【ベンダー監修】システム導入前の検討事項。導入を成功に導くには
企業にとってシステム導入はメリットを得られる一方、費用も労力もかかる一大プロジェクトであるため、安易に決断できるものではありません。導入プロジェクトを適切に進められず、失敗に終わってしまう可能性も大いにあります。だからこそ、導入前の検討フェーズが重要です。
自社で新たなシステムを導入することとなり、システム選定から現場での定着まで失敗したくないと考えながらも、何から手をつければいいのか迷っている担当者も多いでしょう。
そこで本記事では、これまでに累計950社以上のシステム導入を行ってきた開発ベンダーである株式会社オロが、システムを導入する前に検討しておくべきことや、システム導入に成功した事例を紹介します。これからシステム導入を考えている方はぜひ参考にしてください。
システム導入で躓かないために
システムを導入するだけで、すぐに業務効率化につながったり、課題解決できたりするわけではありません。事前準備が十分でないまま導入を進めると、導入したものの使われない、もしくは一部の社員しか使っていないシステムになり、せっかくかけたコストが無駄になってしまう可能性もあります。
そのような事態を防ぐには、「システムによって何を実現するのか」をあらかじめ明確にしておくことが重要です。その他にも、システム導入前によく検討しておくべき事項がいくつかあります。費用や時間、労力といったあらゆる社内のリソースが必要なシステム導入を、スムーズに成功させるためのポイントや必要な準備事項を紹介します。
システム導入前によく検討すべき4つの項目
システム導入前に検討すべきことは、主に以下の4つの項目です。まずはこれらの項目を検討するところから始めてみましょう。
①業務フローの現状把握と棚卸
まずは、自社の業務フローを見える化することが大切です。現行の業務手順やデータフロー、業務に関連する部門とそれぞれの役割を洗い出して整理しておきましょう。
業務フローを棚卸しすることによって、業務効率を下げているボトルネックを見つけやすくなり、自社の課題やシステムで置き換えるべき範囲がより明確になります。見えない業務がボトルネックとなっている可能性もあるため、一人ひとりの業務についてヒアリングし、フローを細かく棚卸することがポイントです。
②システム導入の目的・ゴールを明確にする
システムの導入は、目的ではなく手段です。導入を目的にしてしまうと、せっかく導入したシステムが使われないままとなってしまう恐れがあります。導入することで何を実現したいのか、目的を明確にしておくことがポイントになります。
具体的には、以下のような数値目標を立てて、その実現を目的とするのが有効です。
- 帳票加工にかかっている作業工数を◯%削減する
- 月次処理にかかる日数を◯日削減する
- 手作業で行っている業務◯件をシステムで自動化する
具体的な数値を立てることで、システムに必要な要件が明確になるだけでなく、導入後の効果測定が可能となります。
目的を定めるには、自社で抱えている課題や改善点が明確でなければなりません。その課題を解決するための手段がシステム導入であり、導入することでどのようなメリットが生じるのかを社内に共有することが重要です。
③システムで置き換える業務範囲を明確にする
システムは有用なツールであるものの万能ではありません。システムで対応できる範囲には限りがあることを理解したうえで、システム化する業務のスコープ(範囲)を明確にしておく必要があります。
販売管理など一業務のプロセス全体を置き換えるのか、あるいは、データ分析など一工程のみを置き換えるのか、事前に範囲を決めましょう。範囲を明確にしていないと、システム導入のフェーズに進んでから範囲がどんどん広がり、当初の目的からブレてしまう可能性があります。
④導入プロジェクトに参加するメンバーのリソース確保・調整
システム導入においては、一つのプロジェクトとしてメンバーを選定して進めていくことが一般的です。導入プロジェクトには誰が参画するべきか、また導入期間にその人員のリソースを確保できるかといった検討や調整を社内で行います。
また、システム化する業務の関連部門から協力を得る必要もあるため、他部門との連携体制も調整しておかなければなりません。あらかじめ、導入プロジェクトにどれくらいの期間を使うのか、大まかな工程を計画し、その計画をもとに関わるメンバーのリソース確保・調整を行うことが望ましいでしょう。
システム導入を成功に導くために重要なこと
上記の4項目を事前にしっかり検討し、それぞれが明確になったところでようやくシステム導入プロジェクトが動き出します。では事前検討が終わったら次に何をすべきなのか、導入プロジェクトのメンバーが実施すべきことや意識すべきことを紹介します。
自社・導入目的に合ったシステムを選ぶ
システム導入を成功させるには、システム選びが重要です。自社の業種・業態に合うシステムであることや、そのシステムで導入目的を果たせることが必須となります。
予算や納期がオーバーしないことも大切です。コストや導入期間の点でも適切なシステムであるかを評価しましょう。また、社内で現在使用している他のシステムと連携できるシステムかどうかも確認します。
さらに、システムの仕様や価格だけでなく、ベンダー選びもシステム導入においては重要です。どのベンダーを選ぶべきかお悩みの方は、こちらの記事を参考にしてください。
社内メンバーで主体的に取り組む
システム導入は、自社の業務改善、ひいては利益向上のための手段であることをプロジェクトメンバー全員が理解したうえで、主体的に取り組むことが重要です。
システムを提供するベンダーにすべてを任せきりにしてしまっては、本当に達成したいことが叶わなかったり必要な機能が不足してしまったりと、システム導入がうまくいかない要因となりえます。ベンダーの協力を得ながらも、自社主体で仕様を決めて導入していくという意識がポイントです。
導入後の教育期間を設ける
システム導入後、社内で活用するためには目的と使い方の周知徹底が重要です。まず、何のために導入したシステムなのかを社内の共通認識とし、利用方法の教育期間を作る必要があります。
業務上の使い方だけでなく、他の業務との連携フローやトラブルが起きた際の窓口についての共有も欠かせません。システム導入計画の一環として、いつでも基本操作の確認ができるようマニュアルを準備することも忘れないようにしましょう。
システム導入の流れ
システム導入の失敗を防ぐポイントは、あらかじめ導入の流れを把握し、計画を立案することです。導入の流れは製品やベンダーによって異なるため、選定時に詳しく聞いておきましょう。
ここでは、本ブログを運営している株式会社オロが提供するクラウドERP「ZAC」の導入フローを元に、パッケージ型システム導入の流れの一例を解説します。システムベンダーと打ち合わせ検討を始めるタイミングから利用開始まで、どのような流れを辿ることになるのか、参考にしてください。
提案・ヒアリング
一般的に、情報収集を行うフェーズです。本格的な仕様や費用を詰める前段階で、市場にどのようなプロダクトがあるかを把握することが主な目的です。
解決すべき課題や業務の特性についてシステムベンダーからヒアリングを受け、それをもとに、提案を受け予算感やスケジュール、解決できる課題の範囲や有効性といった解像度を上げていきます。実際の画面やどのように操作できるかデモンストレーションを見ることもできるため、導入後の利用イメージを確認しておきましょう。
そのうえで費用対効果や他製品との違い、社内システムとの連携性も把握し、どのシステムを導入すべきか検討します。
FIT&GAP分析
次に、どの業務をシステムに置き換えるのか、どのような機能が必要かなどを明確にし、仕様を定義します。ここで定義した要件に基づいて導入を進めるため、プロジェクト成功の可否を左右する重要なフェーズとなります。
必要な要件を定義するために行われるのがFIT&GAP分析です。FIT&GAP分析では、プロダクトが持つ機能と自社の業務がどの程度あっているのか、もしくは合っていないかを調査し、合っていない部分があればどのように対応していくかを検討します。パッケージ型システムのようなトライアル環境を利用できるようなプロダクトの場合は、FIT&GAP分析を行うことで、より納得感をもった製品選定が可能です。
FIT&GAP分析をもとに、以下のような項目を定義します。
- 現行業務のプロセス、課題とその解決方法
- 自社とベンダーとの役割分担、担当するタスク
- システム導入後の新業務プロセス
利用機能の決定・契約締結
パッケージ型システムの場合、ベンダーが用意している機能のなかから利用するものを選ぶ必要があります。定義した要件に沿って、課題解決や業務置き換えに必要な機能を選び、決定したら契約を締結します。
利用すべき機能については、ベンダー側から説明を受けて導入目的に沿ったものを選ぶことが重要です。
キックオフ
契約を締結したら、導入プロジェクトのメンバーとベンダー間でキックオフを開催します。導入スケジュールや手順、仕様、お互いが実施すべきタスクなどを共有し、認識を合わせましょう。また、改めてプロジェクトの目的を共有し、論点が出てきた際に立ち帰ることのできるお題目としての共通認識を持つことも重要です。
プロジェクトメンバー以外に、システム化する業務に関連する部署のメンバーも参加することをおすすめします。導入前から認識を合わせておくことで、導入後のトラブルを防げるでしょう。
詳細要件確認・運用設計
自社の業務フローに合わせた細かな要件を確認し、必要に応じて機能やパラメーターの調整を行います。また、運用を見越して、画面を操作しながらの操作性確認や、機能の追加・削除といった調整が必要です。
ここでは、実際にシステムを利用するメンバーにも協力してもらいましょう。操作しながら要望を織り込んでいくことで、運用フェーズでの認識の齟齬をなくせます。
社内説明会・並行稼働
導入するシステムについて社内説明会を行い、システム導入の目的や利用方法の周知徹底を行いましょう。説明すべき内容は、利用開始のスケジュールやこれまでとの変更点、基本的な使い方などです。必要に応じてベンダーにも参画してもらい、社員からの疑問を払拭します。
また、移行期間として既存システムと同時に新システムを稼働させる場合も、このタイミングで期間を設けます。並行稼働させて、困りごとを吸い上げたり操作の不明点を解消したりすることが大切です。
利用開始
並行稼働や説明会などが完了したら、いよいよ本格的に利用開始します。使い始めはトラブルも多いため、ベンダーのサポートが必須です。どの程度の期間サポートを受けられるのかあらかじめ確認し、社内に周知しておきましょう。
スムーズなシステム導入を実現した事例
ここからは、クラウド型ERP「ZAC」を実際に導入したケースについて紹介します。スムーズなシステム導入を実現するためにどのような工夫をしていたのか、成功事例としてぜひ参考にしてください。
株式会社ピーエスシー様
システム導入からアプリケーション開発、デジタルマーケティングまで、ICTサービスを主軸として企業のDX支援を行っている株式会社ピーエスシー様。従来のシステムが保守期限を迎えたことから、システムリプレイスを検討していました。
もともとUIの面で従業員から不満の声があり、クラウド型で直感的に操作できるシステムを導入したいという思いもあったそうです。そこで、ノンカスタマイズで運用でき、シンプルで分かりやすいシステムであることからZAC導入を決めたといいます。
導入時には、自社が何を実現させたいか優先順位をつけることによって、スムーズな進行が可能となりました。導入までの打ち合わせでは、事前に操作説明動画によって理解を深めて臨み、持ち帰り事項を発生させずその場で意思決定を行ったことでスピーディな導入を実現。ベンダーのサポートを受けることで、プロジェクトメンバーは運用方法の検討に注力できたといいます。
株式会社シティアスコム様
アプリケーションの開発に核を置きながら、ネットワーク設計やシステム保守・運用など、さまざまなソリューションを提供する株式会社シティアスコム様。同社も旧システムの保守期限が迫っていたことをきっかけにシステムリプレイスプロジェクトを発足させました。
旧システムでは、度重なるカスタマイズによってパフォーマンスが低下したり、バージョンアップで大幅なコスト増の懸念が生じていたりといった課題があったそうです。そこで新システムでは、クラウドかつノンカスタマイズという2点を重視しました。
同社では、新システムによる業務フローが各部門に支障を与えないように、各部門との認識共有を徹底しながら進めたことが、スムーズな導入につながったといいます。
プロジェクトマネージャーの配下に、プロジェクト専任の事務局と代表的な業務ごとの分科会を設置し、事務局メンバーには大規模プロジェクトマネジメント経験者をアサイン。導入体制を強化したことで、プロジェクトの推進力が増した事例です。
システム導入を成功させるには事前準備が重要
これから新たにシステムを導入する場合や、既存システムからリプレイスを検討している場合は、どれだけ適切な事前準備ができるかが重要です。まずは現状把握と課題の明確化、そして業務整理を行い、導入時期を明確にします。そのうえで、課題と業務フローに応じて必要なシステムや機能の選定を行いましょう。
システム導入の際、本記事で紹介した4つの検討事項や意識すべきポイントを参考にプロジェクトを進めることで、失敗のリスクを防げるでしょう。導入フェーズの進め方で迷っている場合は、「失敗しないERP導入」の記事も参考にしてみてください。
まずは、下記よりダウンロードできる「ERP導入で失敗しないために知っておきたいチェックリスト」をもとに、システム導入の事前準備から進めてみてはいかがでしょうか。