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「押印廃止」で進む企業のDX。企業が取り組むべき業務について解説!

2021/7/02公開

政府はデジタル改革に向けて大きく舵を切っており、「書面主義、押印原則、対面主義」の見直しを行っています。企業が行えるDXとして最も身近な取組は「押印」の見直しでしょう。そこで今回は、企業がどのように「押印廃止」に向けて取り組むべきか考えていきましょう。

押印廃止の背景

まずはこれまで企業内で押印が果たしてきた役割や、最近の押印廃止の動きについて見ていきましょう。 これまでに押印が果たしてきた役割 これまで押印には以下のような役割がありました。

  • 契約書
  • 銀行印
  • 訂正印
  • 消印
  • 決裁印

会社と相手方で業務委託契約書や秘密保持契約書などを締結する場合、契約書に押印をして本人の同意の意思を証明していました。

また、銀行印は銀行に届け出た印鑑であり、現金の引き出し・振込みなどの手続きに利用されます。 訂正印は書類の内容を訂正するため、消印は収入印紙が利用済みであることを証明するために押印されるものです。決裁印は、社内の上司や事業担当者への決裁時に了承を得る目的で押印されるものです。

政府による押印廃止の動き

そもそも、契約書等への押印は法律ではどのように扱われているのでしょうか。内閣府、法務省、経済産業省連名による「押印についてのQ&A 」(*1)によると、契約はあくまで当事者の意思が合致していれば成立しているものとされているため、押印がなくても法律違反とはならないとされています。つまり、特段の定めがない押印は慣習として行われているものと言うことができます。

2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として、押印廃止の流れが加速しています。感染症対策としてテレワークが普及する中、2020年9月24日には河野太郎行政改革担当大臣が全省庁に対して原則ハンコを使用しないことを要請し話題になりました。 同年10月に改正された「電子帳簿保存法」(*2)においては、電子化ツールを用いたキャッシュレス決済の利用明細データが領収書と見なされるようになりました。

このほかにも、電子データによる請求書の決済が可能になったこと、データを原本として認められるようになったことなどから、民間企業のペーパーレス化、脱ハンコ化が加速しています。

「押印文化」の問題点

押印文化は日本の慣習として行われてきましたが、近年様々な問題点が指摘されています。ここでは主な3点ご紹介します。

認印は本人の意思を証明するものとしては不適切

押印文化の中で最も高頻度に使われるものは「認印」でしょう。認印とは、社内の決裁文書などに使われる簡易的な印のことです。 認印は一般的にシャチハタや安価に大量生産された印鑑などが使われることが多く、誰でも手に入れることができます。

そのため、認印は本人の意思を示した証明として使うには不適切と言えます。

テレワークを阻害する要因になる

最近多くの企業で導入されているテレワークですが、その阻害要因として企業の「押印文化」があげられています。 テレワークが推奨されるようになってから、書類の押印のためにわざわざ出社しなければならないことが社会問題として取り沙汰されるようになりました。

また、テレワークは単なる感染症対策だけでなく、労働者の多様な働き方を提供できるという利点もあります。無駄な押印の見直しを行わないと、企業の働き方改革を阻害してしまう恐れもあります。

ペーパーレス化を阻害する要因になる

押印文化は社内のペーパーレス化を阻害する要因になります。決裁や請求書に押印をするためだけに書類を印刷している会社も少なくないはずです。 ペーパーレス化が進まない企業では書類の保管に多くのスペースを取られ、書類の印刷代や紙を綴るファイルなどにも費用が発生します。

さらに、最近多くの企業で取り組みが始められているSDGsの観点からも、できるだけゴミを出さずに限りある資源の中で事業を続けることが求められています。 このように、押印文化は様々な観点から現代の企業のあり方に馴染まないものになっています。

企業のDXには組織改革が必要不可欠

ところで、みなさまはDXの正しい定義についてご存知でしょうか。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略であり、直訳すると「デジタルへの移行」ということになります。しかし、DXの定義は単なるデジタル化、IT化を意味しているわけではありません。 経済産業省が公表している「DX推進ガイドライン」(*3)では、DXを次のように定義しています。

『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』

出典:DX推進ガイドライン

つまり、DXはデジタル技術を使いながら積極的に業務や組織のあり方を見直すことを意味しているのです。 例えば、押印を廃止して決裁や契約書の作成を電子化する場合、それぞれの業務における責任者の明確化や意思疎通のあり方について見直しが求められます。

さらに、書類を電子化することでテレワークを積極的に実施できるのであれば、社員の働き方や人事評価のあり方についても見直しを行わなければなりません。

このように、押印廃止などの企業内DXは既存の業務をデジタル化すれば良いというわけではなく、付随する様々な業務のあり方も見直し、組織に根本的な変革をもたらすものだと理解しておきましょう。

押印廃止のために企業が進めるべきこと

企業が押印廃止を進めるためには、決裁書、請求書、契約書など日々交わす書類の電子化が必要です。多くはシステムを導入し、法律に沿って運用することで、だれでも簡単に扱うことができます。

電子決裁を導入する

電子決裁とは、従来書類の作成や回覧などに時間がかかっていた決裁処理を電子化する仕組みのことです。

電子決裁を導入すればシステム上で各担当者が内容を承認できるため、わざわざ押印を行う必要はありません。多くの添付資料も削減できれば、社内のペーパーレス化へ大きく前進できるでしょう。

また、紙の決裁は押印に大量生産された安価な印鑑が用いられることが多いため、文書偽造の温床になります。電子決裁システムを利用すれば各担当者しか文書の承認ができないため、偽造を防ぐことができます。

請求書を電子化する

本来、請求書には必ず押印しなければならないわけではありません。しかし、日本では請求書に押印をすることで正式な書類とする慣習が見られます。

請求書発行システムを導入すれば、システム内で押印が可能なため、押印作業をなくすことができます。

従来、経理部門では請求書の発行や袋詰め、郵送などに時間や労力といったコストがかかっていました。請求書発行システムを導入することで、ペーパーレス化や人員削減といった効果も期待できます。

電子契約を導入する

電子契約システムを導入すれば、業務委託契約書や秘密保持契約書の作成や取引先との契約締結、確認まですべてWeb上で完結することが可能です。

テレワークにより在宅勤務を行っている場合でも、電子契約システムがあればPCから契約書の作成、締結が可能です。 従来、契約書の作成や締結は煩雑でした。契約書の作成、印刷から、レターパック等での郵送、相手方からの返送までには数日の日時を要していました。また、契約書への押印や割印、記載情報に関する不備があった場合、再度これらの作業をやり直さなければなりませんでした。

一方、電子契約システムを導入すればこれらの面倒な作業はなくなります。システム上で契約内容や現在の進捗を一目で確認できるため、経理や総務部門の煩雑な作業を一気に解消してくれます。

DXを進められない企業に未来はない

押印廃止を含め、DXを進められない企業は今後労働市場において不利な立場に立たされることが予想されます。

Dropbox Japanが就労者を対象に行った調査によると、テレワークにおいて社内の書類を確認するために出社を余儀なくされた経験がある人は30%を超えています(*4)。この結果は、書類の電子化が成功していないままテレワークに移行した企業が多いことを示唆しています。

一方で、「在宅勤務の有無が就職先の選択に影響する」と答えた人は20代で60%以上、30代でも50%以上と高い割合になっています。このことから、今後は書類の電子化も含め、DXが進んでいない企業が優秀な人材を確保することは難しくなってくると予想できます。 会社の将来のためにも、ハンコという身近な慣習から見直しを行っていきましょう。

参考文献

*1:内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」
*2:国税庁「令和3年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しについて」
*3:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)を取りまとめました」
*4:Dropbox Japan「Dropbox Japan、国内企業におけるテレワーク実態調査の結果を発表」

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この記事の筆者

ライター・編集者

江連 良介

ライター・編集者。1989年、北海道札幌市生まれ。地方公務員を経験後、政策ライターとして独立。現在は政策、金融、法律、テクノロジーなど幅広い分野で執筆。書籍の執筆のほか、複数のWebメディアで編集長を務める。最近の関心分野はGovTech領域。

この記事の監修者

株式会社oRo code MOC クラウドソリューション事業部マーケティングチーム

高橋礼

2019年7月に株式会社オロの子会社・株式会社oRo code MOCに入社。新潟を拠点にオロの製品・クラウドERP「ZAC」のマーケティングチームの一員として活動。過去7年間、雑誌編集に従事していた経験を活かし、ライティング業務やホワイトペーパー制作に携わる。

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