業務効率化ツール導入のその前に。ムダ・ムリ・ムラをなくすキホンの考え方
業務効率化とは?
業務効率化とは、日々の仕事の中から無駄を省き、能率を上げることを指します。
「業績を上げるには業務効率化は必須」。そう考える方は多いはずです。しかし、一言で「業務効率化をする」といっても具体的に何をどのように行えばいいのか分からない、という方もいるのではないでしょうか。もっと効率よく作業ができればと思っても、日々の作業の中でどれが無駄で、どれは必要なのか見極めるのはなかなか難しいものです。
一見便利なツール、ダウンロードしただけで満足していませんか?
たとえば、現代において業務効率化といえばITツールの活用ともいえますが、世の中には様々なツールがあり、どれが自分に合っているのか分からないことも多いでしょう。便利そうだと思って利用しても結局慣れずに元の方法に戻ってしまったり、検索エンジンで一番上に出てきたものをとりあえずダウンロードして業務効率化した気分になってしまったり......。
せっかくのツールも使いこなせなければ意味がありません。そもそもITツールを使うことだけが業務効率化ではありません。複雑なツールを使うために時間がかかってしまっているなら元も子もありませんし、もっと違ういい方法があるはずです。
ムダ・ムリ・ムラとは
業務効率化のために省くべきとされているのは「ムダ・ムリ・ムラ」の3つです。この概念を取り入れ成功した代表的な企業がトヨタです。「トヨタ生産システム」として活用しこの3つの余剰を徹底的になくして合理化を進め、業績改善を果たしたのです。
この3つを簡単にまとめると以下のような内容になります。
ムダ | 必要以上に生産すること、余計な動作や作業などのこと |
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ムリ | 実践不可能なスケジュールや切り詰め、人手に見合っていない作業量といった、能力を超えた無茶な計画のこと |
ムラ | ムダとムリの中間で、適正な方式が標準化・マニュアル化されないことでムリとムダの間を行き来している状態・状況 |
この3つを排除することができれば、業務効率化も進めやすくなります。
では、企業にとってどんなことが「ムダ・ムリ・ムラ」に繋がっているのか、問題点を把握するにはどうすればよいでしょうか。それには以下のような方法が考えられます。
- 「ムダ」への感度を高める
- 「ムリ」計画と実績のPDCAをまわす
- 「ムラ」情報や方法をシェアする
この3つの考え方を基本として改めて作業を見直すことで、業務効率化をはかることができるのです。では具体的にはどのように考えるのか、一つずつ見ていきましょう。
ムダへの感度を高める
「ムダ」とは、モノの余剰だけでなく、作業自体や動きそのものにも発生します。たとえば作業場所が1カ所に集まっていないことによる「歩く」ムダや、業務前に資料を「探す」ムダ、不必要な書類に追われる「記入する」ムダなどが挙げられます。これらひとつひとつはなんともない動作であったり体力も時間の消費もわずかですが、それが大量になったりすべての作業についてくるとなると話は別です。ムダな作業に追われて生産効率をあげることは余計難しくなってしまいます。作業の中に潜む「ムダ」に気づき、ひとつずつ排除していくこと。これがムダへの感度を高める、という考え方です。
ではどのようにすれば「ムダ」に気づくことができるでしょうか。
答えはひとつひとつの作業に「この作業はほんとうに必要か?」と考えることです。単純なことのようですが、なかなか難しいことです。
たとえば書類作成。本当に必要な書類は一部ではありませんか。見ることもない資料や、お決まりのことを記入するだけの書類を作ってはいませんか。時間も資源もムダにする前に「この書類は本当に必要か?」「この労働はきちんと生産性に繋がっているか?」を今一度考え直してみましょう。
もっと身近なところでは、整理整頓も「ムダ」への感度を高めるためには有効です。似た作業をする場所を一ヶ所に集約したり、物の位置や在庫数を明確にすることで、移動を効率的にしたり、探すムダを省くことができます。日々の業務の何気ない行動にこそ「ムダ」が隠れています。ムダに気づくことができるよう感度を高めて、改めて業務を見直してみましょう。
PDCAをまわし、ムリな計画を見直す
「ムリ」とは負担をかけすぎて本来のパフォーマンスが発揮されない状態のこと。キャパシティ以上の負荷をかけたことで、かえって作業効率を落としてしまうことです。これは人にも機械に対しても当てはまります。ムリが続けば、人も機械も疲れはて、最悪壊れてしまいます。その原因には、計画の目標が高すぎたり実情と合っておらず、そもそもの計画にムリがある場合も。
そこで大事になるのが「PDCA」サイクルをまわす、ということです。PDCAとは「Plan(計画を立てる)」、「Do(計画を実行する)」、「Check(行動を評価する)」、「Act(改善して次に繋げる)」の頭文字をとったものです。つまり、目標を達成するために必要な課題を適切に評価し改善すること。これがPDCAの目的です。
PDCAは1回では終わりません。サイクルといわれるように、改善からまた次の計画へと繋がらなくては意味がありません。そして最初の計画でのミスを精査し再度計画からはじめる。それを繰り返すことで精度を高め、ムリのあった計画を見直し、目標に見合ったよりよい計画を練ることができるのです。
PDCAサイクルは迅速に途切れることなく回転させることが大切になります。そのためには、明確な目標をたて、できるだけシンプルで実現性の高い行動を計画するとよいでしょう。たとえば営業マンであればその月に訪問すべき顧客リストを整理して優先順位を決めたり、生産業であれば、その月の目標個数を設定するなどがあげられます。その計画を実行し、評価することで翌月の目標値を調整したりムダを省くための改善点の発見につなげられたりします。良かった点は継続し、悪かった点をどのように改善するかを考えることが、また次の計画(Plan)へと繋がっていきます。すぐに効果が出なかったり決定的な改善案が見つけられなかった場合は、目標のハードルを下げてみたり別の方法を検討したりしてみましょう。
PDCAは必ずしも速効性があるとは限りません。しかし短期的にうまくいかなかったからといって、やりっぱなしにしたりせず根気強く続けてみましょう。継続的に行うことで問題点に気付くこともあります。
ノウハウや方法をチームでムラなくシェアする
「ムラ」とは仕事の配分が偏っていたり、必要な情報が行き渡っていなかったりすることをいいます。このようなムラはときに生産量や品質の安定確保といった、企業の根幹に大きなリスクをもたらすことになります。
特にムラがあると困るのは情報の部分です。担当者しか知らない業務があると、そのひとが休んだり異動や退職でいなくなってしまったりした際に業務が滞るなどの問題が起こり得ます。
この場合は業務の手順を明確化したマニュアルを作成したり、共通で使う資料を共有したりすることで、何度も情報共有する手間を省くことができると共に、全員が同じ資料を共通認識として持つことができ「ムラ」を軽減できます。また、ルールを決めることで、誰がいまどの作業をしているかも明確になり、その人のスキル・リソースに合わせて作業を分配することが可能になります。能力のムラがある場合でも、マニュアルやルールが明確化されていれば研修などによりスキルアップを行うこともできるのです。
情報や方法のシェアは、ツールを活用することでよりスピーディーに行うことができます。特に連絡系のツールは現代において必須ともいえるでしょう。パソコンやスマートフォンからリアルタイムで確認でき、やり取りの履歴が残るツールはいつでもどこでも利用可能ですし、情報漏れに起因するムラを防ぎます。多種様々なものが出ていますが、利用する人数や目的に合わせ自分達に合うものを活用してみましょう。
ツール・方法 | 導入のメリット | 解消できるムラ |
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マニュアル | 業務フローの明文化でミスを防ぐ。 | ノウハウのムラを解消 |
社内研修 | 社員間の認識の差異をなくし、知識の底上げを図る。 | 技術のムラを解消 |
チャットツール | タイムリーに複数人と連絡が取れる。 | 情報のムラを解消 |
予定・工数管理 | 仕事配分の偏りや案件の進捗の達成度合いを把握する。 | 業務量のムラを解消 |
業務効率化のその先にあるもの
企業にとって業務効率化は、コスト削減や経営の安定化といった大きなメリットがあります。また、業務効率化の効果は企業の業績アップや生産性の向上だけではありません。業務の効率がアップすれば、社員の残業や休日出勤を減らすことができ、ワークライフバランスのとれたムリのない働き方が実現しやすくなります。
また企業全体のコスト削減が実現することで、給与のベースアップや古い設備のリプレイスも行えるのです。それにより従業員の満足度があがれば、離職防止や優秀な人材の確保も期待できます。
業務効率化は、単に仕事を効率よく行うこと以上のメリットがあります。いままでの業務を見直し、ぜひ自社の業務効率化を実践してみてください。