケースがあるのです。
IT化をスムーズに進めるためには、日常的で身近な業務から着手するのがおすすめです。普段から深く携わっている業務であれば、課題点を把握しやすく、適切なツールも選びやすくなります。日常業務でアナログな作業はないか、時間が掛かっている作業はないのかなどを探し、IT化を進めていきましょう。