BPRとERP
「業務のシステム化とERPの歴史」にあるBPR(Business Process Reengineering)ブームを受け、1990年代半ば、日本国内においてERPは、BPRと対で語られました。当時ERPはBPRを実践するための手段の1つとして注目され、瞬く間に普及しました。しかし、対で語られたBPRとERPですが、本質的には異なっています。
ERPは基本的に、既存のビジネスプロセスをベストプラクティスと比較し改善する考えです。
一方、BPRは簡単に言うと既存のビジネスプロセスをゼロから再構築する考え方です。
ERPは成功企業のベストプラクティスを自社に比較・活用することを目的としています。実際、90年代にいち早くERPを導入した多くの企業の目的は、グローバルスタンダード(後のベストプラクティス)をビジネスプロセスに取り入れることでした。ERPを導入する際には、フィットギャップ分析を行い、改善・修正を行います。この時点でBPRの概念から乖離しています。
既存のシステムに代えてERPパッケージを導入することによって、ベストプラクティスに学び、そして、業務効率化、コスト削減など、ERPの様々なメリットを享受できました。しかし、所詮はそれだけでした。ビジネスプロセスを改善しただけなので収益の拡大にはつながらなかったのです。結局のところ、システムから得たデータをもとに意思決定を行うのは、「システム」ではなく、活かすも殺すも「人間」次第なのです。
ERPを最大限活かすために
ERPそのものは、あくまで基幹業務を支援するシステムに過ぎません。計画・管理など経営のレベルを向上させるには、ERPにより蓄積・管理されたデータをいかにして有効活用できるかに懸かっています。そのために、業務・組織上の仕組、関係者の情報リテラシー、経営者の分析能力及び判断力が不可欠です。