請求業務を効率化するには?ボトルネック解消の具体的な手法を解説

2024/10/04公開

企業における経理業務のなかでも、請求業務は特に負担が大きいと言われています。資金繰りにかかわる重要な業務であるうえ、社内でかかわる人数もやるべきことも多く、ミスが許されない業務です。専門性の高さから属人的になりやすく、課題感を感じている企業も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、請求業務の基本から正確かつ効率的な業務遂行を妨げている課題とその解決策までを紹介します。

請求業務をシステム化する際のチェックポイントも伝えるため、システムによる効率化を図りたいと考えている方は参考にしてください。

請求業務が複雑化している背景

請求業務とは、企業の販売活動にまつわるお金のやりとり全般を指します。具体的な業務は、商品・サービス販売後の請求書発行や、請求書に基づいた入金の確認などです。

請求業務は月末などの決まったタイミングにまとめて行います。金額・社内担当者・宛先が一つひとつ異なるのでミスが生じやすい一方、企業の売上に直結する重要な数字であるためミスが許されません。

取引先や販売数、請求頻度によっては、1人で多くの請求業務を抱えることになるため、肉体的にも精神的にも負担が大きい業務です。さらに近年は、インボイス対応が必要になったことで、フォーマットの変更や適格請求書発行事業者の登録番号の確認、免税事業者向けの事務処理といった対応事項が増えています。

また、サブスクビジネス自体も増加傾向です。サブスクビジネスでは、顧客の契約状況を随時把握し、変更内容も適用した請求書を毎月作成しなければなりません。このような背景から、請求業務が複雑化しており、課題を感じる企業も増えているのです。

請求業務の流れ

実際の請求業務はどのような流れで行われているのか、一般的なフローを紹介します。請求書を発行するまでの準備や、入金確認後のプロセスも確認しておきましょう。

請求・入金スケジュールの確認

まずは、請求日と入金日を正確に把握し、いつまでに請求書を発行すべきか、入金締め切り日をいつに設定すべきかなどを確認します。

一般的に請求の方法は、締め日に一括で請求を行う「締め請求」と、取引のたびに請求を行う「都度請求」の2つです。どちらの方法で請求するか確認しておきましょう。

請求金額の算出・決定

請求日と同様に重要なのが、請求金額です。この数字が間違っていると、企業の売上額に影響を及ぼすうえ、取引先との信頼関係を失くしかねません。取引内容や単価、数量、税額などをしっかり確認したうえで、請求金額を決定します。

請求書の作成・発行

請求・入金スケジュールや金額を確定したあと、請求書を作成します。以下のような項目を記載するのが一般的です。

  • 請求元情報(社名、住所、部署名、担当者名)
  • 請求先情報(社名、住所、部署名、担当者名)
  • 取引内容(商品・サービス名、単価、数量)
  • 請求金額
  • 支払い期日
  • 振込方法、振込先


取引の証明となるため、取引内容も具体的に記載することが大切です。作成後は、社内のルールに則って承認を得て発行します。

請求書の送付

発行した請求書は、請求先へ送付します。紙に印刷して郵送する場合や、PDF化しメールで送る場合などがあるので、自社や取引先のルールに従って送付しましょう。送る際は、郵送であれメールであれ、請求書の送付先を間違えないよう細心の注意が必要です。

入金確認

請求書送付後は、請求した金額が支払い期日までに振り込まれているか確認します。支払い期日当日に振り込まれることが多いため、期日が月末であれば翌月の月初に確認するなど、確認タイミングを決めておくのがおすすめです。

もし入金が確認できなかったり金額が異なったりするようであれば、取引先に連絡して確認する必要があります。

消込処理

口座への入金が確認できたら、入金されたことを会計データに入力し、帳簿に計上した売掛金のデータを削除します。これが消込処理です。消込処理を行う際は、消し込む案件を間違えないよう注意しましょう。

消込処理を行わなければ、後から帳簿の数字が合わず、確認に時間がかかってしまうので、都度実施することが大切です。

書類の保管

請求書は取引を証明する書類であるため、適切に保管する必要があります。保管期限は、法人税法の「帳簿書類等の保存期間」に則って7年間です。(*1)

紙でもらった請求書であれば、事業年度や月がわかるようにファイリングします。電子帳簿保存法に対応する場合は、スキャンデータもしくはオリジナルの電子データを電子保存しなければなりません。(*2)

請求書を受領する際の流れ

ここまでは請求書を発行する側の流れを解説しましたが、請求書を受領する側になることもあるでしょう。請求書を受領する際は、以下のような流れが一般的です。

  • 請求書発行の依頼
  • 請求書の受取
  • 内容の確認
  • 支払いの実行
  • 請求書の保管

買い手が受け取った請求書は「受取請求書」と言われています。

請求業務でよくある課題

ここからは請求業務が煩雑で負担の大きいものとなっている要因を解説します。 請求業務において、ボトルネックが生じやすい部分について見ていきましょう。

計算や発行に時間がかかる

請求業務は利益・キャッシュに直結し、会社の信用にもかかわる重要な業務です。正確な金額の計算が必要なだけでなく、請求タイミングや請求書の書式を取引先やクライアントの要望に合わせる手間もあり、経理業務のなかでも工数がかかるタスクです。

企業によっては営業が請求書の発行を担当するケースもあり、本来の営業活動に時間がかけられなくなってしまうケースもあります。

請求金額にズレが発生

複数の案件があったり案件数が多かったりすることで、請求金額の計算が煩雑になり、請求金額のミスにつながりかねません。

さらに、部門ごとバラバラに数字を管理していることで、営業の把握している数値や営業個人が作成した見積書と経理間の数字のズレが発生しがちです。請求においてはズレが許されないため、正確な数値を特定して関係者に確認しなければなりません。

未回収金のリスク

請求漏れや入金確認遅れによって、未回収金のリスクが高まることも課題です。すでに発行された請求書から入金確認をすることはできても、請求書が発行されていなければ入金漏れに気づけません

請求書作成から入金確認まで、ダブルチェックを実施しても、形骸化して漏れが生じる恐れもあります。

属人化のリスク

請求業務は専門性が高く、属人化しやすいと言われています。請求業務を紙ベースで行っている場合や、データ管理していたとしても管理体制が整備されていない場合、請求担当者以外が進捗状況を確認できず、遅れや漏れの発生につながります。

書類の管理が煩雑

請求書などを紙の書類で管理している場合、保管するための手間や保管場所が必要になります。保管期間も7年と長いため、取引の量や取引先の数によっては膨大な量になってしまうでしょう。過去の書類を閲覧する際にも、該当書類を探すのに時間がかかってしまいます。

請求業務を効率化するためにまず着手したいこと

煩雑で手間がかかる請求業務は、効率化したいと考えている人も多いはずです。効率化を考える際、まずは以下の3つに着手してみてください。

請求業務のフローを洗い出す

まず、現状の請求業務がどのようなフローで行われているか洗い出すことが重要です。一般的なフローは上述の通りですが、企業によってそれぞれ違いがあるため、実際の業務を行いながらフローを書き出してみてください。関わる部署や担当者、ざっくりとそれぞれの工程にかかる時間も洗い出しておきましょう。

課題や削減できるフロー、自動化できる作業の特定

フローとそれぞれの工程にかかる時間、関連部署などを洗い出したら、どこに課題があるのかを特定していきます。特に時間がかかってしまっている作業、削減できそうなフローや短縮できる工程、自動化可能な作業などを見つけていきましょう。

長年、請求業務に関わっている場合には、工程ごとのヒヤリハットやミスの発生を振り返り、負担・課題となっている作業を明確にすることも重要です。改善することで効率化が見込める工程を特定し、どこに着手すべきか決定します。

効率化の手法や施策の制定する

どの工程に着手するか決定したら、具体的にどのような効率化手法を取るのか、施策を検討します。効率化にはいくつかのアイデアが存在するため、それを次の見出しで詳しく解説します。着手する工程に適した施策を実施することが大切です。

請求業務を効率化する手法5選

請求業務を効率化するにあたって、具体的な手法を紹介します。どの工程に着手するか決めたあと、どのような手法で効率化していくのかを考える際の参考にしてください。

①請求書フォーマットの統一

請求書を作成する際に、各担当者がバラバラのレイアウトで請求書を作成している場合、どこに何が書かれているか統一されておらず、必要事項が記載されていない請求書が発行されるリスクがあります

特に企業によっては、2023年から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が義務化されたことにより、請求書に記載すべき事項が決まっているため、うっかりミスがないように、社内で発行するフォーマットは統一し、個人で改変できないように用意することが肝要です。

②権限管理の徹底

請求書を発行できる担当者と閲覧のみの担当者を分け、誤った請求書が発行されにくい体制にすることで、ミスの低減とともに業務効率化が図れます。権限管理を徹底することによって、請求情報を一元化でき、各部門が最新情報の共通認識を持てる点がメリットです。

一元化された最新情報を把握できれば、見積時と異なった請求額だった場合や請求書が発行されたかどうかなどの社内の進捗確認にも手間がかからなくなります。

③ペーパーレス化

請求業務をペーパーレス化することも、効率化には有効です。印刷や封入、郵送の手間をなくせます。誤った内容の請求書を封入することや郵送し忘れてしまうなどのリスクも減らせます。データであれば物理的な保管場所も不要で、過去分の検索もしやすくなります。

請求書を受け取る際にPDFを指定したり、指定URLから請求書を直接DLしてもらう形にするなど、取引先とも連携してペーパーレスを進めていくことがポイントです。

④アウトソーシングの活用

請求業務をアウトソーシングすることもひとつの手段です。アウトソーシングの利用料はかかるものの、社内の業務効率化は図れます。専門性の高い外部に依頼したほうが業務スピードも速い可能性があり、正確な業務遂行が期待できます

⑤ツールやシステムの導入

Excelや紙ベースでの管理を行なっていた場合、一気に効率化を図れるのがツールやシステムの導入です。請求管理ができるシステムやツールを導入することで、請求書のフォーマットの統一、権限管理、ペーパーレス化を実現できるうえ、会計システムと連携して会計処理まで効率化できるケースもあります。

請求業務に特化した専用ツールの導入はもちろん、プロジェクト・案件ベースで業務を行う企業の場合は、プロジェクト管理と請求業務を一元的に管理できるERPもおすすめです。見積り作成から請求書発行までを一気通貫で行えたり、複数の案件を束ねた合計請求書の発行ができたりなど、より効率的に業務を進行できます。

システムで請求業務を行うメリット

上述したように、請求業務全体の効率化にはツールやシステムの導入が有効です。そこで、請求業務をシステム化するとどのようなメリットが得られるのか詳しく解説していきます。

請求書の作成・発行がスムーズ

システムに入力した情報や、すでにシステム内にある顧客情報から、自動で請求書を作成できる点が大きなメリットです。システム上からそのまま顧客に請求書データを送付できる機能を持つものもあるため、送付の手間も省けます。

多くの場合、システム内で金額変更時の申請・承認経路の設定が可能です。金額の間違いが起こりにくく、「誰がいつ承認をした見積の金額なのか」「最新の請求業金額はいくらなのか」をすぐに把握でき発行までの流れがスムーズです。

申請・承認のログ保存ができ、検索も簡単

システム内で請求書の申請・承認を行なったら、メール通知やログを保存できるため、振り返りや進捗の確認にも役立ちます。承認経路の変更も柔軟にできるシステムが多く、金額別や担当別などで複数の経路を用意しておくことも可能です。

残されたログはすべて検索ができるため、誰がいつ利用したのかを確認できます。システムによっては内部統制の強化にもつながるため、自社の状況に応じて選びましょう。

ヒューマンエラーを防ぎやすい

システムであれば手計算が不要なうえ、誤って二重入力したり書き換えてしまったりといったヒューマンエラーの発生を低減できます。その請求書が発行済みか未発行なのかをシステム上で見分けられるものもあるので、二重請求のミスも防げます。

そのほかにも会計システムと連携し、数字が異なればエラーを発生させるといったチェック機能がついているものもあります。

人員コストの削減

システムで請求業務を効率化できれば、これまでかけていた工数を削減でき、少ない人員や工数で業務を回すことも可能です。締め日に集中していた負荷を軽減し、その分の労力を他の業務に回すこともできるようになります。

締め日や支払い日の抜け漏れを防止

システムなら締め日や支払い日の管理がしやすく、請求業務が現在どのステータスにあるかをクライアントや社内担当者ごとに確認できます。入力漏れや期限遅れの案件にアラートを表示させるなど、抜け漏れを防げる機能を備えている点も特徴です。

請求システム選定のポイント

請求業務を効率化してくれるシステムは、さまざまなベンダーから提供されています。どのシステムを選ぶべきか迷っている場合は、以下の選定ポイントに注目するのがおすすめです。

自社の請求業務のフローに合っているか

企業やプロジェクトによっては、事前に着手金が発生したり、長期案件を分割で請求したりするケースがあります。自社で前受請求や分割請求、合計請求といった特殊な請求方法が発生する場合、それらに対応可能かどうかで請求業務がスムーズに行えるかどうかが左右されるほど複雑なのです。

また、サブスクサービスを提供している場合は請求業務が特殊かつ煩雑になりがちです。自社のサブスクサービスの請求に対応したシステムを選ぶ必要があります。

法改正にも対応できるか

近年で言えばインボイス制度や電子帳簿保存法が施行されたように、請求業務は法改正の影響を受けやすいものです。そのため、今後も会計にまつわる法改正が実施された際、改正内容に対応できる柔軟性を持ったシステムかどうかがポイントです。過去の法改正では「どのような対応になったのか」「改修費用は必要だったのか」は、確認しておくと良いでしょう。

クラウドシステムであれば、アップデートで改正に対応するケースが多いのでおすすめだと言えます。

電子申請・承認機能はあるか

請求業務のフローでは、社内の決裁者の承認を必須としている企業が多く存在します。そのため、申請内容ごとに承認経路を設定したり、どの担当者まで承認が行われているか把握できたりするシステムであれば、業務を円滑に進められます。

決裁者の外出が多い場合には、スマホから承認するシステムを利用することで承認のスピードアップにつながります。

書類を適切に保管できるか

法人であれば原則、請求書の控えを7年間保管しなければなりません。さらに、電子帳簿保存法に対応し、電子データを適切に保管・管理できるシステムであることも重要です。関連法律に準拠して、書類を適切に保管できるかどうか確認しましょう。

セキュリティは保たれているか

請求業務では、クライアントからの売上金額や購入金額といった会社にとって重要な情報も扱うため、セキュリティレベルがどの程度なのかも確認が必要です。リスクを把握したうえで、自社が求めるセキュリティレベルに即したシステムを導入しなければなりません。

財務会計との連携はできるか

財務会計システムと連携することで、金額の正誤チェックや消込処理がスムーズに行えます。自社で使用している財務会計システムと連携できるか、連携できる場合も、どこまで情報をやり取りできるかあらかじめ確認しましょう。

まとめ

やるべき工程が多い請求業務は、複雑化しやすく、ミスが生じやすかったり属人化しやすかったりといった課題を抱える企業も多いものです。何度も見積を作成するケースやサブスクサービスを提供している場合は、特に請求額の算出に時間がかかるでしょう。さらに帳票作成・発行・保存の手間もかかるため、効率化して担当者の負担を減らしたりミスのない体制を築く必要があります。

請求業務を効率化するなら、フォーマットの統一やペーパーレス化、アウトソーシングの活用などが有効ですが、システム活用も大きな効果を期待できます。システムにもさまざまな種類があるため、自社の業務フローに合っているか、法改正へ対応しているか、セキュリティレベルはどの程度か、財務会計と連携できるかなど確認し、選定することが肝要です。

請求業務の効率化は、月次決算の早期化にもつながります。請求業務を効率化と月次決算の早期化を図りたい経理担当者は、ぜひ資料をダウンロードしてください。

参考

*1:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

*2:電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁

Q
請求業務のフローは?
A
請求業務は以下のようなフローで行われることが一般的です。
・請求・入金スケジュールの確認
・請求金額の算出・決定
・請求書の作成・発行
・請求書の送付
・入金確認
・消込処理
・書類の保管
詳しくは請求業務の流れをご覧ください。
Q
請求業務を効率化するには?
A
以下のような方法で請求業務の効率化を図れます。
①請求書フォーマットの統一
②権限管理の徹底
③ペーパーレス化
④アウトソーシングの活用
⑤ツールやシステムの導入
詳しくは請求業務を効率化する手法5選をご覧ください。

月次決算攻略ガイド

月次決算の早期化に向けて、月次決算業務のボトルネックを洗い出すチェックリストをご用意しました。結果に応じて課題を4つのタイプに分類し、具体的な解決策やZACの活用例を解説しています。

無料ダウンロード

この記事の筆者

ライター

矢野 由起

製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

この記事の監修者

株式会社oRo code MOC クラウドソリューション事業部マーケティングチーム

高橋礼

2019年7月に株式会社オロの子会社・株式会社oRo code MOCに入社。新潟を拠点にオロの製品・クラウドERP「ZAC」のマーケティングチームの一員として活動。過去7年間、雑誌編集に従事していた経験を活かし、ライティング業務やホワイトペーパー制作に携わる。

人気のお役立ち資料